介護の現場で最も大変なことのひとつに、食事があります。
認知症の方の場合、なかなか食事が進まないことってありませんか?
この記事では、笑顔で穏やかなのに拒否して食べてくれない認知症の方に食べてもらえるように、原因別の対応方法を紹介していきます。
原因を見極めるポイント
穏やかなのに、頑なに拒否する方ってけっこういますよね。
そういう方は、
- 「食べれない」状態なのか
- 「食べまいとしている」状態なのか
これを見極め、認知症状以外の主傷病にも配慮する必要があります。
「食べれない」状態で考えられる原因
お腹がすかない
- 認知症の方
意欲低下・妄想・抑うつ等の認知症状や空腹中枢の障害 - 認知症以外
食べすぎ・間食する・便秘 - その他の疾病
消化器疾患・うつ病・脳疾患・点滴
嗜好に合わない
- 認知症の方
認知症状としての嗜好の変化・偏食 - 認知症以外
好き嫌い - その他の疾病
嗅覚異常・味覚異常・舌苔や歯垢など口腔環境の悪化
飲み込みにくい
- 認知症の方
抑うつ - その他の疾病
咽頭炎や悪性腫瘍など咽頭の疾患・義歯が合わない・嚥下障害
遠慮している
- 認知症の方
幻覚・妄想(あなたが食べなさいみたいな)・見当識障害 - 認知症以外
遠慮深い性格(MCIなどのような軽度の認知症状の可能性も) - その他の疾病
様々
食べ物を認識できない
- 認知症の方
記憶障害・注意障害・幻覚・妄想 - その他の疾病
意識障害・白内障や糖尿病性網膜症などの視覚障害
食事の時間だと認識できない
- 認知症の方
見当識障害・記憶障害・注意障害・幻覚・妄想 - その他の疾病
意識障害・脳疾患
「食べまいとしている」状態で考えられる原因
「死にたい」「どうせ死ぬから」と考えている
- 認知症の方
幻覚・妄想・抑うつなど - その他の疾病
うつ病や統合失調症などの精神疾患
原因に配慮した対応方法
認知症の方の食事において、大きく分けると
に分けられます。
認知症が軽度の方の場合は食行動の障害であることが多いです。
重度の認知症の方には嚥下障害が多いですね。
このどちらが原因であるかを見極めて、その障害に応じて対応していく必要があります。
障害として起こっていることは一朝一夕で改善できるとは限りませんので、根気強く続けていきましょう。
食べ物を認識できない場合の対応
- 視覚
・食器と食べ物の色分け、盛り付けの彩りの工夫
・「今日のご飯です」等書かれたカードを置くなど、文字による誘導
・目の前で一緒に同じものを食べて見せる
・使い慣れた食器の使用 - 嗅覚
・いいにおいのたつ食べ物を用意する(カレー・ラーメン・焼肉など) - 聴覚
・煮物や揚げ物などの調理の音を聞かせる
・グラスに飲み物を注ぐ音を聞かせる - 味覚
・少し濃いめの味付けにする
・濃い味・控えめの味とメリハリをつける - 触覚
・おのぎり、サンドイッチ、まんじゅうなどを手に持たせる
・使い慣れた食器の使用
記憶障害がある場合の対応
記憶障害がある方でも、昔の記憶(長期記憶)は保たれているのであれば、慣れ親しんだ味付け、子供の頃によく食べていたものなどを提供します。
使い慣れた食器を使用することも重要です。
消化器症状に関する問題がある場合の対応
誰でも、空腹感を感じないと食欲は出ません。
まずは消化器に問題がないかの確認をしましょう。
特に、向精神薬を服用している場合は便秘傾向になりやすいので、腹部膨満感がないかを確認してから食事を提供してください。
嗜好に合わない・食べたことがない場合の対応
嫌いな食べ物や、初めて見る食べ物は、簡単には食べようとは思いません。
家族など、利用者さんの嗜好や生活歴をよく理解している方からの情報収集を行いましょう。
収集する情報は
- 家族構成
- 出身地
- 性格
- 趣味
- 好きな食べ物・嫌いな食べ物
- 1日の食事回数
- 食事時間
- 食事環境
と、かなり多岐にわたりますが、これら全てがその人の食事に影響しているので、必ずバックグラウンドは抑えておきましょう。
そして、それに合わせた食事提供ができれば解決につながる可能性があります。
実際に解決につながった方法
- 思い出・思い入れのある料理やお菓子などから食べる事を勧めた
- 食事時に、本人の好きな人形を隣に置いた
- 毎日同じ時間に本人の好物を持参し、食べるよう勧めた
- むやみに声掛けせずに、さりげなく食べ物を置いてみた
- お気に入りのエプロンをつけた
- 食事時に童謡を流した
どれも何気ない日常的なもので、少し意外なものであったりします。
記憶を想起させるカギというのは人それぞれなので、何がきっかけになるか、いろいろ試してみるといいですね。