ケアマネの仕事に就いている人なら言うまでもありませんが、ケアマネージャーの仕事は、ケアプランを作ったり、サービス担当者会議を開催することだけではありません。
数ある業務内容の内の1つに、要介護認定の申請代行があります。
新規・更新・区分変更と、状況に合わせて申請の手伝いをするんですね。
その中でも、特に更新認定にはどうやら落とし穴があるようです。
要介護認定申請の種類
新規申請
以下のいずれかの場合に、要介護認定申請を行う場合を新規申請と言います。
※第1号被保険者の場合
- 今まで要介護認定の申請をしたことがない(初めて申請する)
- 申請をしたことがあるが、結果が非該当/自立だった
- すでに要支援1か2の認定を受けているが、状態が悪化したため認定を見直すことにした
要支援者の取り扱いについては保険者によって違いがあるかもしれません。
更新申請
要支援1~2、要介護1~5の認定を受けている場合、認定の有効期間(6ヶ月~4年間)があります。
その有効期間が満了するに当たり、保険者から更新申請書が配布されるんですが、それを使って申請するのが更新申請です。
更新申請は期間満了の2ヶ月前から申請できます。
例えば、11月30日で満了だとすれば、10月1日から更新の申請ができるということです。
区分変更申請
すでに要介護1~5の認定を受けていても、突如本人の状態に変化があった場合、有効期間の満了を待たずに申請ができます。
それが区分変更申請です。
状態の変化とは、ケガや病気の発生、悪化などにより、介助が必要になった(必要な介助量が増えた)場合です。
ただし、例えば手すりを1個増やす程度で解決できる問題であれば、無理に変更をかける必要はないですけどね。
これについては後述します。
更新申請の落とし穴
新規申請はもとより、区分変更を行う場合はたいてい「今より重い介護度になるだろう」という予測があって行うものです。
なので、結果要介護度が変わらない(却下になる)場合もありますが、少なくとも軽くなることはまずないと思います。
しかし、たまに予測を裏切ってくるのが更新申請です。
予測自体はできる
もちろん、区分変更同様、更新の時期の状態を見てある程度の予測はつきます。
その予測に合わせて必要な調整を図らなければならないので、ケアマネの観察力や情報収集力を発揮する時ですね。
この必要な調整については、また別の記事でお話ししますね。
ケアマネは、特に介護士経験からの取得であれば尚更、認定の予測は割と適切にできると思います。
しかし、たまーにその予測を裏切ってくるのが更新申請なんです。
認定は調査員が9割
新規・更新・区分変更のいずれを行っても、必ず市役所等から認定調査員が派遣され、自宅(病院や施設の場合も)へ伺い、聞き取りなどの調査を行います。
その聞き取り結果をコンピューター判定にかけることを一次審査と言うんですが、実質これが9割と言っても過言ではありません!
(ちょっと過言かもしれません)
二次審査では認定審査会が行われるわけですが、認定調査報告や主治医意見書に特筆すべき点がない限り、ほぼほぼ一次審査通りの結果が出ます。
つまり、認定調査員が聞き取りの内容をどう受け取るかによって、認定結果が左右されているという現実があるんですね。
もちろん、調査員は聞き取った内容から、どんな困りごとがあるかを正確にくみ取らなければならないわけですが、中には残念ながら汲み取りがうまくない方もいるわけですよ。
認定調査員の当たりが悪かったことで、ケアマネや全関係事業所が震撼する結果が出てくることが、実際あります。
「この人が要支援!?」みたいな。
そんな事態が、更新申請では起こりやすいんです。
サービス利用により状態が安定している方は介護度が軽くなる
本来介護サービスは、サービスを利用することで日常生活の問題を解消することが目的です。
例えば転倒の多い要介護3の人が、安全に歩けるように手すりを設置したとしましょう。
手すりのおかげで、危なっかしくも転倒なく歩けるようになりました。
さあ、この状態で認定更新を迎えます。
更新の結果・・・要介護1になりました!!
やったね!
軽くなることは良いこと?
大分端折った上に脚色しておりますが、これは僕の担当さんで実際にあったケースです。
「介護度が下がった」ということは「状態が良くなった」ということなので、通常なら喜ばしい結果です。
ですが、家族はこう漏らしていました。
「なんだか見捨てられたような感じがする」
同居する家族の介護力はそれぞれです。
「これぐらいできるでしょ?」は通用しません。
ケアマネとしても、介護方法の簡単なアドバイスはできますが、それを忠実に再現しろというのは難しい話です。
このケースの場合、普段から家族の精神的負担も大きかったということです。
歩行は安定しても、例えばトイレには介助が必要で、毎晩何回もトイレに行かれたら・・・いくらなんでもしんどいですよね。
状態が良くなることは当然良いことなんですが、環境などのちょっとした違いで、捉え方が全く違ってくるんです。
利用者家族とケアマネの認識の違い
介護に悩む家族の認識
日常の介護疲れが溜まっている家族にとっては、「要介護度」は「自分の苦労の指標」と同義です。
ある意味でそれは正しい認識ですね。
要介護度が重いという事は、介護量が多いという事ですから。
なので、介護サービス利用によって実質負担が軽減されていたとしても、要介護度が軽くなるということは「自分は苦労してないと思われてる」という解釈につながりがちです。
なので、予想に反して要介護度が軽くなると、不服申し立てをしたがるケースが多いんですね。
中立的な立場のケアマネの認識
区分支給限度基準額
ケアマネが介護サービスを導入していく上で特に気を付けているのが、区分支給限度基準額です。
必要であったとしても、介護サービス費がこの基準額を超えてしまうと、利用者さんの負担額が跳ね上がってしまいます。
中には「私は一向にかまわんっっ!」というお金持ちの猛者もいらっしゃいますが、基本的にケアマネとしては、基準額内に収めようと努めています。
でも多くの利用者が、ある程度基準額に余裕を持ってサービスを利用しています。
更新認定による要介護度が軽くなると、この基準額の上限も低くなりますが、余裕があるなら、要介護度が軽くなろうがなんら問題ありません。
なので、家族がどう認識していても、その辺のところを丁寧に説明することで、不服申し立てすることなくサービスを継続できます。
福祉用具貸与の介護度縛り
福祉用具貸与の中には、一定以上の要介護度でないと介護保険が適用にならないものがあります。
介護ベッド(付属品含む)、車いす(付属品含む)などがそうです。
要介護2だった人が、更新により要介護1になった場合、介護ベッド等は1~3割負担ではなくなり、全額が利用者負担になります。
1割負担で月1000円だったのが、1万円になるんです。
自費レンタルである程度安く済んだり(2~3千円くらい)、特例で介護保険を適用させる方法もありますけどね。
なので、要介護度が下がるとやっきになって不服申し立てを希望する家族が多いです。
気が強い方は、ケアマネ通り越して保険者に乗り込んでいくこともあります。
悩ましきケアマネの立場
ケアマネは提供するサービスを検討するにあたって、利用者・家族の御用聞きになってはならないという原則があります。
利用者さんたちから「デイサービスを利用したい」と希望されても、アセスメントの結果「デイの利用は必須ではない」という結論が出た場合、ケアプランにデイの利用について記載するのは不適切なんです。
まあ、あくまで不適切なだけで、厳罰があるわけでもないんですけどね。
(ここだけの話、アセスメントの結果「必要だ」という結果になればいいわけなので・・・・・これ以上は言えないっ)
要介護認定についてもそうです。
更新の結果要介護度が軽くなったとしても、限度額などに問題がなければ、わざわざ不服申し立てする必要がありません。
むしろ手間です。
でも、家族が申し立てすると言ってきかない場合は、従わざるを得ません。
限度額などの説明で納得してもらえればいいんですけどね。
本当に必要になれば、その時に区分変更申請すればいいんだから。
まとめ
ケアマネは御用聞きでも便利屋でもありませんが、そう認識されていない微妙な立場の仕事です。
なんでか、何かあるとケアマネが謝る側に回りがちなんですよねえ。
更新認定の結果が不服だとの訴え時も、なんだか僕が怒られてるようだなあと感じたり・・・
しかし、要介護度が下がることは利用者・家族側のメリットになることだってあります。
デイなどの利用料金がちょっと安くなったりね。
実のところ、要介護度が高い方がケアマネだって収入がいいんです。
ということは逆に、要介護度が下がった時に不服申し立てするのを止めようとしてきたら、それは良いケアマネかもしれませんよ。