新人ケアマネとして活躍するあなた。
覚えること、山ほどありませんか?
- ケアマネ試験合格からの実務研修
- ケアマネ事業所の上司・先輩の指導
- ケアマネになってからの研修(専門研修・更新研修含む)
これだけでも情報量が多すぎてそうそう覚えられたものではありません。
しかし、ケアマネの大変なところは、十分な研修や指導を受ける前に独り立ちすることが多いということです。
さらに言えば、研修の内容だけでは対応しきれないことが、序盤からドバドバやってきます。
僕も新人の頃、それでさんざん悩まされました。
そんなあなたのお役に立てればと思い、僕の体験を交えつつ、ケアマネとしての基礎知識を徹底解説していきます。
この記事では、居宅介護支援の契約についてお話します。
居宅介護支援の契約の流れ
お金払わないのに?
口約束だけでケアマネがついてしまうと、
他のケアマネをダブルブッキングしてしまったり、
不正を疑われることもあります。
居宅介護支援事業所(=ケアマネ事業所)によるケアマネジメントを受けてもらうために、事業所と利用者とで契約を取り交わさなければなりません。
それによって、その内容を義務として果たすこととなり、違反すれば罰則が課せられます。
重要事項説明書
ケアマネも含めて、介護サービス事業所には契約に当たっての重要事項説明書があります。
その内容は各市町村の条例によって規定されてて、それに従って各事業所で作成されています。
なので、同じ市町村でも事業所によって多少文言が違ってたりします。
とはいえ、最低限利用者に提示しなければいけない内容は共通していると思います。
- 居宅介護支援(=ケアマネジメント)とは
- 居宅介護支援事業所の概要(名称・住所地・営業時間・人員配置等)
- 居宅介護支援の流れ
- 利用料金(保険料滞納等がなければ料金をいただくことはないが、提示の必要あり)
- 守秘義務(個人情報の保護)
- 苦情受付
これらの説明を受けて同意を得られたら、署名と捺印を頂きます。
署名欄は本人のものと、本人が自分で書けず家族等が代理で書く場合は、代理人のものがあります。
事業所によっては、名字が同じ家族でも別の印鑑を押してもらう必要があるので注意です。
居宅介護支援の流れにおいては定められたプロセスがあって、それに沿った支援を行うことが原則となっています。
その流れには結構時間がかかるもので、通常インテークから実際に介護サービスが開始されるまで1週間以上かかる場合があるんです。
でも、利用者本人の状態によっては、今すぐにでも何かのサービスを受けなければならない場合があります。
その場合は、本来は文書による取り交わしが必要であることを説明しつつ、緊急を要するため口頭による説明が認められています。
その際の注意点としては、文書による取り交わしが不要になるという意味ではなく、口頭による説明が行われた日に遡って後日説明書を提示する必要があるということです。
なおかつ、その旨は必ず記録として残さなければなりません。
本人の状態に加え、
「緊急を要する状況の為、口頭にて契約を取り交わし、アセスメントを実施する。文書による契約は後日、日を遡って取り交わすことに本人・家族より同意いただく。」
って感じで記載しておけばいいでしょう。
契約書
重要事項説明書とは別途に、居宅介護支援契約書というものがあります。
内容は、意味的には重要事項説明書と同じではあるのですが、文章がより難しくなっています。
スマホアプリなどでよく見る利用規約をイメージしてもらえればわかりやすいかな。
ただし、重要事項説明書の内容を難しくしたのが契約書…ではなくて、小難しい契約書の内容を、利用者や家族にも分かりやすく説明したものが重要事項説明書であると考えてください。
先に重要事項説明書の内容を説明することで、「契約書の内容に理解頂きましたよ」と承諾を得たことになります。
承諾を得た印に、両書面に署名と捺印をいただくということです。
令和3年度より、市町村への提出書類等に印鑑が不要になりましたが、それが反映されるかは事業所の考え方次第ですね。
あと、これも事業所によりますが、契約書等に割り印ももらう場合がありますのでご注意を。
契約の締結
原則として、両書面への承諾をもって、居宅介護支援が開始されることとなります。
先述の通り、緊急を要する場合は口頭で取り交わしを行い、後から日を遡って署名を頂くことが認められます。
これまた原則として、本人から署名をもらわなければなりません。
これは、介護の本質が「自立支援」であるため、自己決定による契約を勧めているからです。
とはいえ、麻痺がある、判断力が低下しているなどの理由で、自身では契約が困難な方はたくさんいます。
そんな方のために代理人の署名欄があり、近しい家族、親族、成年後見人などに署名してもらうことになります。
中には身寄りがおらず、成年後見人もついていない方もいるので、場合によっては権利擁護センターや成年後見支援センターなどに相談することも必要になります。
そして最後の注意点ですが、署名してもらった書類をもらって終了ではありません。
同じ書類の控えを利用者に交付する義務があります。
これはどの事業も一緒ですね。
こちらで預かる書類と利用者控えの両方に署名ともらわなければなりません。
控えに署名しなくてもいいんじゃないの?ってケアマネがたまにいますが、やったやらないでトラブルがないとも限りませんので、そこはしっかり署名もらっておきましょう。
要支援者の場合
要介護1~5の方が介護サービスを利用する場合、ケアマネの事業所との直接契約になります。
しかし、要支援1・2の方が介護サービスを利用する場合は、契約先がケアマネ事業所ではなく、地域包括支援センターになります。
要支援者は皆、包括の管轄になるわけです。
民間企業であるケアマネは、包括から委託を受けることで、要介護者同様に支援を提供することになります。
契約の後に必要な届け出
重要事項説明書と契約書の取り交わしで終了というわけにはいきません。
ケアマネは、その利用者と契約を取り交わし、介護サービスを提供していく旨を市町村に届け出る必要があります。
必須のものから、あった方が良いというものまでお話します。
居宅サービス計画作成依頼届出書(必須)
「私(ケアマネ)がケアマネジメントしますよ」ということを市町村に届け出る書類です。
介護認定を受けて利用者の下に送られる介護保険証に同封されています。
もちろん各事業所で持ってると思いますが。
これによって、利用者の介護保険証にあなたの事業所の名前と、届け出した年月日が記載されます。
これがないと、まあ極端な話、どの事業所も収入が得られないので、ただ働きにならないよう必ず届け出をしましょう。
この書類で本人または家族に書いてもらうのは「年月日・被保険者名・住所・電話番号」の欄の1か所だけで、そこ以外はケアマネが後で代筆して大丈夫です。
被保険者の名前だけ書けばよいので、家族等の代筆でも代筆者の名前を書く必要はなかったのですが、令和3年度7月ころから、認定調査や主治医意見書の内容について、ケアマネに情報提供して良いかという同意の署名も必要になりました(市町村によって違う?)。
明確ではありませんが、そこには本人の自署でなければ、代筆者の名前を書いてもらった方が良いかと思います。
また、この届出書には「新規・変更」という区分をどちらか選ぶ欄があります。
- 新規
⇒あなたがその利用者にとって初めてのケアマネである場合 - 変更
⇒すでに別の事業所のケアマネがついていたが、あなたの事業所に変更となった場合
なくても特に手続きなく再発行してもらえる市町村が多いと思いますが、あとでごっちゃになると良くないので、念のため。
それと併せて、介護保険負担割合証(1~3割負担と記載があるもの)がないと、各サービス事業所が料金を請求できないので、この時一緒に預かり、コピーをとっておきましょう。
要介護認定(要支援認定)等資料開示請求書(任意)
「情報開示請求書」とか「情報提供請求書」とか、各市町村で微妙に名前が違ったりしますが、要介護認定を受ける際の認定調査や主治医意見書の内容の写しを情報開示として市町村からもらうための請求書です。
情報開示は必ず請求しなきゃいけないものではありませんが、別の記事でお話しするアセスメントの作成にも大いに役立ちますので、必ずもらうようにしましょう。
ただし、先述の居宅サービス計画作成依頼届出書と一緒または提出後でないと、情報開示に関する本人・家族の同意が得られていないことになるので情報開示を受けられません。
この順番は忘れないようにしましょう。
ちなみに、要支援者の場合は請求後、包括経由で情報開示を受け取ることになります。
まとめ
インテークを終えて、介護サービス提供のためにまず、あなたの事業所と契約を取り交わさなければなりません。
利用者本人または家族等の署名が必要な書類は以下の通りです。
- 重要事項説明書
- 契約書
- 居宅サービス計画作成依頼届出書
- 要介護認定(要支援認定)等資料開示請求書
①~③は必須で、④は任意ですが、もらって損はないので全部もらっておきましょう。
あとは各市町村、各事業所で書式ややり方が違うと思うので、それに沿って行うようにしてくださいね。