何もわからない新人ケアマネに捧ぐケアマネの教科書【インテーク・面接】

新人ケアマネとして活躍するあなた。

覚えること、山ほどありませんか?

  • ケアマネ試験合格からの実務研修
  • ケアマネ事業所の上司・先輩の指導
  • ケアマネになってからの研修(専門研修・更新研修含む)

これだけでも情報量が多すぎてそうそう覚えられたものではありません。
しかし、ケアマネの大変なところは、十分な研修や指導を受ける前に独り立ちすることが多いということです。
さらに言えば、研修の内容だけでは対応しきれないことが、序盤からドバドバやってきます。
僕も新人の頃、それでさんざん悩まされました。

そんなあなたのお役に立てればと思い、僕の体験を交えつつ、ケアマネとしての基礎知識を徹底解説していきます。

この記事ではインテークについてお話ししますね。
今回は居宅ケアマネ目線の内容ですが、インテークの流れ自体は施設ケアマネもやることはほぼ同じです。

 

インテークとは

インテークとは、ケアマネジャーが利用者さんと初めて面接することを言います。
広くは心理学や精神医学分野などでも使われます。

相談を受け付けるところから始まるわけですが、きっかけは

  1. 利用者さんやその家族から直接の依頼(利用者の知人等からの場合もあり)
  2. 地域包括支援センターから紹介
  3. 病院から退院する際の支援依頼
  4. 他ケアマネ事業所からのケアマネ変更の依頼

等が主であるかと思います。
それから利用者さん本人とじっくりお話するわけですが、そこで得られる情報が、適切なケアプラン作成、必要なサービスの選出等の判断材料になります。

ただし、インテークにおいてはただケアプランなどの書面を埋めることだけが目的ではありません。

インテークの目的

介護におけるインテークの目的は、適切なケアプラン作成のための情報収集が第一ではありますが、加えて重要とされているのが、利用者との信頼関係の構築です。

初対面で信頼もなにもないんじゃないの?
コンペイ
確かに、いきなり「私を信用してください」なんて無理な話ですね。
でも、一口に「信頼関係の構築」と言っても、最初の1回で絶対的な信頼を得ようというものではないんですよ。
インテークにおいては、利用者さんは自分の家のプライベートの多くをさらけ出す必要があります。
多くの方は「ケアマネだから・介護の専門家だから」と理解してくれますが、実のところインテークで聞くプライベート情報はほんの一部です。
ここからどんどんプライベート情報の深いところを探られるわけですから、初回から信頼関係の構築を図ることには大きな意味があります。
だからと言って、なにも初対面で絶対的な信頼を得なければいけないわけではありません。
というか、そんなの無理ですよね。
ここでいう信頼関係とは、「悪い人ではなさそうだ」くらいで十分だと思います。
つまりは、適度な安心感と話しやすい雰囲気を作るということです。
相談者の声のトーン、話し方、相談内容から、こちらの受け答え方などを工夫することで、それが可能になります。
そこから、その後の良好な関係を継続することにつながるわけです。

インテークの流れ

相談を受け付ける際、始まりは電話か、事業所に直接来られる場合がほとんどだと思います。
僕は電話が9割以上ってとこです。
そこでまずは、最低限必要な情報を収集します。
以下の内容を、メモをとりながら聞き取りしましょう。
テンプレートにすると楽かと思いますので、コピーして使って頂いてかまいません。
  1. 利用者本人の名前
  2. 本人の年齢(または生年月日)
  3. (相談者が本人以外の場合)相談者の名前・本人との関係
  4. 本人の住所・連絡先(相談者が本人以外の場合は相談者の連絡先も一緒に確認)
  5. 介護保険認定の有無(認定済の場合は介護度を確認)
  6. 本人の状況・困っていること(介護面・医療面)
  7. 要望(どんな支援を受けたいか等あれば)
  8. 本人宅への訪問日程
受付の時点で内容がかなり多いのですが、よく話が長かったり逸れたりする相談者もいるので、聞き取りする内容をこうして整理しておけば、軌道修正しやすいですよ。
特に「⑥本人の状況・困っていること」「⑦要望」は、相談者が本人以外の場合、相談者目線の話になりがちなので、この時点では「歩行が不安定になって転ぶのが心配」とか、「転ばないようにリハビリさせたい(または手すりが欲しい)」等、簡潔かつ目的がはっきりした内容にまとめられれば支援の方向性が見えてくるので、とりあえずこれで御の字です。
※脱線したら話を遮ろうということではありません。
ただし、本当に必要な支援については、本人に会って話を聞き、自宅の状況を見てみないとわからない場合があります。
というかほぼわからないので、この後に自宅への訪問日を決めましょう。
本人と相談者が揃っている状況が望ましいですが、都合がつかない等事情がある場合は、最低でも本人がいる状況で自宅へ伺います。
インテークのおおまかな流れはこんな感じです。
電話で対応する場合、顔が見えない分声のトーンや口調の速さなどで相手の印象が変わりますので、なるべく誠実で明るい雰囲気を心掛けましょう。
もちろん、「在宅」とか「モニタリング」とか、一般には馴染みのない用語は一切使わないようにしないと、相手に全く伝わらない可能性がありますのでご注意を。
利用者の介護度が【要支援1~2】だった場合
要支援1~2か要介護1~5かで、介護保険サービスを利用する際の契約先が違います。
要介護者であれば、あなたの所属する事業所と「居宅介護支援」として直接の契約となりますが、要支援者であった場合、地域包括支援センターとの契約となり、あなたは包括から「予防介護支援」の委託を受けるということになるんです。
本人・家族から直接相談を受けた場合でも、包括から依頼を受けた場合でも、要支援であれば包括職員と一緒に訪問するよう、日程を調整しましょう。

インテークの注意点

相談に来る方はそれぞれ、性格・生活・状況などが千差万別で、どのタイミングで来るか、どういう事情があるか、どの程度のサービスを利用したいのかなど、一定の基準がありません。
当然、介護保険やサービスの知識をほとんど持たない方も大勢いるので、要望をうまく伝えられない、または「とりあえずデイサービスを使いたい」など、必要性が見出せないということもよくあります。
ケアマネジャーに求められるのは、言葉上の要望だけでなく、話の中で「言葉にならない要望」があるかもしれないという姿勢と洞察力です。
大事なのは「とりあえずデイサービス」を、「デイサービスに行くと〇〇が改善できる可能性」に変換すること。
これはアセスメントの段階でできることなので、インテークの時点でそこまで意識する必要はありませんが、できていれば初回訪問時に話がスムーズに進むかもしれませんよ。
そういった状況を把握するために注意しておくことについてお話しします。

緊急性の有無

インテークで利用者本人の状況を伺うと、すでに緊急事態に陥っている場合があります。
  • 転んで動けない
  • 興奮して暴れている
  • 虐待を受けているなど
場合によっては介護サービスうんぬんではなく、即病院や警察につなげる必要があるかもしれません。
まずは命に関わる状況であるかを確認し、適切な対応がとれるようにしましょう。
「体調不良」と言われただけで終わると、実は危ない状況だったってこともあるので、詳細を確認してください。

共感と受容と感情移入

ケアマネの勉強や実務研修などの中で、「共感」と「受容」という言葉はよく出てくると思います。
相談者は困っているから相談しているわけで、不安を感じているかもしれません。
そんな相手に「考えすぎじゃないですか?」とか言って突っぱねるのは、相談援助の理念からかけ離れています。
ケアマネには、相手の不安に寄り添う「共感」と「受容」の姿勢が求められるわけです。
ただ、共感も度が過ぎると感情移入に移行します。
コンペイ
「ご家族さん、大変だろうから本人にはショートステイに行ってもらいましょう」
というのがダメなのは、何となくわかります?
本人の意向が全く入っていないからです。
共感と受容については、テキストや研修などでは「程よい距離感を持ち、客観的に判断する」ということを教わるかと思います。
これは、本人だけの要望、または家族だけの要望に偏るのではなく、かつケアマネの押し付けにならないようにうまいことやれよ!ということです。
さらっと言われますが、これがめちゃくちゃ難しいです。
例えば、家族がデイサービスに行かせたくて、本人がしぶしぶ了承したというケースに対して、「いや、本人嫌みたいですよ」なんて正直言えないんですよね。
基本的には本人本位で進めなければいけないのですが、家族の希望も無碍にできない。
こういう時は、「お試しで行ってみて、やっぱり嫌だったらやめてもいいですよ」くらいで納得してもらうのが無難な方法です。
それでも納得されない方はいますがね。
これはアセスメントの際にも通じることです。
別の記事でも触れていきますね。

言葉にならない要望を探る

先述しましたが、言葉で訴える要望だけが全てとは限りません。
話を聞いていく上で、本人や家族も気づいていないような要望が出てくることがあります。
例えば、家族が一生懸命介護してて、周りから見ればオーバーワークであっても、当人は「これくらいはやらなきゃ」と意固地になっていることがあります。
そんな方に、頑張り過ぎないこと、何かのサービスで代替えができることを伝えることもケアマネの役割です。
介護者に倒れられるのが一番大変ですからね。
これもまた、アセスメントで留意するべきことです。

アセスメントとインテークの違い

ここまでお話しした通り、インテークについて説明する中で、アセスメントとかぶる部分が結構多いです。
どちらも面接というステップを踏みますからね。
ただ、これらは目的が違います。
  • インテーク
    初回の面接で基本的な情報(上記参照)を始めとした情報収集及び信頼関係の構築
  • アセスメント
    利用者本人の身体状況や認知・精神面、環境の変化などに応じて随時面接し、ケアプラン作成に直結する課題(ニーズ)の分析
インテークはあくまで初回の受付で、アセスメントは必要に応じてその都度行うものくらいに思ってて良いかと思います。

まとめ

インテークは、利用者さんやその家族との初顔合わせです。
介護保険は小難しいので、ほとんど何もわからないまま相談に来る方が大半だと思います。
そんな不安を和らげ、「この人は話を聞いてくれそうだ」と思ってもらえれば、その後の進行がかなりスムーズになること請け合いです。
相手の声・口調、表情・姿勢などを気にしながら、そのペースに合わせた相槌や返答をしてあげるよう心掛け、安心させてあげてください。
それがそのまま、あなたのためになります。