何もわからない新人ケアマネに捧ぐケアマネの教科書【暫定ケアプラン】

新人ケアマネとして活躍するあなた。

覚えること、山ほどありませんか?

  • ケアマネ試験合格からの実務研修
  • ケアマネ事業所の上司・先輩の指導
  • ケアマネになってからの研修(専門研修・更新研修含む)

これだけでも情報量が多すぎてそうそう覚えられたものではありません。
しかし、ケアマネの大変なところは、十分な研修や指導を受ける前に独り立ちすることが多いということです。
さらに言えば、研修の内容だけでは対応しきれないことが、序盤からドバドバやってきます。
僕も新人の頃、それでさんざん悩まされました。

そんなあなたのお役に立てればと思い、僕の体験を交えつつ、ケアマネとしての基礎知識を徹底解説していきます。

この記事では、意外と取り扱いに困る、暫定ケアプランについてお話します。

 

暫定ケアプランとは

暫定ケアプランとは、要介護認定の新規・更新・区分変更申請を行った後、まだ結果が出ずに要介護度が定まっていない状態の方が、介護サービスを利用するために「今はとりあえずこれね」ってニュアンスで作成するケアプランのことです。

要介護認定を受ける流れは、少々端折りますが、次の通りです。

  1. 市役所に要介護認定の申請書を提出
  2. 認定調査員が自宅へ伺い、聞き取り調査等行う
  3. 市から主治医へ主治医意見書の作成依頼を出す
  4. 介護認定審査会が開催され、要介護認定が決定する
  5. 本人へ認定の通知と保険証が送られる

新規・更新・区分変更のどの申請を行ったとしても、必ずこの流れを辿ります。
その中で、

  • 新規
    ⇒申請後すぐに介護サービスを利用したい場合
  • 更新
    ⇒介護サービスを利用しているが、更新前の認定有効期間内に、新しい認定結果が間に合わなかったが場合
  • 区分変更
    ⇒申請前から介護サービスを利用している場合

このいずれかに該当する場合し、それぞれ認定の結果が出るまでの「仮のサービス利用計画として、暫定ケアプランを作成しなければならないというわけです。

個人的に嫌なのは、更新の結果が有効期間に間に合わないので暫定プランを作ったのに、月が変わって数日で結果が出た時ですね。
市の都合でケアマネの手間が増える意味がよくわかりません。

区分支給限度基準額の罠

要介護認定には

  • 要支援1・2
  • 要介護1~5

とありますが、それぞれに区分支給限度基準額が決められています。
区分支給限度基準額とは、1ヶ月に利用できる介護サービスの上限額のことです。
要介護度が重くなるほど、上限も高くなります。

認定結果が出ないうちにサービスを利用する場合、この区分支給限度基準額がまだわからない状況なので、「この人の認定はこれくらいかな?」と予測をたてて、その上限額内に収まるよう、介護サービスを調整しなければなりません。

これを間違えて上限額を超えてしまうと、利用者さんに大きな金銭負担を強いることになります。
ケアマネにとってもちょっとした事務負担になるので、誰も得しません。

なので、暫定ケアプランを作る状況になった場合は、利用者の状況をなるべく正確に判断する必要があります。
介護職としての経験が長ければ、ある程度見当はつくようになるとは思いますけどね。

一番無難なのは、認定結果が要支援だった場合でも問題ないサービス内容にしておいて、結果が要介護1以上と確定したらサービス量を増やすなどすることです。
申請ないし認定調査の時点で、寝たきりなら要介護3か4、準寝たきりの状態だった場合は要介護1・2で調整しとけばまず大丈夫だと思います。

準寝たきりとは、自宅内では概ね自分で生活できるが、外出には介助が必要な状態。
障害高齢者の日常生活自立度で言うところのランクAに当たります。
「寝たきり予備軍」とも言われるとか言われないとか。

暫定ケアプラン作成のポイント

十分な説明

暫定ケアプラン作成に際して一番心配なのが、認定結果が予測していた介護度より低く出て、介護サービスの料金が区分支給限度基準額を超えてしまうことです。

ケアマネとしてある程度結果の予測はつくと思いますが、ほとんど認定調査員の捉え方次第ですし、調査の時に限って利用者さんも頑張ってくれちゃうことが多いので、どんなベテランケアマネでも百発百中ではありません。
要支援と踏んでいても、非該当になる場合だってあります。

暫定ケアプラン作成の前に、利用者・家族に対して、料金の全部または一部が10割負担になってしまう可能性があることを十分に説明するよう心掛けましょう。

暫定でもやらなきゃいけない流れ

暫定ケアプランでも、ケアマネジメントの一連の流れは必ず行わなければなりません。

  1. アセスメント
  2. ケアプラン原案作成
  3. サービス担当者会議
  4. ケアプランの交付
  5. サービス利用票・提供票の作成・交付
  6. モニタリング

それぞれについて、暫定での取り扱いであることをケース記録にも記録しておきましょう。

認定結果が出たら

暫定ケアプラン作成の後、認定結果が出たらさっそく区分支給限度基準額を確認しましょう。
上限に達してなければ、おめでとうございます。

上限を超えていた場合は、利用者・家族にその旨を伝えてください。
(なんとなくこの時ケアマネが謝ってしまいがちなのはなんででしょうね?)
上限を超えた分の請求に関しては、あなたの事業所でとっている方法に沿って処理してくださいね。

その辺の処理を行いつつ、暫定ケアプランは確定ケアプラン(または本ケアプラン)に生まれ変わります。
確定ケアプランの取り扱いについて解説しますね。

ケアプラン内容に変更が「ない」場合

通常ケアプラン作成に際して、先述の通りケアマネジメント一連の流れは必ず行わなければなりません。
ただし、暫定ケアプランを作成した場合においては、要介護認定が予測と同じでも違ってても、今後利用するサービス内容等に変更がなければ、改めてアセスメントやサービス担当者会議(照会含む)を行わなくても良いとされています。
(一応あなたの市町村の方針は確認してくださいね!)

行っても良いですけど。

一連の流れを行うことなく、作成した暫定ケアプラン第1表に次の通りに書き込んでいきます。

暫定では右上の「申請中」にチェックが入っている状態になります。
認定が出たら、申請中のチェックを見え消しで修正し、「認定済」にチェックを入れます。

次に、「申請中」では空欄になっていた

  • 認定日
  • 認定の有効期間

に、介護保険証に書かれてる日付を書き写して、該当する要介護度にチェックを入れます。

これで確定ケアプランの完成です。
これなら改めて署名をもらう必要もありません。

ただし、暫定ケアプランをそのまま確定ケアプランに変更した旨を利用者・家族に説明し、その記録をつけておきましょう。

手書きするのは面倒だし、もう1回署名をもらっても構わない・・・というなら、認定結果を反映した第1表を印刷し直して、それに署名してもらえばOKです。

ケアプラン内容に変更が「ある」場合

ケアプラン内容に変更する部分があった場合、ケアマネジメントの一連の流れは行わなければなりません。

第1表の「総合的な援助の方針」などに変更がなければ、先述のように見え消しと書き込みでいいと思います。
そうすれば、改めて署名をもらう必要がありません。
第2・3表はいくらでも差し替えが効きますしね。(内緒よ)

言ってしまえば、確定ケアプランを新たに作り直さなくても、一連の流れさえちゃんとやってればなんら問題はないという事。

ですが、「総合的な援助の方針」などに変更がある場合、別にこれも見え消しで構わないんですが、書き込む量が多いと書面がごちゃごちゃしてきますので、交付する資料としてはなんだか不細工です。

ここは、見やすいケアプランを作り直すことでエレガントでスマートなケアマネを演出しましょう。

というか、どうせアセスメントからサービス担当者会議と行わなければならないわけですから、署名くらいもらい直したって、ケアマネには大した負担でもないです。

ちなみに、都合がつかなければ照会文書ももちろん有効ですので、活用してくださいね。

まとめ

暫定ケアプランの取り扱いは、市町村によって多少の違いもありますが、案外小難しくて困りますよね。

この記事の要点をばっちり把握できたら、あなたの市町村の方針にあてはめて微調整してください。

判断に迷ったら、多少面倒でもとにかくケアマネジメントの一連の流れをやっておけば間違いありませんので、独断でやらなようにだけ気を付けてくださいね。