一言に認知症と言っても、その症状は多岐にわたります。
まずは、認知症の基礎知識である中核症状と周辺症状について確認しましょう!
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中核症状とは
中核症状とは、文字通り認知症の中でも脳機能の根幹的な症状群です。
記憶障害
記憶力が低下する症状です。
記憶は長期記憶と短期記憶に大別され、↓のように分類されます。
ちょっとややこしい話ですが、長期か短期かに分ける基準として、次のような分類があります。
- 即時記憶
- 近時記憶
- 遠隔記憶
①即時記憶は、直前から1分前までの記憶とされています。
②近似記憶は、1分から数時間前の記憶。
③遠隔記憶は、数時間~昔の記憶です。
さて、①~③の内、どこまでが短期記憶でしょう?
これ、僕の職場でも聞いてみたことありますが、結構間違う人が多かったです。
答えは、①まででした!
1分以上前の記憶は長期記憶に分類されるんですね。
見当識障害
- 時間や日にち、季節が分からなくなる
- 今自分がどこにいるかわからなくなる
- 家族・親戚や友人などの顔がわからなくなる
たいていの場合、①から順に障害されていきます。
夏でも「寒い寒い」と言って厚着して汗だくになっている方がいますが、見当識障害によって季節を勘違いしてプラセボ効果で感覚に影響しているのか、加齢や疾病で血行不良などになった影響かどちらかって感じですね。
②の状態になると、家にいても「家に帰る」という発言が出てきたりします。
③は、息子に向かって「うちの子がお世話になっております」と深々頭を下げたり、他人の女性を妻だと思い込んだりするなどの状態です。
後者は対人トラブルになりやすいので注意が必要ですね。
理解力の低下
僕たちは、日課によって日々を過ごしています。
朝起きて、顔を洗って朝ごはんを食べて・・・という風に、それぞれ独自の習慣を繰り返して生活する。
それが日課です。
ルーティンと同じ意味ですが、介護業界ではあまり使いませんね。
その日課の理解ができなくなって、何もしなくなったり、不自然な時間に行動を起こしたりします。
介護抵抗・拒否なんかも、理解力の低下が原因のひとつです。
介助を受ける際、今自分が何されているかわからないために、「なにすんだコノヤロー!」と怒っちゃうんですね。
判断力の低下
日課を実行するのも一つの判断ではあるのですが、認知症での判断力の低下とは主に、複雑な事柄への意思決定を指します。
病院で医師から提案された治療方針についての決定
何かのサービスとの契約
こういったことの決定ができない、あるいは必要ないのに契約してしまうなどの問題が起きます。
視空間認知障害
視力には問題ないのに、距離感がつかめず目の前の物を手に取れない、見つけられないなどの障害です。
そのためちょっとした段差や障害物にも気づかず、つまづいて転んだりします。
実行機能障害
遂行機能障害とも言います。
計画を立ててその通りに行うことができなくなることです。
調理や掃除、買い物などの家事がうまくできないなどですね。
複数の行動を同時に行うことも含まれてきます。
失語
左脳の言語野が障害されることで、以下のような症状を発症します。
- 言葉の理解はできるがうまく喋れない(ブローカ失語)
- 流暢に話せるが理解ができない、物の名前が思い出せない(ウェルニッケ失語)など
失語の種類は全部で7種類あるそうです。
ググってね!(手抜き)
失行
身体を動かすこと自体には問題ないのに、目的に合った行為ができないことです。
ペットボトルのお茶を見て、どうやって蓋を開けて飲むのかわからなくなるなどがあります。
失認(失認識)
物を見てもそれが何なのかわからなくなることです。
ペットボトルを見ても、それがペットボトルであること、飲み物が入っていることがわからないんですね。
触ったりすることでわかることもあるそうです。
実行機能障害・失語・失認・失行の違い
これらを簡単にまとめると、次のとおりです。
参考までに。
- 実行機能障害
お茶の買い方がわからない - 失語
「お茶」という名前が出てこない - 失行
お茶の飲み方がわからない - 失認
お茶そのものがわからない
周辺症状とは
周辺症状はBPSDとも言われます。
イメージとしては↓の画像のように、中核症状から派生する形で見られる、日常生活に支障をきたす状態というところです。
日常生活への支障とは、本人や周囲の人に害を及ぼす可能性があることを言います。
ただ、理解力の低下からか、感情の制御ができないためか、本人には悪気がないことがほとんどです。
何が問題なのかわからない状態にあるわけです。
また一般的に、中核症状は認知症の方にはどれかが必ず発症すると言われています。
これに対して周辺症状は、必ず発症するとは限りません。
記憶障害はあるけど問題なく生活できている場合もあるということです。
言ってしまえば、周辺症状があったとしても本人には悪気がないもので、「問題だ」と判断するのは周囲の人間なんですよね。
まあ全部忘れていいです
令和3年度から、無資格の介護職員には認知症基礎研修の受講が義務付けられました。
介護福祉士などの資格を持っている人ももちろんですが、今後全ての介護職員は、認知症についての基礎的知識は最低限持ち合わせていることになります。
加えて、介護サービス事業所ではそれぞれ毎年、認知症研修会を開かなければなりません。
その中で必ずと言っていいほど出てくる、先述した中核症状と周辺症状。
いったん全部忘れましょ。
はっきり言って、介護の現場では使わない知識です。
ケアプラン作る時くらいしか使いません。
では資格試験ではどうでしょう?
介護福祉士試験の近年の出題傾向として、「中核症状・周辺症状」という言葉はほぼ出てきません。
それこそ、知識・経験ゼロの新人介護職員や、地域の人に対する認知症サポーター養成講座みたいな状況で大雑把に説明するのには必要ですけどね。
新人や資格を取りたい人が覚えるべき認知症状
忘れていいと言いましたが、認知症状について覚えなくていいというわけではありません。
症状を知らないと、認知症の方相手に適切なケアができないからです。
忘れていいのは、中核症状と周辺症状という「分類」です。
実のところ、中核症状は必ずしも現れるとは限らないと言われています。
一般的には「中核症状はあるが周辺症状はない」という方がざらにいますが、その逆もあるそうです。
介護現場で重要なのは、次の2点です。
- なんの認知症診断を受けているか
- 実際にどんな症状が生活に影響しているか
アルツハイマー型認知症の診断を受けていれば、記憶障害が見られるパターンが多いです。
しかし、程度にもよりますが、生活には支障ない場合もあります。
また、パーキンソン症状が見られる認知症と言えばレビー小体型認知症ですが、アルツハイマー型認知症でもまれにパーキンソン症状が見られる場合があるんです。
なので、診断名を把握しつつ、実際のどのような症状が現れているかを照らし合わせていくと、介護面だけでなく医療面でもどのようなフォローが必要かが見えてきます。
先述の通り、介護福祉士試験の出題傾向を見ても、中核症状・周辺症状で覚えるより、認知症ごとの症状を理解していた方が得点につながりやすいです。
新人介護職員の皆様、介護系の資格取得を目指す皆様は、認知症の種類を覚えていくといいですよ。