認知症ケアから職場の人間関係まで改善する言葉かけの力

「自分が優位に立つ」

 

こう言うと、マウントをとるような印象を受けてしまうしょうか。

マウントをとるというのは、「自分はあなたより上」っていう感情をはっきり伝える、あるいはほのめかすっていう意図があります。

「優位に立つ」ということに間違いはないですね。

少なくとも、いい印象ではありません。

 

ここで僕がお話ししたい「優位に立つ」とは、あくまで自然に、人の持つ好意を利用することで、その相手に不快感などを与えることなく優位に立つための心理テクニックです。

言い換えても怪しいかな(^_^;)

でもここは、先入観を捨てて読み進めてほしいと思います。

 

この心理テクニックでは、ある程度の演技というか、演出みたいなものが必要になります。

そこでポイントになるのが、

  • 言葉
  • しぐさ
  • 見た目

です。

このどれか一つを活用すればいいってわけではありません。
この3つが相互に作用することで心理テクニックが可能になるんです。

そして、これらを活用することで介護現場(認知症の方の対応も含む)や職場の人間関係を好転させることが可能になります。

ここでは、言葉を活用する上での心構えについて解説します。

 

声の使い方

声音を使い分ける

男ってのは一般的に理屈っぽい傾向がありますが、それでも、状況などによっては、声の質や大きさに気をつける必要があります。

 

ここぞという場面で重要になるのは、声の抑揚です。

20世紀後半、アメリカ大統領選挙の「得票率」と、「声のトーン」の因果関係を調査したデータがあるそうです。

それによると、声の低い候補者の得票率の方が、声の高い候補者の得票率よりも高かったとか。

1981年に大統領に就任したロナルド・レーガン元大統領は、さすが元俳優なだけあって、低めのハスキーな声をうまく利用して、多くの支持を得たを言われています。

低い声にハスキーボイスが加わることで、男らしさとあたたかみが備わっていたとされています。

 

また、声の大きさも重要になります。

ささやき声を使うと親密度が増すと言われています。

レーガン元大統領はその辺が巧みで、自身の声質に加えて、ささやくような話し方をして親しみやすさも演出していたんです。

1/fゆらぎ(えふぶんのいちゆらぎ)って聞いたことありません?

簡単に言うと、心臓の鼓動とか、ろうそくの火とか、雨音のような、規則的に見えてどこか不規則にゆらいでいるものを1/fゆらぎと言います。

人はこれを気持ちよく感じるんです。

焚き火が映ってるだけの動画を延々見れちゃうのは、1/fゆらぎの効果であると考えられます。

これは声にも当てはまりまして、レーガン元大統領の声もそうだったんじゃないですかね。

日本の有名人で言うと、

  • 美空ひばり
  • 宇多田ヒカル
  • MISIA
  • 福山雅治
  • 森本レオ及び森本レオのモノマネをしている時のダチョウ倶楽部 肥後リーダー

だそうです。
肥後リーダーが個人的にツボです。

なんとなく、効果の高さが理解できますよね。

 

1/fゆらぎの声は狙って簡単に出せるものではありませんが、ここでお話しした声の抑揚とトーンをコントロールすることで、近い効果を期待することはできますよ。

目指せイケボ!

 

話すスピードをコントロール

会議とか研修会とかの大勢の前で話すなどの状況で、説得力を持たせたいのであれば、やや早口めに、イントネーションをはっきりつけて話すのが理想です。

ただ、相手の年代によってはちょっとした調整が必要です。

人間、歳をとればとるほど時間が経つのを早く感じるようになります。
僕は30歳を過ぎた辺りからちょっと実感し

こういう、「実際の時間」と「感覚の時間」の違いを時間感覚と言います。

 

介護職員がやる会議や研修会では、20代から50代と幅広くいますよね。
ていうか、定年延長する傾向もあるので、60代の方とも席を並べているところもあります。

なのでちょっと難しいところですが、50代の方に向けて話す時は、20代の人に向けて話すよりもゆっくり話した方が印象が良くなると言われています。

でも、これは普段の会話でも応用できる話です。

いろんな年代が入り混じってても、特定の人に向かって話をする場面はあるはずなので、その際には、話すスピードを意識してみてください。

 

ほめて育てる

アメリカで行われた実験の話です。

小学5年生、三つのグループに5日間算数のテストをさせます。

一つ目のグループの子は、成績に関係なくほめてあげます。

二つ目のグループの子は成績に関係なく叱る。

三つ目のグループの子には何もしないという内容で、それぞれの成績の伸びを比較しました。

結果は、まあ予想つくと思いますが、ほめたグループの成績は伸び、叱ったグループは悪くなり、何もしないグループには変化がありませんでした。

 

このように、期待を受けることでやる気が引き出されて、成績が向上する現象をピグマリオン効果と言います。

【ピグマリオンとは】
現実の女性に失望していたピグマリオンは、あるとき自ら理想の女性・ガラテアを彫刻した。
その像を見ているうちにガラテアが服を着ていないことを恥ずかしいと思い始め、服を彫り入れる。
そのうち彼は自らの彫刻に恋をするようになる。
さらに彼は食事を用意したり話しかけたりするようになり、それが人間になることを願った。
その彫像から離れないようになり次第に衰弱していく姿を見かねたアプロディーテーがその願いを容れて彫像に生命を与え、ピグマリオンはそれを妻に迎えた。
©️Wikipedia

※Wikiでは「ピュグマリオーン」と記載されてますが、便宜上「ピグマリオン」に修正しました。

こういうギリシア神話がありまして、ピグマリオン効果では、ピグマリオンは彫刻の女性が「人間であること」を期待し続けた結果、それが現実となったんだと言いたいわけです。

 

先にお話しした実験では子供が対象でしたが、もちろん大人にもピグマリオン効果は期待できます。

うまく活用できれば、腰の重い職員さんが自発的に働いてくれるようにできるかもしれません。

声の抑揚やトーンも活用できれば、より効果的になるかもしれませんね。