何もわからない新人ケアマネに捧ぐケアマネの教科書【モニタリング】

新人ケアマネとして活躍するあなた。

覚えること、山ほどありませんか?

  • ケアマネ試験合格からの実務研修
  • ケアマネ事業所の上司・先輩の指導
  • ケアマネになってからの研修(専門研修・更新研修含む)

これだけでも情報量が多すぎてそうそう覚えられたものではありません。
しかし、ケアマネの大変なところは、十分な研修や指導を受ける前に独り立ちすることが多いということです。
さらに言えば、研修の内容だけでは対応しきれないことが、序盤からドバドバやってきます。
僕も新人の頃、それでさんざん悩まされました。

そんなあなたのお役に立てればと思い、僕の体験を交えつつ、ケアマネとしての基礎知識を徹底解説していきます。

この記事では、毎月行わなければならないモニタリングについてお話します。

 

モニタリングとは

介護で言うモニタリングとは、サービス提供状況、そのサービスが効果的か否か、本人に変わりがないかなどを観察することです。

居宅ケアマネは最低でも月1回、原則として必ず自宅へ伺い、本人や家族(家族だけはダメね)と面談しなければなりません。
入院中などで自宅に本人がいない場合は、病院へ伺うこともあります。
コロナやインフルエンザ等においては面会ができなかったりするので、病院スタッフや家族へ電話し、モニタリングとする場合もあります。
ちなみに、自宅に戻れない事情がある方でショートステイをロング(連続1か月以上)で利用している場合、原則そのショートステイ先に伺うのですが、面会制限ある場合はやはり、電話で済ませたりします。
その際は、面会ができない事情を必ず記録しておいてください。

施設ケアマネの場合は、その施設の規定に沿った頻度で行います。
施設なら面会できないってことはほぼありませんね。
ただし、介護職員・看護職員・相談員ら施設職員総動員で行ってきた1か月ごとの記録を総ざらいしてモニタリングを行います。
むしろこっちの方が大変かもしれませんので、記録にも工夫が必要です。

そのモニタリングの結果から、必要に応じて再アセスメントを行い、ケアプランの修正につなげていきます。

モニタリングの記録

利用者との関わりは全て記録しておく必要があります。
モニタリングはもちろん、電話のやりとり、事業所からの本人の情報、家族とのやりとり、なんとなく心配だったから自宅に行ってみた時の様子まで、全てです。

その記録用紙は居宅サービス計画第5表とされてます。
たいていの事業所では、ケース記録支援経過と呼んでいると思います。

第5表はケアプラン等同様、無料でダウンロード可能ではありますが、標準様式に沿った独自のものが各事業所にあると思いますので、それで結構です。

「全て記録する」とは言いましたが、極端な話、何もなければ月に1回のモニタリング記録だけでOKです。

正直、訪問してもあまり喋ってくれない利用者さんだと、聞き取れるものも聞き取れません。
まあ「そこはケアマネの腕の見せ所だよ」とか言うマウントパイセンなんかもいるでしょうが、それはスルーしましょう。
本人が多くを語らないなら、そのことを記録すればいいんです。
そこからくみ取れるものもあるでしょうし、家族や近所、利用してるサービス事業所から情報が得られることもありますので、そういうところを活用しましょう。

認知症などで話の辻褄が合わない、作話があるような方に対しても同様です。
むしろ、言い方は悪いですが本人の話をうのみにしていると、適切な情報収集ができないこともあります。
ま、認知症でなくても誇張して話す人はけっこういますけどね。

モニタリングのポイント

モニタリングを行う際は、本人ないし周囲からの情報収集するポイントを決めておいた方が記録の時に楽です。

モニタリングは、ケアプランに定めた短期目標ごとに、以下の項目を埋めていきます。

  • サービスの実施状況
  • 本人や家族の意見・満足度
  • 目標の達成度
  • 今後の対応

まあ、モニタリング記録様式は標準に沿ってそれぞれあるので、これはあくまで参考程度にしてくださいね。

とにかく、なにも項目に沿って堅苦しく質問していくことはありません。
「最近どうですか?」とか「デイサービスはどうですか?」など、それとなく自然な切り口で、体調や短期目標ごとに調整しているサービスを利用していてどんな変化があるかを探っていきます。

大事なのは、良い変化ばかりを拾わないことです。
サービス担当者会議などの面倒な手続きをこなしてやっとつないだ介護サービスですが、本人との相性や支援結果については、残念ながら「やってみないと分からない」です。

各事業所の特色を理解していれば、ある程度は本人にあった事業所の見当はつくものですが、100%合うと断言できることなんてほんのわずかです。

やってみて合わなかったら、あるいは目標の達成が難しいと判断されたら、別のサービス事業所への変更や、そもそものケアプラン内容の変更を検討しなければなりません。

本人・家族の意向と、事業所からの報告をすり合わせて、変更の必要性を判断します。
基本的には、やはり本人の意向を第一に優先しますけどね。

訪問によるモニタリング

先述の通り、ケアマネは最低でも月に1回、自宅を訪問して利用者らと面談しなければなりません。
本人との面談が必須で、必要に応じて家族や利用している事業所から情報をもらいます。

自宅訪問を必ずした上で、他にも実施できる訪問があります。
コロナ等感染症の流行期には制限があるでしょうが、デイサービスやショートステイ等で許可があれば、利用中の様子を伺いに訪問すると、家では見られない表情(良くも悪くも)が見られるかもしれないので、初回や、何もなくてもたまに伺っても良いかもしれませんよ。

あとは近所の方ですね。
認知症などを持っていて独居の方って結構多いんですが、近くに身内がいない場合、一番頼れるのはご近所さんです。
「最近変わった様子はないか」等、何回か聞きにくると信頼関係が築けて、どんどん協力的になってくれることがあります。

ただし、あくまで情報をもらう程度にしておいてください。
サービスでやってるわけではないので、頼り過ぎは不信感を抱かれます。

電話によるモニタリング

自宅訪問は毎月絶対にしなければなりません。
が、入院しており、感染症などで面会制限がある場合は、家族や入院中の病院に電話で様子を伺うこともあります。
あるいは、遠方の家族のところに一時的に住んでいる(戻ってくる予定がある)場合も電話で済ませます。

あとは、実際のところ月1回訪問すればOKなわけですから、同じ月に何度も話を聞かなければならないような時は、1回以外は電話で済ませて良いでしょう。
毎回訪問して時間をとらせる方が迷惑ですしね。

モニタリング以外での訪問の時にモニタリングする

繰り返しますが、最低でも月1回、必ず利用者の自宅へ訪問してモニタリングしなければなりません。
その他にも、必ず自宅で行わなければならないことがあります。

サービス担当者会議です。
この予定がその月に決まっているのであれば、その日に一緒にモニタリングしちゃいましょう。

「担当者会議とモニタリングを別日に行わなければならない」という決まりはないし、せっかく関係者が一堂に会する機会ですから、モニタリングのための聞き取りをその場で行うことができます。

ただし正確には、2回目以降の介護認定更新月の担当者会議です。
モニタリングはサービス利用開始の翌月から行うので、まだケアプランが完成していない初回の担当者会議では、モニタリングする内容がないからです。
また、認定更新とは、いわば「定期的なケアプラン修正の時期」という解釈ができますので、サービス利用していた期間が1年間なら、1年間のモニタリング記録からプラン修正の必要性を判断できます
なので、担当者会議当日までに焦ってモニタリングする必要もないんです。

認定更新以外でケアプランを修正・変更する場合とは、「利用者に何らかの変化があった」であることがほとんどなので、「モニタリングに行ったら変更が必要な状態になってた」パターンがあり得ます。
となると、必然的にモニタリングの翌日以降に担当者会議を開かざるを得ないわけです。
モニタリングの訪問予定日でなくても、家族や事業所等からそういう情報があったら随時訪問すると思うので、その時に結局モニタリングすることになります。
なので必ずしも、担当者会議とモニタリングを同じ日にできるとは限らないので、そういう時は「必要な業務だ」と割り切っていきましょう。

ということで、更新の時期で特段の変化がないのであれば、その担当者会議の時に一緒にモニタリングしてしまいましょう。
僕はよく、担当者会議開催の記録をして、その最後に「併せて〇月分のモニタリングを実施する」と書いてから、担当者会議を行った経緯を含めてケース記録を書いています。

あとは、上記のように何か変化があったという情報を得て訪問した時に、便乗してモニタリングということにして大丈夫ですよ。

苦情処理

モニタリングなどの際に、利用者や家族から苦情を受けることがあります。

ケアマネに対する苦情もそうですが、利用しているサービス事業所に対する苦情が聞かれることも少なくありません。
そういう時の対処もケアマネの仕事のうちです。
それぞれの対処方法も確認しておきましょう。

相性が悪い、不備があった等々、理由はいろいろあるでしょうが、あなた自身が利用者・家族から苦情を受けるかもしれません。
平謝りして許されることもあるでしょうが、利用者らからケアマネの交代を宣告されることがあります。
その場合は、あなたの事業所の別のケアマネ(A)か、別の事業所のケアマネ(B)を紹介できることを伝え、選択してもらいます。
A → そのまま利用者の情報を引き継ぎます。
B → その事業所のケアマネを利用者らに紹介しますが、契約先が変更になるので、そちらで契約しなおしてもらいましょう。ちなみに、あなたが逆に紹介を受ける場合もありますので、それが別の事業所からであれば、あなたの事業所との契約をしましょう。
利用者にとってケアマネは1人ですが、ヘルパーやデイサービスなどのサービス事業所では、日によって関わる職員が違います。
その事業所へ苦情があった場合は、その原因を確認し、可能であれば平定します。
歯止めがきかず、事業所の変更を申し出られた場合は、ヘルパーなら別のヘルパー事業所を紹介します。
ケアプランに盛り込んだサービス内容自体は(変更の必要がなければ)そのままに、事業所だけ変更します。
苦情の対象になった事業所にその旨を伝えるのは少々気が引けますが、ほんとにただの相性の問題だったりする場合もありますし、厳しく当たったりしないでくださいね。

終結

当然ながら、利用者への支援にはいつか終わりがきます。
それが終結です。
支援が終結するのは、次の場合です。

  • 更新や区分変更の結果、介護認定が「非該当・自立」になる
  • 利用者が終結を希望する(支援が不要になる)
  • 病院への長期入院(病状的に自宅復帰が望めない)
  • 施設への長期入所
  • 市外(事業所の圏域外)への転居
  • 利用者の死亡
  • ケアマネの変更(苦情や異動など)

終結することが決まったら、最後に利用者らへ挨拶しましょう。
それをもって、最終モニタリングとします。

亡くなって終結した場合は、火葬や葬儀などに参列できればして、それから数日~1週間後くらいに、事前に連絡をした上で訪問するといいですね。
葬儀の前後は忙しいので。

ケアマネの変更による終結とは、厳密には「あなたによる支援が終了するので次ね」ってことです。
次のケアマネに必要な情報を引き継ぎますが、あなたが保管していた利用者の関係書類をそのまま渡すのはやめといた方が良いです。
2年間の記録保管義務があるので。
引き継ぐ書類はフェースシート、サービス利用の経緯がわかるケース記録が必要最低限です。
情報提供には本人・利用者の同意が必要ですのでご注意を。

モニタリングに関する解釈の違い

3年に1度、介護保険改正がある都度、解釈通知というものがあるのをご存知でしょうか?
改正内容を国が公表して年度初めから施行されるわけですが、どんなにわかりやすい文章でも、見る人によって解釈は変わってきます。
ましてや制度や法律なんて難しいのばっかでまったく読む気がしな

その解釈を統一するために、各市町村ないし都道府県から国へ、改正内容に関する質問を提出します。
その返答となるのが解釈通知です。
それをさらにかみ砕いたのがQ&Aになります。

既存の規定に対しても解釈が違うということは当然のごとくあります。
中でもモニタリングにおいて、ある利用者の「月1回の訪問」に関して、僕の事業所で市職員からこんな指摘を受けました。

この利用者宅へのモニタリング日が月上旬に偏っています。
モニタリングはあくまで「その月のモニタリング」なので、モニタリングのための訪問はなるべく月中旬から下旬に行うようにしてください。

これは、解釈によって賛否両論あるかもしれませんね。

国がどういう解釈で「月1回の訪問」を義務付けているかはわかりませんが、とりあえず僕の解釈で話させていただきます。

もしあなたも、居宅ケアマネをしていて同じような指摘を受けたら、こう聞き返してやりましょう。

「その月のモニタリング」でなければいけない根拠を教えてください。
「その月」でなければいけないなら、中旬の訪問も微妙ですよね。
1月20日に訪問して1月分のモニタリングを終了 ⇒ 2月20日に2月分のモニタリングを終了
という場合、1月21~31日の間は気にしなくていいんですか?
って思います。
屁理屈ですけど。
どうしても「その月」だというなら、2月最初の週に1月分のモニタリング訪問した方がよっぽど理にかなってますよね。
なので僕の解釈としては、「月1回」=「1ヶ月毎」のモニタリングが適切だということです。
そもそも30~40件のモニタリングを中旬以降の半月に全部つぎ込んだら、サービス担当者会議や緊急時の対応なんてできたもんじゃないですよ。
要支援者も入れたら余計にです。
偉い人には、それがわからんのです。
・・・とまあ、僕の解釈はさておき、各市町村ないし都道府県の指導は理不尽に感じる点も多々あると思います。
逆らって得をすることもないかもしれませんが、現場の事情もわかってもらうべきだと思うので、言えることは言ってみましょう。
1回言ってあちらが意固地に返してきたら、2回目以降は面倒なだけなので、諦めてハイハイ言った方が無難ですけどね。

まとめ

モニタリングの目的は、

  • アセスメントやケアプラン内容が適切だったか
  • 本人・家族が満足しているか
  • 今後どうしていくか

を確認するための情報収集です。
居宅でも施設でも目的・手法はさして変わりません。

僕は、いかに楽に訪問をこなし、いかに簡潔に記録を済ませるかしか考えてない怠け者なので、研修やテキストなどとは少し違う解釈があるかもしれません。

しかし、ケアマネ業務は最低限を確実にこなしていれば、市職員などから文句も言われないし、その最低限も市町村ごとに多少違うので、それぞれのやり方に沿いつつ、ガンガン間隙を縫て楽に業務をこなしてください。