認知症の方の中には、
- 食べこぼしがある
- 一日中歩き回る
- 糖尿病などの合併症がある
という方はけっこういますよね?
これらを原因に、適切なエネルギー量を確保できず、徐々に体重が減少してしまうことがあります。
一説によると、成人になってから
- 体重が5kg以上減った
- 体重が5kg以上増えた
という場合、①の人の方が死亡率が高いと言われています。
極端な体重増加も良くはありませんが、統計的に、体重が減った方が健康被害が顕著であることを示します。
この記事では、徐々に体重が減ってしまう認知症の方への対応方法についてお話しします。
原因を見極める際のポイント
認知症高齢者の方では、体重減少自体は珍しいことではありません。
とは言え、「認知症なんだから食事が摂れなくても仕方がない」とさじを投げてはいけません。
体重減少の原因を探り、適切な対応策を検討してみましょう。
毎回の食事摂取量の記録はもちろんですが、どの程度食べこぼしがあったか、誤嚥によるむせなどはないかを必ず観察してください。
体重減少の原因は、拒食や食べこぼしなどの認知症が絡むものだけではありません。
誤嚥性肺炎、糖尿病、悪性腫瘍などの身体的な疾患であったり、エネルギー量の提供が適切でないなどケア側のミスであったりする可能性もあります。
「ケア側のミス」って、あなたがそうだと言いたいわけではないですよ(汗
ただ、そういう状況もあり得るわけで、「自分は(自分の職場は)間違ってない」という自負心は、例え「100%間違ってなかった」としても捨ててください。
介護の知識・技術は年々ブラッシュアップされていきます。
今は正しいと思われていても、数年後には覆されている可能性があるんです。
「これは本当に正しいのか」という視点を常に持っていれば、あなた自身が【覆す側】になっているかもしれません。
話がそれましたが、原因に応じた対応方法を見ていきましょう。
原因に応じた対応方法
食べこぼしへの対応
食事中の様子を観察して、口に入る前に食べ物をこぼしてしまっている場合は「食べこぼし」と判断して、次の対応を行ってください。
一旦口に入れた食べ物を吐き出してしまう場合は、↓の記事を参考にしてください。
食べこぼしがある場合は、まず食事中の姿勢が悪くないか、食卓とイスの位置が離れすぎていないかを確認します。
それでも改善されない場合は、次の原因を探ってみましょう。
脳血管障害などによる麻痺や運動失調
脳血管性認知症や、その他の認知症に脳血管障害を合併した場合では、上肢の麻痺や運動失調のために食べこぼしてしまうことがあります。
どうしてもうまく食べれない時は介助も必要ですが、介助を行うことでそれが当たり前になる(自発性の低下)と、廃用による機能低下を招く可能性があります。
食べ物をすくいやすい食器や、握りやすいスプーンを使うなど、出来る限り自力摂取できる方法を模索した方が、介助量が減少すると思いますよ。
振戦
手が震えてしまう振戦が原因で、食事を口元にうまく運べないこともあります。
レビー小体型認知症によるパーキンソン症状でも見られますが、脳血管障害や薬剤の影響もあり得ます。
薬剤の影響であれば、主治医と相談して内服を調整することで解決できます。
レビー小体型認知症などの場合でも主治医との相談は必須ではありますが、その解決方法が薬剤であれば、それによる二次的な症状が出現しないかを確認しなければなりません。
一口量が多すぎる
単純な話ですが、スプーンにすくった一口量が多すぎて食べこぼす場合も案外あります。
スプーンの大きさ、提供の時点で食材を適度な大きさに切り分けておく、見守りや声掛けなどで改善していきましょう。
視空間認知機能の低下
視空間認知機能が低下したケースでは、スプーンを、口ではなく鼻や顎に持っていくことがあり、食べこぼしにつながります。
最小限の介助で開演していきましょう。
活動量亢進への対応
徘徊や不穏などで、「そんなに?」ってくらい活動量が多くなっている(亢進している)ことが原因で、体重が減少する場合があります。
ただ歩き回るだけでなく、何度もベッドから立ち上がったり、常に四肢を動かしたり、大声を出すなどでも、長期的に見れば体重の減少につながります。
頻度の多い徘徊がある場合は、通常の必要エネルギー量より200kcal前後多い食事を提供します。
全量摂取できないばあは、栄養補助食品なども併用しましょう。
徘徊の頻度や移動距離などによって消費されるエネルギー量も変わります。
定期的に体重をはかり、提供するエネルギー量の参考にしてください。
活動量亢進がなくてもエネルギー量が不適切
高齢になると、必要なエネルギー量が少なくなるという印象ってありませんか?
間違いではないのですが、単に高齢という理由だけで提供量を減らすのは間違いです。
身長・体重・持病の疾患などから適切なエネルギー量が計算されているか、それに見合う食事がていきょうされているかを確認する必要があります。
医師や栄養士など多職種で検討することが大事です。
もちろん、体質によって太りやすい人、太りにくい人といるでしょうから、そこは家族等から聞いて把握しておきたいですね。
誤嚥性肺炎
経口摂取をすすめる上で、最大の合併症は誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎による炎症が、エネルギー消費量の増加、たんぱく質を分解し、体重が減少します。
むせや発熱が見られていれば誤嚥性肺炎の発症にも気づきやすいと思います。
でも認知症の方の中には、誤嚥してもむせや発熱が見られないこと(不顕性誤嚥)もありますので、「気づいたら重度の肺炎だった」ということもあり得る話です。
対策として、食前食後の口腔内観察、口腔ケアを行います。
パルスオキシメーターを食事中に装着して酸素濃度を測定していると、何かあった時に気付きやすいです。
酸素濃度が食事開始後に3%以上低下した場合は、誤嚥の可能性を疑ってください。
誤嚥が疑われたら、↓の記事を参照してください。
合併症に応じた対応
認知症の方には、症状を自分で伝えることができない場合があります
そういう方は糖尿病や悪性腫瘍などの合併症を見逃しがちです。
「食べないのは認知症の摂食障害のせいだ」と決めつけるのは早計です。
既往や現在の状態を確認し、合併症があるとわかればそれに応じた対応が必要になります。
例えば、喘鳴や呼気の延長(息を吐き出すのが通常より長い)などが見られる場合は、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患。
下肢の浮腫があれば、うっ血性心不全や腎臓機能障害が疑われます。
慢性的に微熱が続く場合は、結核などの感染症もあり得ます。
結核は昔ほど深刻な感染症とは言わないまでも、欧米諸国と比べると、以前罹患率が高いそうです。
悪性腫瘍などを合併した場合、食事をちゃんと摂っていても体重が減少していくことがあります。
このような状態をカヘシキアと言います。
認知症の方は詳細な検査が行えないことが多いですが、ちょっとした診察をきっかけにがんなどが発見されることもあります。
合併症が発覚すれば、医療との連携によるケアを開始します。
食事に関する注意点をよく検討し、適切なケアを行えるようにしましょう。
まとめ
体重の増減に関しては、筋肉と脂肪の比重に差があるため一概には言えません。
なので筋肉量の計測も定期的に行っていくと、適切なアプローチにつながる可能性があります。
あなたが直面している状態の改善につながれば幸いです。