認知症の食事の悩みを解決!吐き出す原因別対応と口腔ケアの重要性

介護の現場で最も大変なことのひとつに、食事があります。

認知症の方の場合、なかなか食事が進まないことってありませんか?

この記事では、口腔内の問題の影響で食事を吐き出してしまう認知症の方に食べてもらえるように、原因別の対応方法を紹介していきます。

 

原因を見極める際のポイント

口に入れたものを吐き出す・出すという行為は、食の好みや味覚、口腔機能の不一致が原因と考えられます。

あるいはいくつかの原因が重なる場合もあります。

また、口腔機能の低下から、咀嚼がうまくでいないと嚥下がスムーズにできません。
その状態で無理に飲み込もうとすると窒息するリスクもあるので、口から出してしまうことはある意味、危機回避の行動であると言えます。

さらに言うと、口腔機能が低下している中で、「口から吐き出す機能」はまだ生きているとも解釈できます。

 

口腔内に問題がある場合は口の中をよく確認する必要があります。
ですが、口唇や口腔内はかなりデリケートな部分であるため、認知症のある方の場合は簡単な話ではありません。

口腔ケアなどの際に、歯や歯茎、上あご、舌や頬の粘膜に異常がないか、痛みがないかなどもよく観察しましょう。
痛みをうまく訴えられないのも認知症状のひとつですので、利用者さんの細かい反応にも目を配るようにしてください。

原因に配慮した対応方法

口腔内の痛みへの対応

まずは、痛みの原因を探ります。

  • 虫歯
    痛みがないまま歯が折れたり抜けてしまうことがあります。
    症状がないまま虫歯が進行し、歯の神経が腐って根っこに膿がたまってしまうことで歯肉が腫れ、その痛みで義歯を外してしまう可能性があります。
    義歯がないと摂食機能はがた落ちしますのでね。
    熱が出たりもするので、下手すると食事どころじゃなくなります。
  • 歯周病
    歯肉の腫脹・出血・排膿などで、歯茎がグラグラして食べることに集中できないことがあります。
  • 口内炎
    舌のふちや先端、ほほの粘膜、口唇の内側にできて、すんごいしみることがあります。
  • 義歯による傷
    義歯によって強く圧迫を受けると、口腔内に潰瘍ができることがあります。
    また、クラスプ(残っている歯に引っ掛ける金属のバネ)が変形して、義歯が不安定になったり、粘膜を傷つける可能性があります。
  • 粘膜の傷
    虫歯が放置されとがっていたり、噛み合わせが悪いな口腔内の粘膜を傷つけることがあります。

このいずれかに該当する場合は、早急に歯科受診につなぎましょう。

義歯不適合への対応

体重が目に見えて減った場合、歯茎なども痩せて口が小さくなります。
作ったのが何年も前の義歯では、ガタついて落ちてきたりして食事に集中できません。
ただ、ぱっと見で義歯が合っているかどうか判断するのは難しいので、定期的に歯科受診、または歯科衛生士に確認してもらうのがいいです。

義歯を外した時に、明らかに割れている、欠けてる、ヒビが入っているとか、残渣(食べカス)が多いなどの問題が見られるなら、問答無用で歯科受診しましょう。

歯科受診がどうしてもできなくて、不適合のまま義歯を使う場合、応急的に入れ歯安定剤を使うことがあります。
その場合でも歯科医師の助言を受けた方がいいと思います。

舌の動きが良くない方の対応

舌の動き・機能の問題で、食べ物を口腔内に取り込めない、咽頭へ送り込めないために口からこぼれてしまうのであれば、舌機能をアセスメントします。

アセスメントの結果、舌の緊張が強ければマッサージ、汚れがこびりついて感度が鈍化している場合は清掃して刺激するなどの工夫をします。

また、食事介助の際に食べ物を舌の奥に置くようにしたり、送り込みに重力の力を加えるため、リクライニングするなどして姿勢を調整しましょう。

脳疾患の影響で舌に不随意運動がおこり、うまく食べられない場合もあります。
そういう方は、口腔内の取り込むタイミングが合うと、割と上手く食べれたりするので、その都度こぼし具合を観察しましょう。

食事の半分も食べれないほどの状況では、薬剤の副作用という可能性もあるので、主治医と相談するのもひとつの手です。

※姿勢を調整する場合の目安(ベッドの場合)

口唇閉鎖不十分の場合の対応

脳疾患の後遺症で顔面に麻痺があったり、口腔周囲の筋力低下・廃用によって、摂食時に口唇が閉じずにこぼしてしまうことがあります。

食事介助の際に、上唇や下あごにあなたの手を添えて、口唇を閉じたり咀嚼する動きをアシストしてみてください。

咀嚼・送り込みが不十分な場合の対応

咀嚼力と食形態が合ってない場合は、思った以上に多いです。
これらが合ってないと誤嚥などのリスクが急上昇します。

まずは、咀嚼できる臼歯(奥歯)があるかどうか、義歯の噛み合わせは良いかを確認します。

摂食の流れの中で、

  1. 咀嚼
  2. 唾液と混和
  3. 食塊形成
  4. 舌で咽頭へ送り込む

という一連の流れがありますが、これがスムーズでない場合があります。

認知症の後期では、口腔顔面失行(適切な動作を行えない)が見られるようになりますが、いつまでも噛んでて飲み込まないなど、「飲み込んでください」と伝えてもその通りにできないことを指します。
これは飲み込む機能がなくなったわけではなく、自分で意図して行動に移せないということです。

リラックスしながら食事に集中できる環境を整えるなど、自然に飲み込みが起こるよう工夫します。

 

過敏への対応

食べ物を口に入れた時に、食べ物と認識せずに異常なものだと感じてしまうことがあります。

「食べ物を吐き出す」という行為自体を見れば、口腔の感度が良いという捉え方もできるので、過敏になっている感覚を和らげることができれば、食べてくれるようになるかもしれません。

口腔周囲の、口から離れた位置からやんわりとマッサージを行い、魅惑の手つきでゆるゆるにリラックスしてもらいましょう。

味覚障害への対応

舌苔がついていたり、強度に口腔乾燥がある、または亜鉛不足による味覚障害が見られる場合があります。

毎日の適切な口腔ケアを行ってくださいね。

口腔内の状態は、割と体調のアドバンテージをなしていると言えますので、場合によっては内科的な治療が必要になるかもしれません。

機能とペースが合わない場合の対応

すんごい食べるの早い人っていますよね?
若く健康なうちなら、単に「咀嚼が少なくて嚥下が早い」で済ませるのですが、嚥下機能が低下している利用者さんの場合、飲み込めてないのに次の一口を口に入れて、むせて吐き出すことがあります。

食べるテンポをペーシングと呼んだりしますが、ペーシングが速いと窒息や誤嚥の原因になりますので、食器類、提供の仕方、声の掛け方、食形態などの環境を見直してみてください。

感覚低下への対応

高齢の方は、口腔の温度感覚や触覚んどの感覚が低下している可能性があります。

介護施設などでは、火傷しないよう熱々の食事提供を控える場合があると思いますが、そうでなくても、食事に時間がかかって食べ物がぬるくなってくると、口に入れても刺激として認識されないかもしれません。

自分でフーフーと冷ませない方であれば、やはり熱々を提供するわけにはいかないでの難しいところですが、人肌の温度で提供すると高確率で認識しないので、注意しましょう。

唾液も少なくなっている場合、味覚にも影響があります。
風味や味t家、食形態を工夫していきましょう。

口腔ケア

口腔内を観察、清潔保持や唾液分泌の促し、快適な刺激を与えるといういいとこどりなのが口腔ケアです。

一回のケアで完全にきれいにしようとすると、かえって不快だったり、口腔内を傷つけてしまうこともあるので、毎日根気強くケアしていくことが大事です。

まとめ

寝たきり、発語が少ない、口腔ケアが不十分な方などは、口腔内の問題が生じやすく、食べたものを吐き出しがちです。

今回お話ししたように、原因を評価して適切に対応すれば、案外すんなり解決することもあります。
当てはまる状況がありましたら、ぜひ試してみてください!