【介護職員必見】認知症とストレスの関係|身体拘束は虐待?アンガーマネジメントの効果と限界

認知症とストレスの関係

認知症の原因を引き出す要因の一つに、ストレスがあります。
この記事では、認知症予防とストレスケア、そしてアンガーマネジメントとの関係について解説していきます。

身体拘束とストレス

認知症予防において、運動に勝るものはありません。

運動することは、脳全体を活発化させ、認知症予防に繋がる最も効果的な方法です。
逆に言えば、運動を制限することが、認知症の発症や悪化を招く可能性があります。

例えば、身体拘束がそれに当たります。

介護保険制度における身体拘束禁止規定とは?

身体拘束とは、簡単に言えば、動けなくすること、つまり、運動を制限することです。

自分で動けるのに、何かしらの理由で拘束を受けている人は当然、運動することの恩恵を得られません。

「動きたいのに動けない」という状態は、非常に大きなストレスになります。

精神的なストレスが積み重なると、脳や身体に重大な悪影響をもたらします。

身体拘束は高齢者虐待にも含まれます。

高齢者虐待とは

虐待の要因として、ストレスは上位にランクインします。

そして、高齢者虐待の被害者のうち8割は、認知症を抱えていると言われています。

介護疲れの余波は、このようなところに現れるのです。

アンガーマネジメントの効果と限界

怒りと上手に付き合うために必要なこと

アンガーマネジメントとは、非常に簡単に言うと、怒りと上手に付き合うためのスキルです。

「怒りを6秒我慢」という言葉をよく耳にするかもしれません。
怒りを感じても、6秒我慢すれば落ち着くそうです。

個人的にどうかと思ったのは、輪ゴムを手首にかけて、怒りを感じたらその輪ゴムを引っ張ってパチンパチンするという方法です。
それで落ち着く人もいるかもしれませんが、周囲から見ると奇異な印象を与えかねません。

そもそも怒り出す前に人のいないところまで行けたら、もう落ち着いているでしょう。

とにかく、アンガーマネジメントのスキルを磨けば、そもそも怒りを感じること自体が減ってくるということです。
それができれば、世界から「カッとなってやっちまった」というようなことはなくなります。
身に付けて損はないでしょう。

疑問を感じる点

しかし、個人的には疑問を感じる点もあります。

アドラー心理学のアルフレッド・アドラーは、このように言っています。

感情は「排泄物」なのだ。「排泄物」を操作しても何も変わらないだろう。

喜怒哀楽と言いますが、怒りは感情としては自然なものです。
それをコントロールしようとすることには、無理が生じます。

6秒間我慢すれば怒りは収まるかもしれませんが、その怒りによって分泌されたストレスホルモン「コルチゾール」はどうなるのでしょうか?

運動とコルチゾールの関係

運動することで、コルチゾールはストレスへの抵抗力を向上させるように働きます。

おそらくですが、アンガーマネジメントによってコルチゾールをコントロールすることはできません。

アンガーマネジメントは突発的な怒りには効果的だと思われます。
しかし、それは我慢ありきです。

我慢はストレスコントロールとは全く異なります。
強いて言うなら、アンガーマネジメントは業務を円滑に遂行するための感情コントロールと言えます。

多くの人が、社会人としては必須スキルだと言うでしょう。

つまり、忍耐力を養うことが重要ということですね。

忍耐は成功のためのマインドに不可欠なものですから、確かに必須と言えるでしょう。
ただし、我慢の容量を超えて、自分という器を壊してしまうリスクがあります。

ストレスと上手に付き合うために

運動することによってストレス反応を軽減する心身の基盤を持ち合わせていれば、より効果的なアンガーマネジメントスキルを実施できるのではないでしょうか。

ひいてはそれが、ストレスが爆発して虐待に走ってしまうことを防ぎ、認知症の発症を防ぐことにも繋がるのです。

それが、怒り、そしてストレスと上手に付き合うために必要なことだと思います。

フレイル予防

フレイルとは、加齢に伴って虚弱状態になってしまうことで、要介護状態の予備軍のようなものです。
近年、フレイル状態を予防しようという取り組みが盛んになっています。

その予防のために勧めているものの一つは、やはり「運動」です。

この場合の運動とは、体操やストレッチを中心に行われます。

認知症を考える以前に、基礎体力を向上して、関節の柔軟性を維持することを目的としています。
適切に行えば、大きな効果が期待できます。身体的な介護予防としては大変有効です。

エジソンの言葉の解釈

トーマス・エジソンは、このような言葉を残しています。

身体の主たる機能は、脳を持ち運ぶことだ

解釈が難しいですね。

私の解釈で解説します。

運動で得られる快感と生存本能の関係

人間は、運動すればするほど、筋肉など身体が鍛えられていきます。
なぜ身体はそういう作りになっているのでしょうか。

それは、エンドルフィンによるランナーズハイのような、脳内麻薬による快感を脳が求めているからだと思います。

運動すると疲れて辛いものですが、一方で脳は快感を得られるようにできています。それは人間の生存本能に関わっているからです。

文明ができる前の、狩猟民族だった時代、狩りの道具も今ほど便利なものではありませんでした。
そのため、獲物を仕留めるためには、とにかく走り続けるしかありませんでした。

走り続けるのはしんどいですが、諦めたら食べ物がなくて死んでしまうかもしれません。
すると脳は「死んだら困る!報酬を与えてやるから頑張れ!」という感じで、エンドルフィンを分泌します。
それで気持ちよくなって、なんとか獲物を仕留めるまで走り続けることができるのです。

現代の人間でも脳がそのようにできているのは、その時代の名残だと言われています。

人間の脳の大きさは、原人などの時代からそれほど変わっていないそうです。

その時代と現代の、文明などのような大きな違いは、脳そのものの問題ではなく、知識など情報量が現代にはあふれかえっていて、「生まれたらそこに情報があったので活用してみた」というだけの話です。

もし原人の時代にスマホがあったら、きっと原人も使えるようになっていたでしょう。

エジソンの言葉の意味

エジソンの言葉に戻ります。

身体の主たる機能は、脳を持ち運ぶことだ

運動して筋肉がついて鍛え上がっていく理由は、人間は欲求に忠実なので、もっともっと快楽物質を得るために、身体をより運動しやすいように進化させているのだと思います。

エジソンのこの言葉は、身体はそんな脳の欲求を満たすためにあるのだと言っているのではないでしょうか。

まとめ

健全な肉体に健全な精神が宿る

「健全な肉体に健全な精神が宿る」という言葉があります。運動が脳に与える影響のことを考えると、なるほど真理だと感じます。

決して無理な運動を勧めるものではありませんが、この記事が、あなたの健康(将来の認知症予防も含む)と、介護職員として関わるお年寄りの認知症予防及び改善の一助になれたら幸いです。

ちなみに、「健全な肉体に健全な精神が宿る」という言葉は、実は間違って伝わった言葉です。

もともとは古代ローマの詩人ユウェナリウスの言葉で、「健全な肉体に健全な精神が願われるべき」が正しいそうです。

意味は、「身体を鍛えれば心も健康!」ではなく、「心身が健康ならそれでいいじゃない」、つまり「欲張っちゃいかんよ」ということです。

この記事では間違った使い方をしていますが、都合よく使わせていただきました。