アルツハイマー病の新薬・アデュカヌマブってどんな薬?アミロイドβって何?

令和3年6月7日、アルツハイマー病の新薬が承認されたと話題になりました。

アルツハイマー病の新薬だって!
これで、これ以上認知症の人が増えなくて済むね!
コンペイ
ちょっと待ってください。
薬が出たってだけで飛びつくのは危険ですよ。
えーでも、すっごい話題だよね?
効果ありそうじゃない?
コンペイ
まずはどんな薬なのか知ってからにしましょう。
しっかり解説するので、よく考えてみてください。

果たして、これは「夢の新薬」となり得るのか?
話題の薬がどんなものか、解説します。

アルツハイマー病の新薬ってどんなの?

今回話題となった薬は「アデュカヌマブ」と言います。

日本の製薬会社エーザイと、アメリカの製薬会社バイオジェンが共同開発したこの薬を、アメリカの食品医薬品局「FDA」が承認しました。

これは、アメリカでは販売されるということで、日本国内ではまだ未承認です。
日本で年内に承認なるかと期待されています。

アデュカヌマブの詳細

この薬にはどんな効果があるのかについてお話しします。

アルツハイマー病の原因はまだ全て解明されていませんが、その中でも有力なのがアミロイドカスケード仮説という説です。
これはざっくり言うと、脳内に発生するアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が脳委縮を引き起こしているとする考えです。
アデュカヌマブは、そのアミロイドβを取り除く効果があると言われています。

つまり、今までの認知症薬は症状を抑える程度のものだったのに対し、アデュカヌマブは認知症の原因そのものを排除するので、アルツハイマー型認知症の進行を完全に止めることができると期待されているのです。

費用

アデュカヌマブの投薬方法は点滴です。
4週に1回の点滴治療になります。

その費用は、

1回 : 約40~50万円
年間 : 約500~600万円
※保険未適用(10割負担)

日本で行う場合、後期高齢者医療保険の1割負担でも、1回4~5万円です。

アデュカヌマブを開発したエーザイは、認知症薬でおなじみのアリセプトも生産してますが、アリセプトの費用は10割負担で1回5千~1万5千円です。
70倍以上の差があります。

日本で承認されている認知症薬

日本では現在、4種類の認知症薬が承認され、処方されています。

  1. アリセプト(ドネペジル)
  2. レミニール(ガランタミン)
  3. リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ
  4. メマリー(メマンチン)

アリセプトはシェア1位

アリセプトの効果ですが、記憶に関わる神経伝達物質があって、それは一定期間で自然に分解されるのですが、その分解を防いで神経伝達物質に長く働いてもらおうとするものです。

その神経伝達物質が長く働くことで、記憶保持期間を延長できるということです。
例えると、「リポDあげるから残業頑張って!」というブラック企業のやり口ですね。

細かい説明は専門的過ぎて難しいので省きますが、記憶障害以外の症状にも効果はあるとされています。

日本で承認されている認知症薬4種のうち、アリセプトを含む1~3の3種はいずれも同じタイプの効果があります。

アリセプトは世界でもシェア1位です。
副作用が比較的少ないことや、2・3が軽度~中度の認知症に効果があるのに対し、アリセプトは軽度~重度と幅広く対象にしていることが、シェア1位の理由かと思われます。
(認知症薬なのに副作用の中に「不穏や不眠、徘徊」があるのが気になりますが)

メマリーの効果

メマリーについては、「グルタミン酸仮説」というものがあり、グルタミン酸が記憶の形成に一役かっているという考えで、メマリーはその作用を助ける効果があるとされています。

グルタミン酸は、ご存知「味の素」にうまみ成分として含まれていますが、グルタミン酸仮説によって、「味の素を食べると頭が良くなる」という都市伝説が生まれました。
実際はそんなことありません。

 

ちなみに、認知症の方でリスパダール(リスペリドン)を処方されている人がいますが、これは認知症薬ではなく抗精神病薬で、気持ちの高ぶりや妄想などを抑える薬です。

アデュカヌマブ承認の経緯

アデュカヌマブ承認に至る臨床試験は、次のように行われました。

  1. MCI(軽度認知障害)や認知症のごく初期の人1600人が参加
  2. 投与量で3つにグループ分け
    ①少ない量を投与するグループ
    ②多い量を投与するグループ
    ③偽薬を投与するグループ

※MCIとは、簡単に言うと記憶障害を主な症状とした認知症の一歩手前の状態です。

 

 

この3つのグループのうち、②のグループにおいて

  • 認知機能低下を22%抑制
  • アミロイドβが59~71%減少

という結果が出ました。

…ここだけ聞くと、諸手を上げて喜びたくなるような結果に思えます。
しかし実際は、中間解析の時点で、有効性が確認できず試験を中止しているのです。

かつ、薬はアミロイドβのみに作用するので、投薬したからと言ってアミロイドβによって破壊された神経細胞を回復するわけではありません

なので、中重度の人は、進行は止められたとしても、発症前の状態に戻るわけではない…
つまり、この薬は認知症初期の人にしか効果がないということになります

 

ここである矛盾に気付きました。

なぜ、
試験は中止となった」のに、
認知機能低下抑制やアミロイドβ減少という結果を得られた」のか。

それは、中間解析前に研究の一部が変更されて、先ほどの3つのグループの内、②多い量を投与するグループの人数を増やしたことで、中止後にたまたま、効果が確認できたためでした。

偶然の産物が有効打になり、患者へ早期に薬を提供しようと、迅速承認が行われました。

迅速承認とは、いわば仮免許のようなものです。
市場で販売することは可能なのですが、後に追加試験をクリアしないと承認が取り消されることになります。

 

コロナワクチンも異様な早さで承認されましたが、こちらは「特例承認」という形で、早急な対応の必要がある場合に認められる承認です。

コロナウィルスに関しては緊急性も高いですし、そういった経緯で承認された薬全てに警鐘を鳴らしたいわけではありませんが、こと認知症薬に関しては、安易に飛びついて良いものか、悩みどころです。

結局、効果はあるの?

で、アデュカヌマブは効果があるのか?

今のところは「わからない」が一番正しいと思われます。
副作用は、脳の浮腫・頭痛・転倒などがあるようです。

アルツハイマー病にアミロイドβが関わっているのは間違いありませんが、はたして

  • アミロイドβがアルツハイマー病の原因なのか
  • アルツハイマー病を発症した結果アミロイドβが発生しているのか

という、鶏か卵かって感じでまだよくわかっていません。
アミロイドカースト仮説と先述しましたが、今やそれ自体が疑問視されています。

認知症総患者数がかなり多い中で、軽症の患者でしかエビデンスがない上に、長期間投与してどの程度効果があるかわからない薬にしては費用が高すぎることも問題です。

溜まったアミロイドβを排除しても無駄?

デール・プレデセンという研究者によると、アミロイドβが蓄積するのは、身体に異常があった時の正常な防衛反応なのだそうです。

例えば、

  • 脳に毒素が侵入する
  • 栄養が不足する
  • 炎症が起きる

などが原因で、脳に悪影響が起きます。
すると、脳を守ろうとしてアミロイドβが集まってきます。
そのアミロイドβが増え過ぎると、防衛反応から一転して脳細胞を破壊してしまいます。

健康にいいからと納豆を食べすぎるとかえって中毒を起こす・・・というのと一緒ですね。

ということは、アルツハイマー病の発病を抑えるには、一生涯投薬し続けなければならないってことになります。
アミロイドβは身体に異常があれば自然発生するわけですから、溜まったものを排除しても、いずれまた溜まっていく可能性が高いですよね。

じゃあどうすれば良いか?
毒素の排出と、侵入防止です。

脳に毒素を生み出す原因として、食事に注目が集まっています。
要は、生活習慣を見直しましょうということですね。

アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病が発病する10~15年前から始まっていると言われています。
真に認知症を防ぐのであれば、特効性のない薬に頼るよりも、普段の健康を意識する方が効果的なのではないでしょうか。

 

 

もうひとつの新薬

アデュカヌマブの承認から2~3週間後、同じくエーザイとバイオジェン共同開発のレカネマブという薬が、FDAから「画期的治療薬」に指定されました。

画期的治療薬とは、承認とは違いますが、今後優先的に審査していくというものです。
厳密に言えば、「効果がある」ではなく「治療上の利益が大きい」ということ。

これもアデュカヌマブ同様、アミロイドβを取り除くためのものではありますが、先述の通り、アミロイドカースト仮説は疑問視されています。

まとめ

日本お抱えのアリセプト等4種の認知症薬は、症状を遅らせるイメージが強いと思います。実際は、中核症状を抑制する働きをする、というのが正確なところでしょうか。
ただし効果は高いとは言えず、その割に副作用が強いといった理由から、ヨーロッパなどでは医療保険から外されています。
日本は恐らく保険適用が続くと思われますが。

アデュカヌマブは、初期の初期にしか効果が認められず、未だ確実性の欠けるものです。

重度の認知症を患う方やその家族にとっては、「夢の新薬」という報道はぬか喜びに終わる可能性があります。

それでもそれにすがるしかない家庭が多いという現実は、なんだか少しやるせない話です。