【ケアマネ必見】福祉用具選定のツボ!アセスメントから介護保険の利用まで徹底解説

ケアマネをしていると、数ある介護サービスの中でも特に、福祉用具の利用率がダントツに高いことがわかります。
利用者の自立支援をしていく上で、福祉用具の活用は欠かせません。
(利用者さん全員がそうだというわけではありませんが)

僕の経験上(偏見かもしれませんが)、自立支援のためのリハビリサービスなどを利用している方の中には、リハビリが終わるとまた状態が低下していくことも、少なからずあるんです。

対して、福祉用具は利用者さんの状態とマッチすれば、それだけでほぼ自立につながる可能性があります。
もちろん、リハビリと併せてマッチングし、使い方をマスターする方法もいいでしょう。

この記事では、無駄のない福祉用具の選定=マッチングスキルについてお話しします。

その福祉用具を選ぶ理由は?

一口に福祉用具と言っても、目的によって多岐にわたります。

それこそ、車いすひとつ見ても、自操用か他操用か、大きさ・重さはスタンダードタイプかスリムタイプか、リクライニングタイプかどうかなど、個別の状態に合わせて対応できるよう様々なタイプを取り揃えております。

とは言え、介護保険を使う以上は選り取り見取りというわけにはいきません。
介護保険内で福祉用具貸与を受ける場合は、「これがないと生活できない」とか、「それ以外に代替品がない」場合に限ります。

逆を言えば、全額の10割負担でも構わないというのであれば、何を使っても良いという考え方もあります。
ただし、それを良しとするのはケアマネとしてはアウトです。
心疾患などもなくスタスタ歩ける人が、通院などで歩くのが疲れるという理由で車いすを借りるのは、いい大人としてどうなの?って話です。
病院の車いすを使うのは勝手ですけど、そのせいで本当に必要な人一人分が足りなくなったら、それこそどうなの?って話ですよね。

ケアマネは御用聞きではないので、利用者さんや家族の希望をほいほい聞いていてはダメよ!
というのがケアマネジャーの心構えのひとつです。
つまり、「便利そうだから」など、「必須とは言えない」理由でケアプランに載せることはできませんよってことです。

では、貸与につなぐ頻度が多い車いす介護ベッドについて解説します。

介護保険で車いすをレンタルできる理由は?

車いすをレンタルできる=必須である理由とは何か?

結論からさらっと言うと、アセスメントの結果として、「車いすがあれば〇〇への移動が可能になる」といった感じです。

なおかつ、車いすが必要である場合のパターンは次の通りです。

  1. 立位保持ができない
  2. つかまり立ちならできる
  3. 5m以上の連続歩行ができない

これに沿って解説しますね。

 

①歩行ができない場合

例えば歩行ができなくて外出ができない場合。
一番の問題は、自宅から外出先への移動手段です。

外出先の施設等に車いすが常備されていれば必要ないように思えますが、そこまでの移動手段が徒歩であったり、自宅の玄関から車までの歩行が困難な場合は、短距離であっても車いすが必要と言えます。

デイサービス等に行く場合は、玄関からで送迎車への移動であればデイ職員が歩行介助したり、デイの車いすを送迎時のみ借りることも可能です。
ですが、通院や閉じこもりを改善するための手段としては、車いすがあれば家族も身体的な負担少なく外出できます。

月1回の通院程度の場合は、その為に1ヶ月車いすを借りるのもどうかと思います。
そこは料金等含めて本人・家族と話し合いが必要でしょう。
家族の介助で難しければ、介護タクシーなどのインフォーマルサービスを利用するのも良いですね。

②つかまり立ちならできる

手すりなどにつかまって立位保持ができる状態でも、歩行につながらなければ、①と同様の状況下では車いすが必要になります。

もしリハビリの実施により、数mでも歩行できる可能性があるなら、リハビリと車いすの併用(歩行補助杖や歩行器もいいですね)を検討するのが妥当です。
主治医に助言を求めてみましょう。

③5m以上の連続歩行ができない

自分で確認したり、認定調査の情報で5m以上の連続歩行ができないと記載があった場合は、車いすが必要な状況として認められます。

ただし、これは「5m以下ならなんとか歩ける」ということです。
歩行補助杖や歩行器があれば5m以上歩けるのか、リハビリの実施で改善が可能なのかなど、「車いすが必ずしも必要とは限らない可能性」が出てきますので、これも主治医に助言を求めて良いと思います。

やはり車いすを使う場面というのは外出が主ですので、5m以下なら歩けたとしても、何m・何十mと移動する必要がある状況下では、車いすの貸与が可能と判断できます。

介護保険で介護ベッドをレンタルできる理由は?

では、介護ベッドをレンタルできる理由とはなんでしょう?

事前に認定調査の情報が確認できれば簡単です。
寝返り起き上がりが「できない」と記載してあれば、理由として認められます。

ただし、「つかまれば可」という記載であった場合、注意が必要です。
「つかまるところがあれば可能」という意味になりますが、その「つかまるところ」は必ずしもベッド柵でなければならないとは限らないんです。

普段から家庭用ベッドを使っていて、ベッド柵が付いていないタイプであれば、わざわざ介護ベッドを借りなくても、ベッド脇に手すりをレンタルして設置すれば済みます。

でも普段使っているのが布団である場合は、手すりの設置が有効とは言い切れないので介護ベッドを借りて良いでしょう。

起き上がりが「できない」と判断される要因のひとつに、疾病が絡んでいる可能性もあります。
ADL自体は保たれていたとしても、疾病によって、

  • 起き上がりや立ち上がり時に酷いめまいがある
  • 日常的にベッドアップをしておく必要がある

などの場合は「できない」と判断されやすく、介護ベッドを借りる理由としては十分です。

福祉用具貸与の必要性をケアプランに記載しなければいけない理由

ケアマネジメントに関する規定の中に、「福祉用具をケアプランに位置付ける理由・必要性を、ケアプランに記載しなければならない」的な内容があります。

車いすや介護ベッドを借りる理由として先述した内容を、簡潔にケアプランに記載しなければなりません。
本人・家族の御用聞きで闇雲に福祉用具貸与することを防ぐためです。

僕はケアプラン第1・2表にも「歩くことが大変なため」等の柔らかいニュアンスで簡単に記載していますが、アセスメントはもちろん、サービス担当者会議で必要性を確認した旨をケース記録サービス担当者会議の要点に記載しておけば大丈夫だと思います。
不安なら、あなたの市町村の方針を確認してくださいね。

 

要介護認定で変わる福祉用具貸与の対象

基本的には、要介護認定を受ければ介護保険によって福祉用具貸与を利用できます。

しかし、「認定を受けさえすれば」というのは間違いです。

福祉用具の中には、一定以上の要介護認定を受けていなければ、「介護保険によるレンタル」ができないものがあります。

その主な境目が、要介護2です。

要介護2以上でないと介護保険が適用しない福祉用具

  • 車いす
  • 車いす付属品(車いす用のクッション等)
  • 特殊寝台(介護ベッドのこと)
  • 特殊寝台付属品(ベッド柵やマットレス等)
  • 床ずれ防止用具(エアマット等)
  • 体位変換機(体位を簡単に変換できる用具)
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり上げ式や昇降座椅子)
  • 自動排泄処理装置(尿・便を吸引するやつ)
    ※これだけ要介護4以上限定です

要支援からでも介護保険が適用になる福祉用具

  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行補助杖(1点杖を除く)
  • 歩行器

介護保険適用外でも介護保険を適用させる方法

ここで問題なのが、要介護認定が軽ければ、車いす等を借りてはいけないのかという不平等さです。
要支援認定を受けた人でも、疾病などによりそういう福祉用具が必要な場合があります。

そんな時も安心の救済措置があるので紹介しますね。

軽度者に対する福祉用具の例外的貸与

要介護2以上が対象の福祉用具を借りたいけど、要介護認定結果が軽い・・・。
そんな方は「軽度者」として、一定の要件を満たした上で市に提出すれば、介護保険を適用させることができます。

それが、「軽度者に対する福祉用具の例外的貸与」制度です。

要件①「認定調査結果」

まずは、要介護認定調査の結果を確認してください。

例えば「歩行」の項目の結果が「できない」であれば、特に申請の必要もなく軽度者として認められ、要介護度が軽くても車いすの貸与を受けられます。
介護ベッドの場合は、「寝返り」または「起き上がり」が「できない」になっていれば可能です。

先に挙げた、「要介護2以上」が要件の福祉用具それぞれに該当する項目が「できない」であればOKです。
詳しくは↓のリンク先のPDFで確認してくださいね。

軽度者への例外給付について

要件②「医師の判断」

認定調査結果では対象にならなかったとしても、疾病・障害により認められる場合があります。

↑のリンク先PDFにもありますが、次の要件を満たすことで例外給付が認められます。

  1. 医学的な所見
    ケアマネから医師に、医学的な所見に基づき、疾病またはその他の原因によって、認定調査の各種項目において「できない」の状態に該当すると認められる
  2. ケアマネジメントにより必要性の見当
    サービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにおいて、福祉用具の必要性が確認されている
  3. ①②について市町村に以下の書類を提出
    ・軽度者に係る福祉用具貸与に係る確認依頼書
    ・ケアプラン・サービス担当者会議等の記録
    ・主治医の意見書や診断書等

ただし、状態の変化や、介護認定更新・区分変更があったなどの場合、再度①~③の行程を辿らなければなりません。

僕のとこの市の例ですが、現在要介護2で車いすを借りている場合。
介護認定更新で要介護度が低くなる可能性が予測できる状態であれば、認定有効期間が終了になる前に申請を済ませておかないとなりません。
これは、申請に遡及性がなく、書類提出日からしか効力が認められないためです。
個人的には改善してほしいところです。
更新認定の結果が要介護2のままだったら、諸々の書類が必要なかったってことになりますからね。

これは市町村によって解釈が分かれるところなので、確認しておいた方が良いですよ。

まあ提出は仕方ないとして、認定申請後の暫定ケアプランを作成する際に、該当の福祉用具が必要であると判断(医師の所見も含む)されている場合は、その時点で書類を提出しておくと、あとで慌てなくて済みます。

 

自費レンタル

介護保険適用により、福祉用具貸与の料金は1~3割の自己負担で利用できます。
しかしそれは介護保険適用内での料金です。
先述の通り、要介護2以上でないと適用外になる福祉用具があります。

自己負担が1割の場合、介護ベッド一式で1,000~3,000円くらいになりますが、これが全額自己負担になると、その10倍の額を払わなければなりません。

しかし、福祉用具貸与の救済措置として、1割負担額とほぼ同額、または少々高いくらいでレンタルできる方法があります。
それが自費レンタルです。

各福祉用具事業所で自費レンタルできるものが決まっているので選択はできませんが、例外給付申請するほどでもない方であれば、十分使える場合がほとんどです。
自己負担が2~3割の方なら、むしろ自費レンタルの方が安いですね。

ちなみに、自費レンタルをしていて、認定更新などで要介護2以上になった場合、無条件で介護保険適用になります。
そこから状態に合わせたタイプに変更するのも手ですね。

逆に更新で要介護1以下になりそうな感じなら、例外給付申請か自費レンタルの対応を事前にしておいた方が良いので、気を付けてください。
認定調査結果の書類発行は、認定結果が出てからでないともらえないので、それで確認しようとすると遅い場合があります。

また、要介護2以上でも、サービスの利用状況によっては区分支給限度額を超える場合があります。
超える額にもよりますが、他のサービスを10割負担するよりは、自費レンタル料金にしてしまった方が安上がりになるかもしれないので、そんな状況になったらちょっと計算してみてくださいね。

 

まとめ

福祉用具を利用したい方はたくさんいます。

現在は福祉用具の種類や機能もかなり充実していて、必ず個々に合った用具があると思います。

その反面、本人の状態像に合っていない用具を考え無しに利用させるケアマネも少なくありません。
考え無しでなければ、本人・家族の御用聞き状態になっているかも。

僕等ケアマネはある程度の知識はあっても、専門家ではありません。
困った時は福祉用具事業所の相談員等に聞いたり、訪問に同行してもらえたりするので、連携して適切な福祉用具マッチングを行い、できるエレガントなケアマネを演出しましょう!

 

 

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