介護の現場で最も大変なことのひとつに、食事があります。
認知症の方の場合、なかなか食事が進まないことってありませんか?
この記事では、食べる以外の行為をしてしまって食事に手をつけてくれない認知症の方に食べてもらえるように、原因別の対応方法を紹介していきます。
食事前の準備状況を確認しよう!
まずは、食事に手をつけてくれない原因を探らなくてはなりません。
ですが最低限の準備をしておかないと、適切に原因を見極めることは難しいです。
そのために、まずは次の通り、食事前の準備が整っているかを確認してください。
食べるための体の準備は整っているか?
- 食事前に排泄を済ませているか
- 疲れていたり、睡眠と覚醒のリズムが乱れていないか
- 発熱などの体調不良、痛みはないか
食べることに集中を維持できる環境が整っているか?
- 食べたいと思える食べ物が提供されているか
- 食卓に食べ物以外の物が置かれていないか
- その環境に、気になる刺激(物音、動く物や人の行き来、においなど)はないか
食べやすい姿勢や場であるか?
- 姿勢は崩れていないか
- 食卓と体の距離、食卓や椅子の高さは適切か
- 座る位置や食事場所は適切か?
これらを確認した上で、利用者さんの前に食事を置いた時、他の行為をして食べないようであれば、それがどんな行為であるのか、食事に集中してもらうためにはどのような環境の改善が必要かを見極めます。
症状別の対応方法
認知症の症状別の対応について詳しく解説していきます。
聴力や理解力低下により食べ物であることが伝わっていない場合
難聴のため聞こえにくい場合には、補聴器を使用するとか、声掛けの音量を上げる・聞こえやすい側の耳元で話すなどの配慮が必要です。
理解力が低下している場合は、食べ物の指差しやジェスチャーなどの非言語的なコミュニケーションを活用して、食事であることを伝えます。
また、脳血管性認知症の方の場合は、記憶の想起から行動に移すまでに時間がかかることがあるので、時にはただ待ってあげるのも必要ですよ。
注意障害により、テレビなど食事以外のものを見つめている場合
テレビや人の行き来、突発的な物音など、視線を奪ったり注意を阻害する刺激があれば排除するよう調整します。
テレビは消して、BGMに穏やかなクラシック系の音楽をかけるといいですよ。
刺激を排除したら、
- 彩の良い盛り付け
- いいにおいの食べ物
- 好きな食べ物
- 同じくらいのペースで食べる人との同席
など、楽しい雰囲気で食事ができる環境を作ります。
それでも注意が逸れる場合は、食べ物を指で指し示したり、「次はこれ食べますか」等の声掛け、利用者の手に軽く触れるなどして、視線を食事に戻してあげましょう。
視空間認知障害により食器の柄などが気になってしまう場合
食器の柄や凸凹が気になって触り、食事に注意がいかない場合があります。
なるべく凸凹や柄のない食器を選びましょう。
失行により、箸などを逆さに持ったりながめたりしている場合
生まれてから今までに身に付けた生活動作がうまく行えなくなることを失行といいます。
僕等の食事スタイルは基本的に、
- 利き手に箸・スプーン
- もう一方の手に食器
というのがほとんどですので、そういう食べる構えがつくられると、スイッチが入ったように食べ始める可能性があります。
あとは、動作を一度アシストするだけで食べ進む場合もありますね。
また、認知症が重度になって、箸やスプーンがうまく使えない方もいると思います。
その場合はおにぎりやサンドイッチなど、手づかみで食べられるものを用意すると、目・手・口の協調運動によって食べやすくなる可能性があります。
実はむせにくくなるという効果も期待できるんです。
持ってある食べ物を別の食器に移したり、混ぜたりする場合
食べ物に視線はいっているものの、口には運ばず混ぜたりするなどで食事が進まない場合があります。
僕の周りでは「遊び食い」って言ってましたね。
なじみの食器に変更したり、とりあえず1品だけ提供して、最初の一口につながるよう支援します。
一回食べ始めると、他の品を戻しても食べ続けたりすることが多いです。
(ダメだったらまた1品に戻してねっ)
まとめ
いかに食事に集中できる環境を作れるかがカギになります。
なかなか食べてくれなくても焦らず、周りを確認してみてくださいね。