「最近、食事のたびに親がむせるようになって、見ていて怖い…」
「食べ物を口に入れたまま、なかなか飲み込んでくれない。どうしたらいいの?」
認知症の親御さんを介護する中で、食事の時間が日に日に不安になっている。
あなたは今、そんな悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
私は、介護福祉士・ケアマネジャーとして10年以上、多くのご高齢者とご家族に寄り添ってきました。
その中で、「食事の悩み」は最も多く寄せられるご相談の一つです。誤嚥(ごえん)や窒息のリスクを考えると、一口一口が本当に緊張しますよね。
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、どうか安心してください。
認知症に伴う嚥下(えんげ)障害は、その原因を正しく理解し、適切なケアを行うことで、改善の可能性が大いにあります。
この記事を読めば、あなたが抱える「どうして?」「どうすれば?」という食事介助の不安が、「こうすればいいんだ!」という具体的な自信に変わります。
認知症の親御さんが、安全に、そして穏やかに食事を楽しめる未来を一緒に目指しましょう。
なぜ?認知症になると「飲み込み」が難しくなる3つの本当の理由
「嚥下障害って、脳梗塞の後遺症で起こるものでしょう?」
多くの介護スタッフでさえ、このように考えています。
もちろん間違いではありません。
脳梗塞やパーキンソン病などが原因で、飲み込みに関わる筋肉が麻痺し、嚥下障害が起こるケースは多々あります。
しかし、私が現場で見てきた多くの認知症の方は、麻痺がないにも関わらず、飲み込みがうまくできなくなっていました。
認知症の方の嚥下障害には、特有の理由があるのです。
理由1:「食べる」という行為に集中できなくなる
認知症の中核症状の一つに「注意障害」があります。これは、複数のことに同時に注意を払ったり、一つのことに集中し続けたりすることが難しくなる症状です。
食事は、「食べ物を認識し→口に運び→噛んで→飲み込む」という一連の動作の連続です。
しかし、注意障害があると、テレビの音や人の話し声など、ささいなことで意識がそれてしまい、「あれ、今何をしていたんだっけ?」と、食べる動作が途中で止まってしまうのです。
口に食べ物を含んだまま、ぼーっとしてしまうのはこのためです。
理由2:「口の中の感覚」が鈍くなっている
「なんだか口の中がネバネバする」「味がよく分からない」。ご高齢者からそんな言葉を聞いたことはありませんか?
加齢や薬の副作用、そしてお口のケア不足などによって唾液の分泌が減ると、口の中の感覚が鈍くなります。
すると、食べ物の大きさや形、硬さなどをうまく認識できず、飲み込むタイミングを逃したり、十分に噛み砕けていない大きな塊のまま飲み込もうとしたりして、誤嚥のリスクが高まるのです。
理由3:「舌の動かし方」が分からなくなる
私たちは無意識のうちに、舌を使って食べ物をまとめ、喉の奥へと送り込んでいます。
しかし認知症が進行すると、脳からの指令がうまく伝わらず、この舌の使い方が分からなくなってしまうことがあります。
ご家族から「刻み食にしているのに、むせるんです」というご相談を受けることがありますが、これはまさにその典型例。
細かく刻まれた食べ物は口の中でまとまりにくく、不器用になった舌ではうまく操作できません。
その結果、意図しないタイミングで食べ物が喉に流れ込み、誤嚥を引き起こしてしまうのです。
それ、誤解かも?「むせ込み」と「誤嚥性肺炎」のホントの関係
食事介助で最も怖いのが「誤嚥性肺炎」です。しかし、この誤嚥性肺炎にも、多くのご家庭で誤解されている点があります。
【データ】高齢者の肺炎のうち7割以上が誤嚥性肺炎 高齢者の肺炎による死亡は年々増加傾向にあり、その多くが誤嚥性肺炎であると報告されています。
これは、飲み込む力の低下だけでなく、気づかないうちにお口の細菌を飲み込んでしまうことが大きな原因です. (出典: 日本歯科医師会Webサイト)
「むせる」のは悪いことじゃない?
「むせる=誤嚥」と思われがちですが、実は「むせ」は、食べ物が気管に入りそうになった時に、それを外に排出しようとする大切な防御反応です。
つまり、むせることができるうちは、まだ体を守る力が残っている証拠とも言えます。
本当に怖いのは、認知機能の低下によってこの防御反応が鈍くなり、むせることなく静かに誤嚥してしまう「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」です。
就寝中に唾液が気管に流れ込むケースも多く、原因不明の微熱が続く場合は、この不顕性誤嚥を疑う必要があります。
肺炎の真犯人は「食べ物」ではなく「細菌」
誤嚥性肺炎は、食べ物そのものが肺で悪さをするわけではありません。
食べ物や唾液と一緒にお口の中の細菌が肺に入り込み、炎症を起こすことで発症します。
私が新人時代、「たかが歯磨きでしょ?」と軽く考えていた口腔ケアの重要性を叩き込まれたのは、この事実を知った時でした。
口腔ケアは、単にお口を清潔にするだけでなく、命に関わる肺炎を防ぐための「最も重要で基本的なケア」なのです。
【明日からできる】認知症の方の「食べる力」を引き出す3つの食介助術
では、どうすれば認知症の親御さんの「食べる力」を守り、安全な食事介助ができるのでしょうか。
私の10年以上の経験から、ご家庭ですぐに実践できる3つの具体的なコツをご紹介します。
秘訣1:食事の前の「3分儀式」で集中力を高める
食事が始まる前に、ほんの3分だけ、飲み込みに必要な筋肉をウォーミングアップする習慣を取り入れてみましょう。
- 深呼吸をする:椅子に深く腰かけ、ゆっくりと鼻から息を吸い、口から吐き出す。これを数回繰り返すだけで、気持ちが落ち着き、食事への意識が向きます。
- 首のストレッチ:ゆっくりと首を前後左右に倒し、喉周りの筋肉の緊張をほぐします。
- お口の体操(パタカラ体操):
- 「パ、パ、パ」と唇をしっかり閉じて発音
- 「タ、タ、タ」と舌先を上の歯茎にしっかりつける
- 「カ、カ、カ」と喉の奥を意識して発音
- 「ラ、ラ、ラ」と舌を丸めて上の歯茎につける これらを数回繰り返すことで、食べるために必要な筋肉が刺激されます。「さあ、ご飯の準備運動をしましょうか」と、楽しい雰囲気で行うのがポイントです。
秘訣2:「見る・味わう」を意識した食事の工夫
食べ物をただ口に運ぶのではなく、五感で「食事」を楽しんでもらう工夫が、安全な飲み込みに繋がります。
- テレビは消して、静かな環境を整える:まずは注意をそらすものを排除し、食事に集中できる環境を作りましょう。
- 一口ずつ、目で見て確認してもらう:「〇〇ですよ、美味しそうですね」と声をかけ、スプーンに乗せたものを一度ご本人の視界に入れてから、ゆっくりと口に運びます。
- 「とろみ剤」を上手に活用する:お茶や汁物でむせる場合は、「とろみ剤」が有効です。ただし、量が多すぎるとベタついて逆に飲み込みにくくなります。薬局の薬剤師さんやケアマネジャーに相談し、適切な使い方を学びましょう。
秘訣3:不安を安心に変える「魔法の声かけ」
認知症の方は、介助される側の不安を敏感に感じ取ります。「早く食べて」という焦りは、かえってご本人を混乱させてしまいます。
- 横から、目線を合わせて:正面からスプーンを運ぶと、威圧感を与えてしまうことがあります。利き手の反対側の斜め横に座り、ご本人と同じ目線の高さで介助すると、安心感を与えられます。
- 動作を実況する:「お口を開けてください」ではなく、「もぐもぐ、もぐもぐ…ごっくん」と、こちらが口を動かしながら一緒に食べる動作を真似て見せることで、次の動きを促しやすくなります。
- ポジティブな言葉を添える:「上手に飲み込めましたね」「美味しいですね」といった肯定的な声かけは、ご本人の「食べよう」という意欲を引き出します。
まとめ:大切なのは、観察と工夫の積み重ねです
この記事でお伝えしたかった大切なポイントを、もう一度振り返ります。
- 認知症の嚥下障害は、麻痺だけでなく「集中力」「感覚」「舌の動き」の低下が原因で起こる。
- 誤嚥性肺炎の本当の敵は食べ物ではなく「細菌」。日々の口腔ケアが命を守る。
- 安全な食事介助には、「環境調整」「食事の工夫」「安心できる声かけ」が不可欠。
何より大切なのは、親御さんの日々の様子をよく観察し、「何が食べにくい原因なのか?」を見つける視点を持つことです。そして、今日ご紹介したような小さな工夫を一つでも試してみてください。
まずは、明日からの食事の前に、テレビを消して静かな環境を整えることから始めてみませんか。その小さな一歩が、親御さんの穏やかな食事の時間を取り戻す、大きな変化に繋がるはずです。
Q&A:よくあるご質問
Q1. 認知症の父が食事を拒否することがあります。どうすればいいですか?
A1. まずは、なぜ拒否するのか原因を探ることが大切です。体調が悪い、口の中に痛みがある、椅子の座り心地が悪い、料理が好みでないなど、様々な理由が考えられます。無理強いはせず、一度食事を下げて時間をおいたり、好きなものや匂いの良いもの(お味噌汁など)を試したりしてみましょう。ご本人の尊厳を尊重し、「食べたくない気持ち」に寄り添う姿勢が重要です。
Q2. とろみ剤はどんな時に使えばいいのでしょうか?
A2. 主にお茶やお水、お味噌汁などのサラサラした液体でむせ込みが見られる場合に有効です。液体は口の中ですぐに広がってしまい、意図せず気管に流れ込みやすいためです。とろみをつけることで、液体が喉を通過するスピードがゆっくりになり、安全に飲み込みやすくなります。ただし、自己判断での使用は危険を伴うこともあるため、必ずかかりつけ医や訪問看護師、言語聴覚士などの専門家に相談してから開始してください。
Q3. 毎日続けられる簡単な嚥下体操はありますか?
A3. 本文でご紹介した「パタカラ体操」が最も手軽で効果的です。もう一つ加えるなら、頬を膨らませたり、すぼめたりする「頬の運動」や、舌を思い切り前に出したり、左右に動かしたりする「舌の運動」もおすすめです。歌を歌ったり、早口言葉を言ったりすることも、楽しみながらできる素晴らしいトレーニングになります。大切なのは、毎日少しずつでも継続することです。
もう一人で悩まないでください。あなたの「介護の悩み」、私に聞かせていただけませんか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「記事の内容は分かったけれど、うちの親の場合はどうしたら…」
「誰にも相談できず、一人で抱え込んでいるのがつらい」
もしあなたがそう感じているなら、ぜひ私の公式LINEに登録してください。
介護の悩みは、ご家庭の数だけ存在します。Web上の情報だけでは解決できない、個別で具体的な悩みが必ずあるはずです。
私はこれまで10年以上、介護福祉士・ケアマネジャーとして、延べ500以上の「ご家庭ごとの答え」を一緒に見つけてきました。
▼今すぐLINEで無料相談する▼
今、ご登録いただいた方限定で、私が現場での経験と知識を体系的にまとめた、Web未公開の電子書籍『認知症改善の教科書』を無料でプレゼントしています。
この教科書を手にすることで、あなたは…
- 先の見えない介護の不安から解放され、穏やかな気持ちでご家族と向き合えるようになります。
- 日々の介助に自信が持てるようになり、介護の負担が軽くなることで、あなた自身の時間と心の余裕を取り戻せます。
- 「もっと早く知っていれば…」という後悔ではなく、「できることは全てやった」という納得のいく介護を実現できます。
一人で頑張りすぎないでください。あなたの隣には、専門家がいます。 下のボタンをタップして、まずは無料プレゼントだけでも受け取ってください。その小さな行動が、あなたの明日を、そして大切なご家族の未来を、明るく照らす第一歩になるはずです。
▼『認知症改善の教科書』を無料で受け取る▼