高齢者の口腔ケアを徹底解説!誤嚥性肺炎予防にも効果的な歯磨き方法

歯磨きの必要性

口腔ケアと言えば、歯磨きですね。

「歯磨きとは何か」をゴリゴリの専門用語で言うと、

歯ブラシを使用して口腔バイオフィルムを除去すること

口腔バイオフィルムとは、たくさんの細菌が集まったもので、口の中のネバネバのアレです。

歯や歯の周り、義歯、舌、カテーテル入ってる方はそのチューブなどに強くべったりしてます。

バイオフィルムが舌の上に付いてると、舌苔(ぜつたい)になります。

特に、義歯などの人工物・異物があると、バイオフィルムが発生しやすい傾向にあります。

昨今では、お口クチュクチュな洗口液が流行してて虫歯予防に効果的とされていますが、バイオフィルムは薬品をはじく力があるので、洗口液でネバネバは改善しないんです。

なので、口の中の細菌を除去するには、歯ブラシを使ったブラッシング=機械的清掃が不可欠となります。

 

口腔ケアの本来の意味とは

最初に、「口腔ケアと言えば歯磨き」とお話ししました。

まあ間違いではないんですが、口腔ケア(Oral Health Care)の本来の意味は、口腔関連疾患の予防や治療から、状態維持などの管理までと、幅広いものです。

ただ単に「自分で歯磨きが出来ない人」の手伝いというものではありません。

もちろん自分でできない人であれば介助はしますが、一番の目的は「歯磨きの手伝い」ではなくて、誤嚥性肺炎など疾患の予防や回復を念頭に置いたケアということです。

つまり、摂食・嚥下障害から利用者さんを救うためであることを、しっかり理解していただきたいと思います。

さらに言えば、介護が必要な方に関して、見た目にも口内の汚れがなくて歯などの痛みもなくある程度の形態の食事が摂れる状態にする(または維持する)ことです。

そのために必要な歯科治療とか、口腔内の乾燥を防ぐこともまた、口腔管理という口腔ケアの一環です。

 

 

基本的な口腔ケアの手順

口腔ケアの手順は次のとおりです。

  1. 必要物品の準備
  2. 安全かつ楽な姿勢をとる
  3. 口腔内の観察
  4. 気道や口腔のクリアランスを良好にする
  5. ブラッシング
  6. うがい(できない人は洗浄・吸引)
  7. 評価・後片付け

ひとつずつ、注意点を踏まえながら簡単に解説しますね。

 

必要物品の準備

まずは口腔ケア用品を準備しましょう。

歯ブラシ

歯がある人には歯ブラシを使用しますが、自分の歯が1本もない人はどうでしょう?

歯がなくても、舌苔の除去や義歯の洗浄に使えるので、歯ブラシはあった方がいいですね。

歯ブラシの毛の硬さは、口腔内の状態に合わせて「やわらかめ」か「ふつう」を選びます。
やわらかすぎると、頑固な汚れがとりにくい場合があるので注意です。

歯茎から出血しやすいような方は、スーパーソフトタイプを使います。

他にも、唾液が多い人用に吸引の管が付いた歯ブラシや、頬の内側など粘膜を清掃するためのモアブラシ、痰などの分泌物の塊を除去しやすいスポンジブラシなどがあります。

ガーグルベースン

洗面所でうがいできない人のためのうがい受けです。

コップ2個

なんで2個かって、1個は歯ブラシの洗浄用です。

ブラッシングした歯ブラシには口腔内の汚れや細菌がくっつきますので、それを洗い流します。
何気にかなり大事です。

「磨く → 汚染用コップで洗う → きれいな水につける」

この流れを厳守して、汚れた歯ブラシのまま口に入れないようにしましょう。

洗面所の前で行うのであれば、その都度蛇口の水で歯ブラシを洗えるので、1個でもOK。

不織布ガーゼ

摂食・嚥下障害ある方の口内に、余分な水分を入れるのはリスクを伴います。

ケアの合間に歯ブラシを洗浄したら、ガーゼで水分をとりましょう

洗いきれなかった歯ブラシの汚れも拭き取れます。

おしぼり・フェイスタオル

口から流れた唾液や水分を拭くためです。

歯磨きで唾液腺が刺激されるので、あらかじめタオルは首にかけてた方がいいですね。

シリンジ

うがいできない人のために、針のない注射器で1~2mlずつ水で洗浄する用。

誤嚥しては良くないので、吸引歯ブラシやガーゼで、都度水を吸い取りながらケアします。

グローブ

口に触れますのでね、介助する人は清潔なグローブをつけましょう。

 

安全かつ楽な姿勢を確保

車いすとか、場合によってはベッド上で口腔ケアすることもありますよね。
立って歯磨きできない方には、いすやベッド上で適切な姿勢をとれない場合もあります。

食事時も同じですが、適切な姿勢がとれないと誤嚥などのリスクが発生します

ケアを行う前に、クッションやバスタオルなどで、安全にケアを行えて、利用者さんも苦しくない姿勢をとりましょう。

また、介護する人は立ったままになることがほとんどなので、利用者さんが上を向いてしまわないよう気を付けてください。
顎が挙上している状態で水分がのどに入り込むと、誤嚥のリスクが高まります

ベッド上だともはや仰向けなので、リスクはより高くなります。
可能であれば、腹部を圧迫しない程度、かつ座位に近い(60度)くらいベッドアップして、顎を引くようにしましょう

ベッドアップの角度に制限がある場合は、30度くらいにして、側臥位かつ顎を引くようにしてからケアを行います。

側臥位イラストのベッドがフラットですけど、ちゃんと上げてくださいね(^^;

口腔内の観察

観察事項

  • 口臭がないか
    口臭があるってことは、口内に細菌が溜まっているということです
  • 歯茎や粘膜から出血、潰瘍がないか
  • 歯や義歯の状態に異常はないか
    出血や潰瘍、歯などの問題は、歯科医を受診する必要があります。
  • 痰などの分泌物が溜まってないか
    分泌物が溜まって放置すると、乾燥して除去が困難になります。
    特に、上あごに付着しているのは見落としがちです。
  • 口内が乾燥してないか
    口内が乾燥しているということは、唾液による洗浄効果がないということです。

これらの改善のカギは、歯磨きだけではありません。

日常的に唾液腺をマッサージして、口内の洗浄効果を高めるようにしましょう。
もちろん歯磨きによっても唾液腺は刺激されるので、毎日の歯磨きが大事なのがわかりますね。

唾液の分泌が少ない方には、保湿剤を利用します。
ただし、保湿剤を塗って放置すると、痰みたいに固まったり、逆に最近の温床になる場合があるので、保湿剤を塗ったらガーゼなどで拭き取ることを忘れないでください。

 

気道・口腔のクリアランス

クリアランスとは、痰などの分泌物を除去して通りを良くすることを言います。

吸引する場合もあるので、研修を受けた介護職員がいなければ、看護師にお願いします。

 

ブラッシング

いざ、きれいに磨いてください!

歯があるかないかで使う物品を変えて下さいね。

介助する時、歯茎が痛まないよう力加減には十分注意です。

歯ブラシはすぐ痛むので、毛先が広がってきたり、そうでなくても1ヶ月に1回は交換してください。

 

うがい or 洗浄

自分でぶくぶくうがいが出来る人は、洗面所でもガーグルベースンでもいいので、しっかり口をすすぎます。

ぶくぶくは出来ても吐き出しがうまくできない方もいます。
そういう方には、グローブをつけて、左右どっちかの口角から指を入れて、ちょっと口角を下げてやれば水が出てきます

 

うがいができない方でも、水を使った洗浄は大事です。

シリンジと吸引歯ブラシまたはガーゼを使ってしっかり水で流してあげると、爽快感は段違いです。
ただ、特に吸引歯ブラシなんかは少々スキルが必要なので、定期的に練習した方がいいですね。

姿勢に注意して、誤嚥しないように気を付けましょう。

ガーゼを使う時は、噛まれないようにねっ(゚д゚)!

 

評価・後片付け

ここまでの手順を通して、ケアの方法や物品を変える必要がないかを評価します。

例えば歯茎を傷めたりするような方法や物品をそのまま続けると、新たな口腔疾患につながります。

使用した物品は、よく洗ったらしっかり拭いて、細菌やカビなどが発生しないように、風通しのいい場所に保管しましょう。