虐待件数増加の真実!高齢者虐待の種類や高齢者虐待防止法を超わかりやすく解説します

ニュースなどで、高齢者虐待に関する話を聞くことはよくありますよね。

そういうのを見る度に、「最近こういうの増えたよなあ」と思っちゃいます。

でも、本当にそうなのでしょうか?

年々、虐待をする人される人が増えているということなんでしょうか?

この記事では、高齢者虐待の種類や高齢者虐待防止法について超簡単に解説しながら、高齢者虐待件数増加について考えてみたいと思います。

高齢者虐待の種類

高齢者虐待の種類については、検索すれば多くのページがヒットしますが、念のため押さえておきましょう。

  1. 身体的虐待
    なぐる・ける・髪の毛をつかむなど、物理的な虐待
    外部との接触を遮断する監禁なども含まれる
  2. ネグレクト(介護放棄)
    食事を出さない、衣類が汚れても放置する、必要な介護サービスを受けさせないなど
  3. 心理的虐待
    暴言や強い拒絶、嫌がらせなどで心を傷つける
  4. 性的虐待
    わいせつな行為を本人の同意なくする・させる
  5. 経済的虐待
    本人の財産を勝手に使ったり売ったりするなど

総じて言うと、高齢者の心身に苦痛を与えることを高齢者虐待と言います。

また、その状態の深刻さから虐待の程度を以下の3つのレベルに分けています。

  • 緊急事態
    本人の生命に関わるなど、一刻も早い介入が必要な状態
  • 要介入
    このまま放っておくと、近いうち本人の心身に重大な影響が出るかもしれない状態
  • 要見守り・支援
    本人への心身の影響が少しあるか今のところ見られておらず、介護サービス等の介入で解決するかもしれない状態

高齢者虐待と身体拘束の関係

介護職員であれば、身体拘束という言葉は必ず耳にすると思います。

高齢者虐待と身体拘束は今や、それぞれ独立したジャンルになっているように感じますが、広い意味では、高齢者虐待の一種に身体拘束があると考えられるものです。

高齢者虐待というテーマにおいては語らずにはいられない重要なものなので、簡単に解説しますね。

身体拘束の定義

身体拘束の定義は検索すればいろいろヒットします。
それぞれ言い回しが違いますが、肝は一緒です。

本人が自由に動けないように、身体の一部を拘束する、または動きを制限すること

実際、自分が、あるいは自分の周りが身体拘束に該当する行為を行っていないかをチェックできる具体的な11項目が厚生労働省により示されています。
これは介護職員の方は、事業所での研修会などで何度も目にしているかと思います。

高齢者虐待との関係

先述した【高齢者虐待の種類】の中で、「監禁なども身体的虐待に含まれる」という話をしました。

「直接的に行動を縛る」という点で、身体拘束も身体的虐待に含まれると考えられます。

事実、厚生労働省が次のような文章を示しています。

身体的虐待とは、暴力や体罰によって身体に傷やアザ・痛みを与える行為、身体を縛りつけたり、過剰な薬によって身体の動きを拘束することです。

引用:厚生労働省 身体拘束に関するガイドライン

もともと高齢者虐待と身体拘束について統一された考え方がありませんでした。
そこで、いつからかはわかりませんが、厚生労働省がこのようにまとめたようです。

高齢者虐待防止法とは

高齢者虐待防止法は、平成18年から施行されたものです。
介護保険制度より6年も後に始まったんですね。

先述した高齢者虐待の定義もこの中に明記されてます。

厚生労働省が一般向けに公開しているPDFがあるのでリンク貼っておきます。(ここをクリック!
具体的な11項目とは別に、状況ごとの具体例を挙げているので、参考になると思いますよ。

法制定の背景

法律が制定されるのには、当然それなりの背景があります。

年々高齢者虐待の発生件数が増加していったためです。

その増加率が深刻だったようで、どこかで抑止を掛けねばならんと、高齢者虐待防止法が制定されました。
介護保険でも権利擁護にまつわる規定があったにも関わらず、法制定しなければならない状況に至ったんですね。

高齢化が進んだということも背景として含まれます。

屁理屈っぽくなりますが、高齢者の絶対数が増えた分だけ、虐待の絶対数が増えるというのは、残念ながら納得してしまう話です。

閉ざされた空間に穴をあける狙い

介護現場である家庭や施設は、閉ざされた空間とも言われます。

誰しも自身の闇を進んで披露しようとはしませんから、虐待のような後ろめたいことがあれば、たいていは隠そうとしますよね。
隠されれば当然、周りも気づかないものです。
特に家庭の場合、周りが気付いても指摘しにくいので、虐待自体を止めることができない場合が多いという現実があります。

そんな閉ざされた空間に風穴を開けてやろうというのが、高齢者虐待防止法の狙いです。

ということで、虐待の早期発見や防止のために次の3者へ向けた対応が示されています。

  1. 介護事業者向け
  2. 市町村職員向け
  3. 地域の方向け

簡単に解説しますね。

①介護事業者向け

介護施設や事業所内は、利用者以外では基本的にその職員だけが出入りする閉ざされた空間です。
そのため、介護職員による虐待が密かに行われている場合があります。
また、認知症などでコミュニケーションがうまくとれない利用者同士での虐待も少なくありません。

その対策として、介護施設等に対して地域住民との交流を促進する働き掛けを行ったり、介護相談員派遣事業の活用などによる第3の目を施設内に入れるような環境作りが進められています。

虐待を露見させるためだけではなく、虐待の原因となる介護職員の心の負担解消も狙いに含まれているそうです。

②市町村職員向け

市町村職員に対しては、虐待の相談窓口の普及活動が推進されています。
そのために、高齢者虐待防止法への理解度や、相談を受けた際のスムーズな対応力を高める研修会が市町村職員に実施されているそうです。

③地域の方向け

虐待防止を促進するのには、介護職員や市町村職員に向けての取り組みだけでは不十分だと、地域の方々にも虐待防止への理解を深めてもらおうという取り組みがされています。

「近所で不可解なケガをしている高齢者がいる」、「あの施設の利用者が変に怯えている」など、怪しいと思ったらすぐ市町村に通報してもらえるよう、相談窓口があることを周知する狙いも含まれています。

虐待件数増加の真実とは

高齢者虐待防止法制定には、虐待件数が年々増加している背景があるとお話ししました。

あなたは、これをどう見ますか?

 

いや、その事実を否定したいわけではないんです。

ですが、増加に歯止めをかける目的で法を制定したというのに、その後も増加が止まっていないんです。

これはどういうことでしょう?

虐待防止法が役に立ってない?

それは多分違います。

むしろ、役に立っているからこそ、件数が増加していると思うんです。

 

ここまでにお話した通り、法のもとに虐待の早期発見・防止に努めるための取り組みが行われています。

その中でも特に、相談窓口という存在の周知はかなりの効果が生まれています。

事実、法の成立以降、虐待(と判断された)件数以上に数字を伸ばしたのが、通報・相談件数です。

地域の方へは、「もしかして、虐待してる?」程度のわずかな疑いを感じたら、すぐに窓口に相談するよう勧めています。
ケアマネにも同様の通報義務があります。

他の家庭のことに首を突っ込むのは簡単な話ではありませんが、専門機関が間に入ってくれるとあらば、通報しようと思いいたるのは難しい話ではありません。

 

高齢化社会が進み、高齢者の絶対数が増えたのに比例して、虐待件数の絶対数も残念ながら増えています。
それもまた事実です。

しかし、それと通報する人の意識は別の話。

法の整備と普及活動によって、世に露見した虐待件数が増加した・・・

これが、年々増加する虐待件数の真実なのではないでしょうか。

 

 

ちなみに

虐待防止法が制定された背景もまた、増加する虐待へ対応するためでした。

その当初の通報・相談件数が増加した要因として考えられるのは、地域の方の意識ではなく、介護保険制度にあると思われます。

介護保険制度には権利擁護に関する文言が盛り込まれていること、通報義務のあるケアマネの立ち位置が確立したことで、通報・相談件数が増加していった、ひいては、露見する虐待件数が増加した。

 

これ全部僕の妄想なんですが、そう考えると合点がいくんですよねえ。

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