↓記事では、摂食嚥下障害の改善していくために必要不可欠な、評価についてお話しでした。
この記事の内容はその続編になります。
嚥下関係は医療側のアプローチがメインです。
でも、だからって介護職員に出番がないわけではありません。
食事は生活の基礎です。
生活の基礎を守るのは、介護職員の本分ですからね。
経口摂取を適切に実践していくために、介護職員も評価について正しく理解をしておきましょう。
摂食嚥下機能評価
摂食嚥下機能の評価の内容としては、
- フィジカルアセスメント
- ベッドサイドスクリーニング
に大別されます。
評価についての記事ではフィジカルアセスメントについてお話ししています。
今回は、ベッドサイドスクリーニングに必要な準備について詳しくお話しします。
これは、介護職員さんも実際に看護師さんらが実施しているところを見て、状態を確認することをおすすめしたい内容です。
したがって、準備の内容も実践するところを見て、介助時に自分で再現できるようにすると、大変スムーズに事が進みます。
ベッドサイドスクリーニング評価
ベッドサイドスクリーニングは、その方が受けた診断だけでなく、その方自信の心身機能や能力を引き出して、早期に経口摂取を始められるように取り組みましょうっていう視点で行います。
評価テストの段階でむせが生じたとしても、実施内容を調整するなど、個人の状態に合わせながら、諦めずに実施していくことで、その方の良好な機能を評価することができます。
評価前の準備
- 全身状態が安定していることを確認
- 鼻やのどの通りを良くする(気道クリアランス)
- 胸郭をマッサージし、咳反射を高める
- 覚醒を促すことで、認知機能を高める
- 口腔ケア(マッサージなど)と口腔周囲筋群の運動(パタカラ体操など)
- 唾液腺マッサージなどで唾液の分泌を促す
唾液や冷水を利用して嚥下運動の練習をする - 身体を起こして、姿勢を安定させる
角度は状態に合わせて30度~座位で個別に対応
必要に応じて枕やテーブルなどで調整する - 評価に必要な物品を揃える
冷水、フードテスト用ゼリー、コップ、5mlシリンジ、ティースプーン、トロミ、聴診器、パルスオキシメーター、おしぼりなど
物品について補足
フードテスト用ゼリーにはエンゲリードがおすすめ。
固さや離水しにくい作りなど、評価や摂食嚥下改善に使いやすいです。
ティースプーンを使用する理由は、適切な一口量を提供するためです。
普段僕らがカレーを食べる時なんかに使うスプーン(カレースプーン)は、嚥下機能が低下している方にとっては大きすぎるんです。
ヘッド部分の腹が深すぎるのも、実は食べにくいんですよ。
一口の量が多いと、咀嚼に時間がかかったり、1回で飲み込み切れない、窒息するなどのリスクがあります。
それこそ、小さじ1杯程度の量が最初は適切なので、ヘッドが小さい・深さもない・身近にあるティースプーンがちょうどいいんですね。
介護職員など、日常的に食事介助する・介助スキルを持っている方向けのスプーンをいくつか紹介しますね。
↑の画像にもあるスプーンをKスプーンと言います。
わかりにくいかもですが、ティースプーン程度のヘッドの大きさに、長めの柄が特徴です。
ヘッドの大きさや腹の深さもティースプーン並。
さらに、柄が長いことで、介助者の手を相手の顔に近づけずに食べ物を口に持っていくことができるので、特に認知機能が低下している方へは、「介助者の手が迫ってくる」ような圧迫感を回避することができます。
ついでにもうひとつ。
リードスプーンと言いまして、ヘッドの大きさだけでなく、背の方に小さい突起があることが特徴です。
摂食機能が低下している方は、舌の感覚が鈍っている可能性があります。
そういう方は、食べ物が口に入っても認識できず、いつまでも口に残ったままになる場合があるんです。
リードスプーンで一口分を口にいれて、スプーンの背で舌をなぞるように引き抜くことで、突起が舌を程よく刺激してくれます。
強く押し付けちゃダメですよ!
ゲーしちゃうから(;´Д`)
聴診器は、のどに当てて嚥下音を確認するのに効果的です。
聴診器を使わずにただ隣で介助して、大きい音で「ゴクン」って聞こえたら、「よし、飲み込んだな」って安心しないでください。
無駄に大きい音で鳴る嚥下音は、一口に合わない量の食べ物を無理に飲み込もうとしていたり、食べ物と空気を一緒嚥下しようとした可能性があり、かえって危険です。
聴診器を使ってはっきり聞こえる程度の嚥下音が、おおむね正常な嚥下だと判断し方がいいですね。
この辺は看護師さんら医療チームがそのスキルを持っていることが望ましいです。
評価の点数だけにとらわれない
単にスクリーニング評価の点数のみで判断すると、適切なケアにつながりにくいです。
点数以外の全身状態、認知機能も含めた総合的な評価に基づいて、実践に移すようにしましょう。
それを実現するためには、医療チームだけではまかないきれません。
介護職員による、日常的なケアの継続が大事ですので、スクリーニング評価についてはしっかり学んでいきましょう。