何もわからない新人ケアマネに捧ぐケアマネの教科書【アセスメントその②】

新人ケアマネとして活躍するあなた。

覚えること、山ほどありませんか?

  • ケアマネ試験合格からの実務研修
  • ケアマネ事業所の上司・先輩の指導
  • ケアマネになってからの研修(専門研修・更新研修含む)

これだけでも情報量が多すぎてそうそう覚えられたものではありません。
しかし、ケアマネの大変なところは、十分な研修や指導を受ける前に独り立ちすることが多いということです。
さらに言えば、研修の内容だけでは対応しきれないことが、序盤からドバドバやってきます。
僕も新人の頃、それでさんざん悩まされました。

そんなあなたのお役に立てればと思い、僕の体験を交えつつ、ケアマネとしての基礎知識を徹底解説していきます。

この記事では、情報収集から生活の支障を抽出した後の、アセスメントの仕上げについてお話します。

 

アセスメントの仕上げ~そしてケアプランへ~

それぞれ好みの、または所定のアセスメントシートを使って情報取集(本人・家族の意向を含む)を終えたら、次に解決すべき課題とその対応策を検討します。

宮城県版ありきで解説していきますね。
もしあなたが使っている様式が違っても、標準項目が一緒なので応用は効くと思います。

情報収集の内容を記録したら

宮城県版で言うところの「アセスメントのための情報収集シート128」(施設は151)の内容を入力したら、次は「ケアプラン算定のための課題検討用紙」と作成します。

これがケアプランに直結しますので、よく理解しておきたいとこですね。
僕は頭が悪いのでずいぶん苦労しましたが、一度理解できればすぐ慣れます。

頑張りましょう!

この画像の様式に沿っていきます。

項目・細目

項目は、アセスメントにおいて国が定めている標準項目です。
細目は、項目ごとの詳細ってとこですね。

これは固定で、入力するところはないので解説は端折ります。

チェック

細目ごとの必要なところに”〇”を付けます。

”〇”をつけるのは、情報収集の際に支障があると判断した細目です。
例えばADLの項目の、「寝返りが自分ではできない」とすると、それは褥瘡などのリスクにつながります。
それは生活の支障と判断できるので、”〇”をつけていきます。

ここで解決策があるかないかは一旦置いて、とにかく支障があるかどうかで判断してください。

検討が必要な具体的状況

チェックで”〇”をつけた細目に関する詳細を入力します。

これは情報収集シートに入力した内容がワンクリックでペーストされます。
ただ、ペーストされたものそのままでは意味が分かりにくい感じになりがちです。
自分で読んでみて、だれが見てもわかるように整理しましょう。

見られるとしたら上司か市職員ですけどね。

原因

「検討が必要な具体的状況」で挙がっている詳細に対する原因を記入します。

例えば、「健康状態」の中で既往歴に白内障があったとします。
白内障の原因を書く場合は、何も医学的な原因を書けってわけではありません
そこは「病気のため」くらいで大丈夫だと思います。

しかし、それが脳梗塞などだった場合は、比較的原因が特定されやすいです。
脳卒中や心疾患は生活習慣が原因であるケースが多いですよね。
利用者が味の濃い食事を好むなどの場合は、それが原因の可能性が高いです。

原因がはっきりしていると対策が立てやすくなります。
生活習慣の指導とかね。

あと難しいのは、「認知」の項目の原因かなと思います。
例えば「トイレを見ても何かわからない」という状況に対して、原因をただ「認知症のため」とするのは不十分です。
適切には、「認知症による失認」などですね。
また、記憶力低下などは、認知症だけでなく加齢による自然なものも原因としてあり得ますので、その辺の見極めもしっかりしておきましょう。

本人・家族の意向

それぞれの項目に対する本人と家族の意向を確認します。
これも情報収集シートの時点で入力していることなので、ペーストされます。

「転ばないようにしたい」等はっきりしているとありがたいですね。
意向を100%ケアプランに反映するわけではありませんが、課題分析する上でケアマネがあぶり出した対応策と、本人らの意向が合致するなら、それはケアプランに反映するべきです。

自立に向けた、改善(回復)の可能性、維持の必要性、低下・悪化の危険性、ケアの必要性

具体的状況・原因・意向を元に、対応策を記入します。
ここが肝です。

何を支援すれば状況が改善ないし悪化を防げるか、必ずやっといた方がいい支援はあるかなどを検討します。
まだここでは、デイサービスに行くだど、車いすを借りるだの具体的なサービスについては触れません。
それに触れるのはケアプランです。

例えば、「転ばないようにする」ために必要な対策をたてるとします。
転ばないようにしたい原因や意向が、「家で座っていることが多い」「足腰の衰えが心配」など将来を不安視したものであれば、そうならないために行うべきことはなんでしょう?
本人の運動の機会を増やすことですよね。(それだけとも限りませんが)
なので、記入例のひとつとしては、「運動の機会を増やすことで、下肢の筋力低下を防ぎ、転ぶことなく生活することができる」あたりが妥当です。

その運動の機会を、普段の生活で散歩などをしてもらうか、通所や訪問によるリハビリをサービスとして提供するかは、あなたと本人・家族との話し合いの中で決めていきます。
僕等ケアマネはあくまで選択肢を提示するスタンスでなければいけないので、「転びたくないならリハビリを受けてください」とか、ケアマネの意向一択にならないようにしてくださいね。

生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

ここからが、ケアプランにそのまま反映される部分になります。

先述の「運動量を増やす」の件を例にすると、「転ばないようにしたい」という本人の意向がそのままニーズとしてとれますので、それを記入します。

なんか風潮的に、「〇〇したい」という書き方をするケアマネが非常に多いですが、そんな決まりはありません。
「ニーズ」という言葉がそうさせているのかもしれませんね。

本人の改善意欲がはっきりしているなら、「転ばないようにしたい」という書き方をしていいです。
そうでなければ、課題分析によりあぶり出された「困っていること」や「改善のためにすべきこと」を記入するのが正解です。

「転ぶ危険性を軽減する環境作り(またはリハビリとか)が必要」
「足腰が弱くなって転びやすい状態」

など、他の人が見ても「あ、これで困ってんだな」「これを改善しなきゃいけないんだな」等わかるような内容を記入するようにしましょう。

ケアの方向性

解決すべき課題ができたら、最後にケアの方向性を記入します。

これは、抽出した課題と、それに対してみんなでこういう支援をしていきますよーという意思表示的なところになります。
これもケアプランにそのまま反映される部分です。

足腰が弱って転ぶ危険性があり、本人も「転ばないようにしたい」と考えていることに対して、転ぶ危険性を軽減する環境づくりを目指すとします。
あとはそのまま、

「足腰が弱ってきて転びやすくなっているので、転ばずに過ごせるよう支援します。」

って感じでまとめます。
ここだけ謎の「です・ます」調になる傾向があります(うちだけ?)が、別に反発することでもないので右にならっておきましょう。

ケアプランというのは、基本的に本人・家族が見て分かりやすいような言葉選びをしなければなりません
「転ぶ」⇒「転倒」くらいはいいと思いますが、「足腰が弱っている」⇒「下肢筋力が低下している」みたいな専門くさい言い方をしても、相手はピンとこないです。
やたらと横文字を使おうとする上司ってなんか嫌なのと一緒です。

後の仕事を少しだけ楽にするポイント!
ケアの方向性の中で、「リハビリをして」とか「福祉用具を使って」とか具体的な支援方法はまだ入れないようにしましょう。
これはケアプラン作成の記事で詳しくお話しますね。

まとめ

インテーク、情報収集から、実際の支援につなぐための中継地点が課題分析(検討)です。
利用者にどんな支援をすべきかを決定づけるヒントになる段階なので、できるだけじっくり考えたいところです。

でも現実問題として、せっぱつまるとケアプランを先に作ってしまいがちです。
急を要する場合を除いて初回はみな順序良くやるんですが、変更・更新の際なんかは特にそうかもしれません。

先にケアプランを作ってからアセスメントしてしまうと、どうしても矛盾的な構成になってしまい、ケアプラン点検などでツッコまれるかもしれないので、気を付けてくださいね。