これまで、アルツハイマー型認知症の医学的な特徴について解明されてきた多くあります。
ですが、それらがどのような原因によって発症に至ったのかは、未だに解明されていません。
「認知症の薬を作る」
認知症を患う本人やその家族にすれば、もう夢のようなものです。
現状、創薬研究においては様々な仮説を検証し、それに基づいて開発を進めるしかありません。
アルツハイマー型認知症の原因はすべて明らかにはなっていないものの、病理学を通じて「体の中で何が起こっているのか」が少しずつ分かっているのも事実です。
それをもとに病因の仮説を立てて、治療薬開発を進めています。
現在の認知症薬の基礎となっているのが、以下の仮説です。
- コリン仮説
- グルタミン酸仮説
この他に、以前は最も有力視され、現在では否定されつつあるアミロイドカスケード仮説もありますが、今回はコリン仮説とグルタミン酸仮説に焦点を当ててお話しします。
コリン仮説とは
1970年代から、神経伝達物質の研究が盛んに行われるようになっています。
患者の死後の脳の研究から、アルツハイマー型認知症患者は記憶に関する神経伝達物質の一種であるアセチルコリンが減少しているとの報告があがりました。
さらにその後の研究で、アセチルコリンの減少により記憶が障害されるというコリン仮説が、アルツハイマー型認知症の病態仮説として提唱されるようになったんです。
この情報のやり取りをメールに例えてみましょう。
通常、メールの送受信をつないでいるのがアセチルコリンのみなさんです。
アセチルコリンたちはメールをバトンリレーのようにつないで運び届けているのですが、アセチルコリンが人材不足に陥ることで、メールが途中で止まってしまいます。
それがいわゆる、アルツハイマー型認知症での記憶障害や理解力低下として現れるわけです。
アリセプト爆誕
コリン仮説が正しいとすれば、
脳内のアセチルコリンを増やすことができれば記憶障害が改善する!
という結論に行きつきます。
そこで、アセチルコリンを分解してしまう酵素であるアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する薬剤を作ろうということになりました。
それによって生まれたのが、ドネペジル塩酸塩(アリセプト)です。
メールの送受信をつなぐもの
先述の通り、アセチルコリンはメールの送受信を担っています。
アセチルコリン自体は、消化管などにも多く存在していますが、脳内でのアセチルコリン低下が記憶障害の大きな要因になっています。
そこで、脳内のアセチルコリンだけを増やそうという薬が数種類、開発されているようです。
実は、メールを運んでいるのはアセチルコリンだけではないとも言われています。
ブチリルコリンというものです。
ブチリルコリンの正確な役割と、アセチルコリンとの関係はまだ解明されていないようですが、その働きが似ているということです。
そこで、ブチリルコリンの量も増やせるような認知症薬も開発されています。
グルタミン酸仮説
神経伝達物質というのは、アセチルコリン以外にも数多く存在しています。
その中のひとつであるグルタミン酸の働きと、その受け取り側であるNMDA受容体の変化に着目したのがグルタミン酸仮説です。
グルタミン酸がメールを運んでおり、NMDA受容体はそれを一時保管するクラウドだと思ってください。
通常ならグルタミン酸が適切にメールをクラウドに運んでいきます。
しかしメールには、時々フィッシングメールなどの迷惑メールが送られてきますよね?
その迷惑メールを運んでいるのが、アミロイドβなどの異常なタンパク質です。
両方のメールが増えすぎると、やがてクラウドはパンクしてしまいます。
パンクして不具合が発生し、スマホまたはパソコン(=脳)が機能障害を起こす・・・これがグルタミン酸仮説です。
グルタミン酸の役割
グルタミン酸は脳内においては興奮性神経伝達物質として働きます。
ちなみに、それとは逆の抑制性神経伝達物質を、通称GABA(ギャバ)と言います。
グルタミン酸の受け取り手のひとつであるNMDA受容体は大脳皮質や海馬にたくさんあって、記憶や学習能力に関係していると言われています。
アルツハイマー型認知症患者の脳内では神経細胞が減っていることが確認されていますが、その原因がグルタミン酸のもつ神経毒性ではないかとされています。
グルタミン酸はNMDA受容体と結合することで興奮性神経伝達物質の役割を担います。
これはコリン仮説でも例えた、メールの送受信にも通じるものですね。
アルツハイマー型認知症患者の脳内ではこのグルタミン酸が過剰に分泌されている、あるいは、NMDA受容体の数が少なくなっていると考えられています。
つまり、NMDA受容体の数に比べてグルタミン酸が多すぎる状態になっているんです。
例えると、メール送受信しまくってるのにクラウドのギガ数足りてない感じ。
これに加えて、迷惑メールに例えたアミロイドβまで来ちゃうもんだから、神経伝達が異常なまでに活性化してしまうんですね。
これら両方の働きが、神経毒性と言われる所以です。
神経細胞が死ぬ原因
NMDA受容体の数に対してグルタミン酸が多すぎたり、アミロイドβがグルタミン酸と同じ働きをしようとすることで、神経細胞内部にカルシウムイオンが過剰に流入します。
すると神経細胞内部の酵素が必要以上に活性化し、結果、神経細胞が死んでしまうんです。
クラウドが不具合を起こすということですね。
さらに、こういった不必要な活性化がノイズのような障害を引き起こし、記憶の形成を妨げると考えられています。
グルタミン酸仮説を理解しにくくしているもの
仮説の説明をなるべく簡単にまとめてみましたが、それでもちょっと難しいですよね。
それをさらに混乱させている要因があります。
実は、統合失調症の病態仮説にも、同じグルタミン酸仮説というものがあるんです。
これもNMDA受容体が絡んでいる点では一緒なんですが、それぞれに違う特徴もあります。
アルツハイマー型認知症では神経細胞が死んだり、アミロイドβがかんよしていることが特徴です。
対して統合失調症では、「グルタミン酸による興奮神経伝達」と「GABAによる抑制性神経伝達」がのバランスがとれなくなっているという特徴があります。
同じグルタミン酸という共通点がありつつも、結果として別の形で発症してしまうんですね。
まとめ
これらの仮説を知ることで、介護職員の何が変わるわけではありません。
ぶっちゃけ、知らなくて良いことです。
ですが、これらの仮説に基づいて開発された処方薬が多数あって、それを飲んでもらうよう介助するのは介護職員の役割です。
仮説は仮説であり、薬が良いものとは言えない現状はありつつも、薬に頼らなければならないのもまた事実です。
ちょっとした知識として知ってもらい、「俺知ってるぜ」感を出して、ぜひドヤってみてください。
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