認知症薬を止めて症状が改善した事例

74歳の女性Sさん

Sさんは夫と二人暮らしで、家事全般を担ってきましたが、ある日アルツハイマー型認知症を発症し、家事ができなくなりました。

洗濯や料理ができなくなったことに始まり、もの忘れ、食べこぼし、尿失禁などが増えていき、夫の介護負担が増す一方でした。

他にも、

  • 無口で無表情

  • 食事にも無関心で、食べ始めてもすぐに箸が止まる

  • 急に興奮して怒り出すことがある

  • 便通が悪く、出るまでトイレにこもりっきりになる

処方薬を確認すると、アリセプトメマリーがありました。

見知らぬ人に話しかけられると興奮することもあったため、徐々に関わる機会を増やし、信頼関係を築いたところで減薬を提案してみました。

減薬を実行した結果

主治医に相談してメマリーを中止したところ、便通が大分よくなりました。

それに伴って興奮することが減っていったので、そのままアリセプトを中止していきます。

その結果、現在では表情が良くなり、笑顔で夫と毎日散歩できるようになりました。
さらに、尿失禁も減り、便通の悪さに悩むことはなくなったのです。

アリセプトなどの薬がちゃんと効く人もいますが、効かない人の方が実は圧倒的に多い。
統計的には、効果を実感できているのはほんの10%程です。

正確に言うと、薬自体が効いていないのではなく、用量が本人に合っていない可能性があります。

アリセプトは処方開始が3mgで、次第に5mgへ増量するという医療保険上の規定があります。

これは必ず増量するというわけではなく、薬の効き具合を見ながら柔軟に対応することにはなっています。
が、個人的にはまだ増量規定に倣っている人が多いという印象。

1ヶ月も2ヶ月も飲み続けて効果がない、悪化しているという人は、主治医に相談しつつ、思い切って薬をやめる、減らすことをオススメします。

認知症薬をやめれば認知症が治るのか?

認知症薬に関して、ひとつ勘違いしないでほしいことは、
「薬を止めれば認知症が治るわけではない」 ということ。

Sさんの例では、薬をやめたら確かに状態が回復しました。
それは、家族を悩ませた認知症の症状が、薬の副作用によるものである可能性があったためです。

ほぼすべての薬には、何かしらの副作用があります。
服用した人全員に副作用が出るわけではありませんが、薬を止めれば必ず副作用はなくなるので、今より状態が軽くなるかもしれない。

となると、もともとの認知症状は残ってしまう可能性があります。
なおかつ、薬自体が肝臓に負担をかけてしまうので、それがきっかけで新たな認知症状が現れる可能性だってあります。

それに対処するにはやはり、薬だけでは良くない。
認知症を治すためには、症状に合わせた認知症リハビリを行う必要があるんです。

薬を全てやめる必要はありませんが、薬がなくとも、認知症状を改善する方法はあるので、安易に薬を増やしていくことだけはしないでくださいね。