幻覚や妄想が原因で食事を吐き出してしまう認知症の方に食べてもらう方法

介護の現場で最も大変なことのひとつに、食事があります。

認知症の方の場合、なかなか食事が進まないことってありませんか?

この記事では、幻覚や妄想が原因で食事を吐き出してしまう認知症の方に食べてもらえるように、原因別の対応方法を紹介していきます。

 

原因を見極める際のポイント

認知症の方が食事を吐き出してしまう場合、幻覚や妄想、味覚障害、食べ物の食感に対する違和感、嚥下困難など、いろんな原因か影響している可能性があります。

おそらく、吐き出してしまう人は、別に食べ物自体や食べること自体を嫌がっているわけではありません。
食べることができない理由がある・・・ということなんです。

食事を拒否した、吐き出したのを単なる「拒食」と片付けずに、その原因はなにかを確認、評価して、適切な対応をとるようにしましょう

原因に配慮した対応方法

幻覚への対応

レビー小体型認知症やアルツハイマー型認知症では、「食事に虫がたかっている」などの幻覚をみることが度々あります。
1匹や2匹ではなく、多数の小さな虫がたかって見えることが多いそうです。

レビー小体型認知症では、幻覚の他に錯視という現象が起こりえます。
ゴマ塩のゴマが虫に見えてしまうやつですね。
夕食時など、食事を摂る時に部屋が暗かったりすると錯視を起こす可能性が高くなるので注意が必要です。

幻視や錯視が原因と考えられるのであれば、それを取り除く工夫をしましょう。
ゴマやふりかけのような錯視の原因を取り除く。
食事をする場所を明るくする。
そういう単純な工夫であっさり解決する場合もあります。

食器の模様や傷、シミなども原因になるかもしれないので、そこら辺も気を付けましょう。
ちょっと大変なのが、テーブルや壁・床の汚れなどに錯視が起こる場合ですね。
そこまで気を回すのは困難なので、どうしてもって時は食事の場所を変えるしかありません。

とにかく、利用者さんに幻視・錯視が起こった場合は、それをむやみに否定せず、一緒に解決したり、他のことに注意をそらすなどの対応をしましょう。

 

妄想への対応

あんまり服薬拒否や吐き出しがあると、やむを得ず薬を食事に混ぜる場合があると思います。
そういう職員の行為が「毒を盛られている」という妄想につながることもあります。
なるべくやめた方が良いですね。

薬以外でも、下手するとふりかけなどでも妄想につながるかもしれませんね。
なので、何か混ぜる時は本人の見ていないところでやるようにしましょう。

単純な話ですが、その利用者さんと普段から信頼関係を築いていれば、毒を盛ったなどを思わないでくれることがあるのも確かです。

普段の関わり方も十分に気を付けてください。

味覚障害への対応

認知症の症状においては、味覚障害を合併することも少なくありません。
ほんとか?とも思いますが、味覚障害は認知症スケールの一つMMSEの点数と関連があると言われており、食事摂取量の少ない症例の約3分の2で味覚障害が認められています。

加齢や薬剤の影響で唾液分泌が低下したり、偏食の影響で亜鉛などの栄養素が不足したり、口腔内の不衛生、カンジタ症などの感染症によって悪化を助長する場合があるようです。

低栄養や偏食がある場合、血中亜鉛濃度を測定し、亜鉛不足がないかを確認できれば、原因特定の幅がしぼれます。
これは完全に医療分野なので、医師に相談する他ないですね。

また、唾液が十分に分泌されているか、口腔内の清潔が保たれているかも確認してください。

味覚障害が疑われる場合は、味付けのしっかりしたものの提供を試します。

ただ、甘味が強いものをよく食べる場合は糖尿病の方にはよろしくないので、適切な血糖管理が必要です。

逆に塩味が強いものをよく食べる場合、血圧上昇や浮腫に注意しなければなりません。
実際に、肉みそを追加したら食事が摂れるようになったケースで、結果的に血圧が上昇し心不全を発症したそうです。
バランスとるの難しいですねー。

あとは、嗅覚に訴える方法です。
好きな食べ物、香り高い食べ物のにおいをかぐことで食欲がわくのは、僕たちも同じですよね。
対応方法のひとつとして覚えておきましょう。

摂食・嚥下障害への対応

認知症と摂食・嚥下障害は密接に関係しています。
特に脳血管性認知症やレビー小体型認知症では多いですね。

食べ物を吐き出してしまう場合、嚥下障害が原因である可能性があります。
嚥下が困難なために、長く口腔内に溜め込み、やがて吐き出しにつながるというわけです。

利用者さんの摂食・嚥下機能と食形態が合っているかを見直す必要があります。

 

まとめ

幻覚や妄想による思いこみは簡単には覆せません。
それを否定することは、その人自身の否定につながりますからね。

認知症ケアを見直しつつ、適切なアプローチで食事の問題を解決できることを祈っています。