摂食・嚥下障害改善に向けての評価の実践

嚥下関係は医療側のアプローチがメインです。

でも、だからって介護職員に出番がないわけではありません。

食事は生活の基礎です。
生活の基礎を守るのは、介護職員の本分ですからね。

経口摂取を適切に実践していくために、介護職員も評価について正しく理解をしておきましょう。

評価を行うにあたっての準備についてはこちら↓。

 

 

摂食嚥下機能評価

摂食嚥下機能の評価の内容としては、フィジカルアセスメントベッドサイドスクリーニングに大別されます。

評価の準備の記事ではベッドサイドスクリーニングに必要な準備についてお話ししました。

今回は、ベッドサイドスクリーニングにおける評価・実践について詳しくお話しします。

どういった評価法によって、どこが障害されているかがわかります。

これは、介護職員による食事の支援にも大きく影響するので、評価方法とその目的については把握しておきましょう。

 

摂食嚥下機能評価方法とベッドサイドスクリーニング評価

頸部聴診法

呼吸や嚥下の音を聴診器などで確認する方法です。

意外と歴史があり、アメリカでは1950年頃から実施していた記録があるそうです。

これはその他の評価を行う際にも活用できるので、看護師にはマストスキルですね。

評価の目安

正常な嚥下では

  1. きれいな呼吸音
  2. 嚥下する間、呼吸を一旦停止
  3. 嚥下が終わるとまたきれいな呼気(息を吐きだす)

が聞かれます。

異常がある場合は

  1. 嚥下前の流入音(飲み込んでないのに音が出るのは異常)
  2. 嚥下の際の泡立音(ゴボゴボって感じ)、嚥下後の湿性音や振動音(痰がらみによる音)

などが聞かれます。

やり方・注意点

音を拾いやすくするよう、体型に合わせた聴診器を使用します。

小児用などの小さいものが良いそうな。
高齢者は円背とか肩が上がってる場合が多くて、聴診器が大きいと、首に当てるために顎を挙上(頸部後屈)してもらわないとなりません。
頸部後屈での嚥下は誤嚥のリスクが跳ね上がりますのでダメ・絶対です。

水を一口含んで、上を向きながら飲み込んでみてください。
めちゃくちゃ飲み込みづらいですから。

頸部後屈は、いわゆる気道確保の状態になるので、食べ物・飲み物が気管に入りやすくなります。

なので、食事介助する時は絶対に顎が上がらないようにしてください。

また、聴診器をのど仏に当てると、スムーズな嚥下の動きを邪魔するので、のど仏の脇に当てるようにします。

 

RSST(反復唾液嚥下テスト)

何も口にいれない状態での嚥下(空嚥下)を繰り返してもらいます。

評価の目安

嚥下反射を意図的に引き出せるかを評価します。

嚥下反射とは、食べ物などがのどに来た時に自然に起こる飲み込みの反応のことです。

これが正常にできれば、頸部聴診法で言うところの、

  1. きれいな呼吸音
  2. 嚥下する際に呼吸を一旦停止
  3. 嚥下が終わるとまたきれいな呼気(息を吐きだす)

が聞かれるということになります。

やり方・注意点

自分の人差し指(第2指)でのど仏の上、中指(第3指)でのど仏の下の軟骨辺りを触れるように置いて、空嚥下を何回できるか数えます
指が置けない場合は聴診法で代替えできます。

注意点としては、頸部後屈がないようにし、口の中が乾燥していれば湿らせてから実施します。
当然ながら、相手にこちらの指示が通ることが前提です。

判定基準としては、30秒間に2回以下であれば異常があるということになります。

 

MWST(改訂水飲みテスト)

冷水3mlを一口で、飲み込みから嚥下反射が起こるまでの時間・むせの有無・咽頭付近に残留していないかなどを評価します。

評価の目安

点数制になります。

  • 1点
    嚥下しない・むせたり呼吸が荒くなる(どちらかまたは両方)
  • 2点
    嚥下する・呼吸が荒くなる(不顕性誤嚥の可能性あり)
  • 3点
    嚥下する・呼吸状態は良好・むせたり痰がからむ(どちらかまたは両方)
  • 4点
    嚥下する・呼吸状態は良好・むせない
  • 5点
    4点の内容に加え、直後に空嚥下が30秒以内に2回できる
不顕性誤嚥とは、誤嚥しているにも関わらず、のどからの異常音が聞かれなかったり、痰がらみがなかったりすることです。
サイレント・アスピレーションとも言います。
響きはかっこいいんですけどね(;^ω^)
高齢の方は、誤嚥に限らず症状が表に出てきにくい傾向にあります。

やり方・注意点

3mlの冷水(冷茶でも可)を、シリンジかスプーンで口唇と歯の間(口腔前庭)に入れて、うまく飲み込めたか、むせや呼吸の変化などはないかを頸部聴診法で確認します。

病状や障害の程度によっては、一口目から3ml入れないで、1~2mlから始めます。
2mlでもむせてしまう方もいるので、慎重にアプローチする必要があります。

異常なく嚥下できたら、直後に2回空嚥下をしてもらうことで評価します。

4点以上になった場合は、多くて3回評価を実施して、その中で最も低い点数を評価点とします。

注意点として、頸部後屈を避けることは前提です。

顎の角度は、顎と鎖骨の間に指が3~4本入る程度頸部前屈)を徹底します。

相手の状態に合わせて、リクライニングは30度~座位の角度で調整します。

これらは通常の食事の時も行うべき基準です。

むせるようであれば、軽いトロミをつけます(スプーンからさらーっと垂れる程度)。

良好であれば、5ml・10mlと量を増やして、コップから直接飲んでもらうなど、動作が安全かつ確実に行えるかも評価していきます。

 

FT(フードテスト・食物テスト)

嚥下用のゼリーを嚥下してもらうことで行う評価です。

エンゲリードが使いやすくていいですね。

評価の目安

水飲みテストと同様の評価基準です。

  • 1点
    嚥下しない・むせたり呼吸が荒くなる(どちらかまたは両方)
  • 2点
    嚥下する・呼吸が荒くなる(不顕性誤嚥の可能性あり)
  • 3点
    嚥下する・呼吸状態は良好・むせたり痰がからむ(どちらかまたは両方)
  • 4点
    嚥下する・呼吸状態は良好・むせない
  • 5点
    4点の内容に加え、直後に空嚥下が30秒以内に2回できる

やり方・注意点

ティースプーン1杯(3~4g)のエンゲリードを嚥下してもらい、その後の状態を観察します。
一口量は相手に合わせて調整する必要がありますが、目安として、ゼリーは厚さ2~5mm程度のスライス状にすると、嚥下しやすいです。

普通のゼリー同様、冷やして提供しましょう。
冷やした方が美味しいもん。

味の良し悪しは円滑な嚥下運動に欠かせない要素です。
また、冷えていることで、感覚が鈍っている方でも口の中にゼリーがあることを認識しやすくなるので、これもまた円滑な嚥下運動につながります。

評価が高ければ、リクライニングを上げて自力摂取をすすめてみます。
水飲みテスト同様、動作の安全性・確実性を見るためです。

食べ物への認知機能を向上するために、ゼリーを手に持ってもらって、食べ物を持っていることを声掛けで伝えるようにします。
食事介助でも、声掛けは基本ですよね。

 

まとめ

今回は、実際に行われている摂食嚥下のスクリーニング評価の方法を紹介しました。

  1. 頸部聴診法
  2. RSST(反復唾液嚥下テスト)
  3. MWST(改訂水飲みテスト)
  4. FT(フードテスト・食物テスト)

※水飲みテストの「改訂」前はすいません、存じ上げません(^^;

これらを行う際の注意点では、必ず姿勢の安定が必要になりますが、これはそのまま日常的な食事介助においても重要なことです。

  • 頸部後屈を避け、頸部前屈(顎と鎖骨の間に指が3~4本入る程度)を徹底
  • 状態に合わせたリクライニング角度(30度~座位)

こまかく言うともっといろいろあるんですが、テストにおいてまずはこれらが優先的に行われます。

参考にしてもらい、利用者さんの快適な食事を提供してもらいたいと思います。