「最近、親の食事量が減ってきた…」
「食事のたびにむせてしまい、見ていて怖い」
「介助に時間がかかり、親子でストレスを感じている」
介護に携わる中で、食事に関する悩みは尽きないものです。
多くのご家族から相談を受ける中で、このような切実な声を何度も耳にしてきました。
食べることは、命をつなぐだけでなく、人生の大きな楽しみの一つです。
その大切な時間が、不安や苦痛に変わってしまうのは、ご本人にとってもご家族にとっても、非常につらいことだと思います。
しかし、ご安心ください。
食事のメカニズムである「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」を正しく理解し、少しのコツを掴むだけで、食事介助の負担は驚くほど軽くなります。
この記事を読めば、食事の時間が不安から安心に変わり、ご本人の「食べる喜び」とご家族の笑顔を取り戻すための具体的なヒントが得られます。
明日からすぐに実践できる方法を、私の経験を交えながら分かりやすくお伝えします。
1. なぜ「食欲」が大切なのか?食事は口に入れる前から始まっている
「お腹が空く」という感覚(空腹)と、「これを食べたい」と感じる気持ち(食欲)は、似ているようで全く異なります。
- 空腹: エネルギーが不足すると脳の視床下部が感じる、生理的な感覚です。
- 食欲: 食べ物の見た目や香り、過去の記憶などから「美味しそう」「食べたい」と感じる、脳全体を使った高度な精神活動です。
例えば、ひどくお腹が空いていても、苦手なものが食卓に並んでいたら「食べたい」とは思えませんよね。
ストレスや疲れが溜まっている時も同様です。
高齢者の食事量が減る背景には、この「食欲」の低下が大きく関わっています。
そして、この食欲こそが、安全に食事をするための第一歩となるのです。
美味しそうな見た目や香りを感じて「食べたい」と思うと、脳から指令が出て、唾液の分泌が促されたり、胃腸が動き出したりと、身体が自然に食べる準備を始めます。
この準備が、後のスムーズな飲み込みにつながる、いわば「助走」の役割を果たすのです。
2. 安全な食事の鍵を握る「摂食嚥下5期モデル」とは?
私たちが普段、無意識に行っている「食べる」という行為は、実は5つの連続したステップに分かれています。
これを「摂食嚥下5期モデル」と呼びます。
この流れのどこか一つでも滞ると、「むせ」や「誤嚥(ごえん)」のリスクが高まります。
一つひとつの段階で、ご家族が確認できるチェックポイントと介助のコツを解説します。
【第1段階】先行期(認知期):目で見て味わい、「食べたい」と感じる
- どんな段階?
食べ物を目で見て、それが何かを認識し、「どうやって、どれくらいの量で食べようか」と判断する、口に入れるまでの準備段階です。 - 介護のチェックポイント
- 意識ははっきりしていますか?
- 食べ物を目で追えていますか?
- 集中できていますか?
- 箸やスプーンを正しく使おうとしていますか?
- プロの介助のコツ
私の経験上、この先行期が最も重要です。
「さあ、ご飯ですよ」とすぐ口に運ぶのではなく、「今日は美味しそうなカレイの煮付けですよ。いい匂いがしますね」と、視覚や嗅覚に働きかける声かけをしてみてください。
メニューを一つひとつ説明するだけでも、脳は刺激され、食欲が湧きやすくなります。
また、麻痺がある方の場合、見えている側に食器を配置する配慮も大切です。
【第2段階】準備期(そしゃく期):口の中で噛み砕き、飲み込みやすい形にする
- どんな段階?
口に入れた食べ物を、唾液と混ぜ合わせながらよく噛み、飲み込みやすい「食塊(しょっかい)」という塊を作る段階です。 - 介護のチェックポイント
- しっかりと口を閉じて噛んでいますか?
- 食べ物を口からこぼしていませんか?
- 舌はスムーズに動いていますか?
- 入れ歯(義歯)は合っていますか?
- プロの介助のコツ
もし口を開けたまま噛んでいる(口唇閉鎖不全)と、食べ物がうまくまとまらず、誤嚥の原因になります。
そのような場合は、介助者がスプーンで下唇を軽く押し、口を閉じるよう促してあげると効果的です。
また、入れ歯が合わずに痛がる方も多くいらっしゃいます。
食事中に顔をしかめるような素振りがあれば、歯科医に相談することも重要です。
【第3段階】口腔期:舌を使って、食べ物を喉の奥へ送る
- どんな段階?
準備期で作った食塊を、舌の巧みな動きによって喉の奥へと送り込む段階です。 - 介護のチェックポイント
- 舌でうまく食べ物を送り込めていますか?
- いつまでも口の中で噛んでいませんか?
- 飲み込んだ後、口の中に食べ物が残っていませんか?(食物残渣)
- プロの介助のコツ
Yahoo!知恵袋などでも「いつまでも飲み込まずに口に溜め込んでいる」という悩みをよく見かけます。
これは、舌の動きが悪くなり、うまく送り込みができていない可能性があります。
一口の量が多すぎるのかもしれません。ティースプーンにするなど、一度に口に入れる量を少なくするだけで、スムーズに送り込めるようになるケースは非常に多いです。
【第4段階】咽頭期:ゴクンと飲み込む
- どんな段階?
食べ物が喉を通過し、食道へと入っていく瞬間です。
「嚥下反射」という、自分の意思ではコントロールできない反射運動によって行われます。 - 介護のチェックポイント
- ゴクンという飲み込みの音は聞こえますか?
- むせたり、咳き込んだりしていませんか?
- 食事中に声がガラガラしていませんか?(湿性嗄声)
- 鼻水が出ていませんか?
- プロの介助のコツ
飲み込む際は、軽く顎を引いた姿勢が最も安全です。顎が上がっていると、気管が開きやすくなり、誤嚥のリスクが格段に高まります。
クッションなどを使い、首が後ろに反らないように姿勢を整えてあげましょう。
万が一むせてしまった場合は、慌てずに前かがみの姿勢をとらせ、咳をさせてください。
【第5段階】食道期:食道から胃へと食べ物を運ぶ
- どんな段階?
食道の筋肉が自動的に動く「蠕動(ぜんどう)運動」によって、食べ物が胃に運ばれる最終段階です。 - 介護のチェックポイント
- 食後に咳き込むことはありませんか?
- 「胸につかえる感じがする」と訴えていませんか?
- 吐き気や嘔吐はありませんか?
- プロの介助のコツ
食後すぐに横になると、胃の中のものが食道に逆流しやすくなります。
食後30分~1時間は、座った姿勢を保つように心がけてください。
これは、誤嚥性肺炎の予防に非常に効果的であると、厚生労働省の資料でも推奨されています。
3. 5つの段階は連動している!全体を見ることの重要性
これら5つの段階は、それぞれが独立しているわけではなく、全てがスムーズに連動することで「安全な食事」が成り立っています。
例えば、「うまく飲み込めない(咽頭期の問題)」という場合でも、原因を探ると「そもそも食べる姿勢が崩れていた(先行期の問題)」ということが少なくありません。
一部分だけを見るのではなく、「食べる準備」から「食後」までの一連の流れとして捉え、どの段階でつまずいているのかを観察することが、問題解決への近道となります。
まとめ:明日からできる食事介助3つのポイント
この記事の要点をまとめます。
安全で楽しい食事の時間を取り戻すために、まずは以下の3つから始めてみましょう。
- 食事の前に「食べたい」気持ちを引き出す:
メニューを伝えたり、料理の香りをかいでもらったりして、五感を刺激しましょう。 - 一口の量とペースを見直す:
ティースプーンを使うなど、一度に口に入れる量を少なくし、ご本人が完全に飲み込んだのを確認してから次の一口を運びましょう。 - 「顎を引いた」正しい姿勢を保つ:
クッションなどを活用し、少し前かがみになるくらいの姿勢を意識してください。
食後30分は座ったままでいることも忘れずに。
Q&Aセクション
Q1. 食事中にむせたら、どう対処すればいいですか?
A1. 慌てずに、まずはご本人に前かがみの姿勢をとってもらい、強く咳をしてもらいます。背中をさするのではなく、下から上に軽く叩くようにすると、異物が出やすくなります。水やお茶を飲ませるのは、かえって危険な場合があるので、むせが落ち着くまで様子を見てください。
Q2. 食欲がないようなのですが、無理に食べさせるべきですか?
A2. 無理強いは禁物です。ご本人の苦痛になるだけでなく、食事そのものに嫌悪感を抱いてしまう可能性があります。まずは、なぜ食欲がないのか(体調、薬の影響、口内の問題など)原因を探ることが大切です。少量でも栄養価の高いものを用意したり、本人が好きなものを準備したりする工夫も有効です。
Q3. 入れ歯が合わないようなのですが、食事はどうすればいいですか?
A3. 入れ歯が合わないと、痛みで噛むことができず、食事が進まない大きな原因となります。早急に歯科医に相談し、調整してもらうことが最優先です。それまでの間は、無理に固いものを食べる必要はありません。歯茎でも潰せるくらい柔らかく調理した食事(刻み食やソフト食など)を用意してあげてください。
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