介護の現場で最も大変なことのひとつに、食事があります。
認知症の方の場合、なかなか食事が進まないことってありませんか?
この記事では、おびえたような目つきで食事や服薬、食事介助なども拒否してしまうような認知症の方に食べてもらえるように、原因別の対応方法を紹介していきます。
拒否する原因を見極める際のポイント
おびえていたり、警戒しているような目をしている場合は、せん妄が起きている可能性があります。
せん妄を引き起こす要因に照らしながら、せん妄かどうかをアセスメントしましょう。
特に認知症の方では、急激な環境の変化、寂しさなど不安な状態、睡眠障害が続くことでせん妄が発生しやすいので、普段の生活状況を注意する必要があります。
逆にせん妄ではなかった場合、認知症の症状などを含めてどんな状態なのかをアセスメントして、環境などの因子をどう整えていけばいいのかを見極めます。
ちなみに、食事は大丈夫でも服薬を拒否する場合は、服薬介助の方法、あるいは薬自体の改善が必要です。
薬の大きさや形、味、服薬する時間、介助方法などをアセスメントして、対応方法を検討します。
原因別 対応方法
せん妄への対応
まず、せん妄とは何かを簡単に言いますと、せん妄とは、脳機能の失調によって起こる注意障害を伴う意識混濁や、幻覚・錯覚がみられる状態です。
間違われがちですが、認知症とは別物です。
せん妄は、
- 急激に発症する
- 1日の症状の変動が変わる(日内変動)
- 落ち着くとすっかりもとに戻る(可逆性)
という点で違ってたりします。
認知症はあくまで、せん妄が起こりやすくなる背景(準備因子)ということになります。
せん妄が発生した時は、直接因子の早期治療と、誘発因子の早期対処が必要です。
また、それによってせん妄の予防も可能になります。
口腔顔面失行への対応
口腔顔面失行とは、認知症の症状で言う失行が口や顔に発症することです。
アルツハイマー型認知症の方に多く、口を開ける、舌を出すなどの動作が意図的にできなくなります。
このため、「口を開けてください」と言葉で伝えると、かえって口が開けられないわけです。
このケースは、視覚や味覚などの五感や好きな食べ物を活用することで、自然な開口・咀嚼・嚥下がしやすい状態を作ります。
食事介助をする際には、食べ物をすくったスプーンや箸、あるいは汁物などを入れたお椀やコップを下口唇につけると、「あ、食べ物キタ」という信号になって口が開くこともあります。
また、手を口元まで運ぶことができる程度の運動機能があるなら、おにぎりやサンドイッチなど持って食べられるものなどの工夫によって、手と目と口の協調運動が働き、自然な摂食行為につながるんです。
縄跳びやスキップ、サッカーのドリブルなどが協調運動に含まれます。
得体のしれないものを口に押し込まれるような恐怖感への対応
仮に僕たちが介助を受けるとしたら、「今まさに食べ物が口に入ろうとしている」とわかっているので、抵抗なく口を開けることができます。
服薬もそうです。
「食事や服薬を介助されている」という認知が無ければ、無理やりよくわかんないものを口に押し込まれるような恐怖を感じている可能性があります。
こんな場合は、やはり恐怖感を和らげることが重要です。
そこで、最初の関わり方を見直してみましょう。
介護の仕事のうち、大変な業務としてトップ3に入るであろう食事介助。
時間に追われながらも、優しい笑顔で隣に座っていられてますか?
僕はよく無表情になります。(おい)
穏やかな表情や口調で、相手の緊張をほぐしてあげましょう。
その上で、食べ始めを好きな食べ物にしたり、自分の手で食べられるように支援することで、協調運動による自然な開口を促すことができ、恐怖感も次第に薄れていくんです。
食事は食べても服薬は拒否する場合の対応
食事は食べるのに薬を飲んでくれない場合は、次のようなことも考えられます。
高齢の方は体力が低下(活動耐性の低下)している場合が多いので、食事をしている間に疲れてしまいがちです。
それに伴って嚥下に関連する筋肉なども疲れてしまうので、誤嚥しやすい状態になります。
そのため、ますます薬が飲みにくくなるというわけです。
薬に限らずですが、飲み込むのがしんどいのに、口を進んで開けようすることは通常、ありませんよね。
解決法のひとつはいたって簡単。
食後薬を食前に飲んでもらえばいいんです。
実は食後薬ってのは、「絶対に食後じゃなきゃダメな薬」ってわけではありません。
食後薬が食後薬である理由は、「食後じゃないと効果がない」のではなくて、「食後にすることで飲み忘れを防ぐ・用法を守りやすくする」ためなんです。
基本的にはいつ飲んでも良くて、5~6時間とか間隔を適切に開けて服用する必要だけあるので、食後に設定することで適切な服用がしやすくなるって狙いがあります。
中には空腹時に服用してはダメな薬もありますが、それもあくまで「空腹」がダメなだけであって、直前にヨーグルトっか何か食べておけば、別にお夕飯の後とかじゃなくてもいいんです。
ということで、食後薬を飲んでくれない場合は、薬剤師などに相談してみましょう。
薬のサイズが大きすぎるろか、味が苦手な場合も、変更が可能なら相談してみましょう。
粉薬などは、服薬ゼリーなんて使いやすいものがありますし、ごく少量のはちみつやオリゴ糖に混ぜて服用するのもいいですね。
他にも、認知症を発症する前の飲み方を踏襲することで、すんなり飲んでくれることがあります。
家族等に確認できる場合は、聞いてみるのも手です。
ただし少なくとも、食べ物に薬を混ぜて飲ませるようなことはしないでください。
食事まで食べてくれなくなりますので。
幻視への対応
レビー小体型認知症の症状の一つに、幻視があります。
この場合は、本人に何が見えているかを確認して、不安を解消してあげましょう。
例えば、ご飯に虫などが入っていればそりゃあ食べる気も失せますから、本人と一緒にご飯を盛りなおすなど、納得してもらえる手段をいろいろ試してみましょう。
今日うまくいっても明日ダメだったり、その逆もあるので、こりずに根気強くね。
ふりかけやゴマが虫も見えることもあります。
事前にかけて出さないように気を付けでください。
他にも照明による影が影響することもありますので、席を変えるなどの配慮も効果的です。
幻視は、パーキンソン病の治療薬の副作用により発生することもあるので、幻視の出現頻度が高い場合は主治医への相談も必要ですね。
「食べたくない」という意思表示への対応
本人が「食べたくない」と言う場合、次のことが理由であると考えられます。
- 空腹を感じていない(エネルギー摂取量過多を含む)
- 眠気が強い
- 嫌いな食べ物
- 薬物の影響
- 精神的ストレス
- 義歯の不具合、口内炎など口腔内の痛みや合併症
- レビー小体型認知症による認知症状の変動
- 終末期による食欲低下
①②に関しては、休息と活動、睡眠と覚醒リズムを見直しながら、食事時間をずらすことで食べれる可能性があります。
③は、好きな食べ物に代替えしましょう。
④~⑥はそれぞれの原因の除去で解決する可能性が高いです。
⑦⑧では、日・週・月内変動がありますので、1週間から数か月単位でエネルギー摂取量を観察しながら、無理なく対応していきましょう。
まとめ
「食べたくない」には必ず理由があります。
その原因を適切に評価できるかでその後の対応が違いますので、あせらずじっくり観察してくださいね。