脳の半分がないのに? 認知症克服のヒントが詰まった奇跡の物語

先天的に脳が半分しかなかった女性

1973年に生まれたミシェル・マックの両親は、ミシェルが生まれて数週間である異変に気付きます。

ミシェルは物に焦点を合わせることができず、身体の動きも不自然で、特に右腕・右足を動かすことに支障がありました。

両親はいくつもの専門医にミシェルを診てもらいますが、どの医者も症状を特定できない。
当時のX線検査やMRIなどの技術は、まだ開発の初期段階だったためでしょう。

驚愕の事実が発覚

ミシェルは3歳になっても歩くことができず、言葉も遅れていました。

X線検査の技術も進歩してきた1977年、CATスキャンの結果、驚愕の事実が判明します。

ミシェルの脳は、左半分がほぼ欠落していたのです。

胎児のうちに起こった総卒中だとか、血流障害によって脳の左半球に血液が流れなかったことなどが原因として考えられましたが、明確な理由はわかりませんでした。

ミシェルはどう生きたか

「脳が半分の状態で生きられる」ということも十分驚きに値しますが、注目すべきはミシェルのその後。

実際のところ、脳が欠落していたことがわかったところで、治療の方法なんてありません。
現代でもそうでしょうね。

にもかかわらず、脳が欠落したままでも、ミシェルはものすごい速さで、脳の欠落によって得られなかった能力を獲得していきました

同年代に比べれば動作のペースは遅いものの、歩くこと、話すこと、読むことなど、左脳が司る能力をある程度普通にできるようになったんです。

また、ミシェルは抽象的な思考が不得意であることがわかっていましたが、その反面、驚異的な記憶力を授かっていました。

これをギフテッドと言うべきか、サバンと言うべきかは微妙なところですが、ミシェル不得手があっても余りある得手を持っていたんです。

ミシェルの脳になにが起こっていたのか

ミシェルの右脳は、本来なら左脳が司るはずだった機能を一手に引き受けていました。

そういった事例は、小規模のものなら過去にもあったのですが、失われた半分の脳の機能を補えるというほどの事例は、過去類を見ません。

それが良い結果をもたらすばかりではないにせよ、脳には失った機能を他の部位が代替えする機能があるという、ものすごい事実がわかりました。

ほとんどの人は脳がちゃんとあるのだから、認知症によって失われた機能も、取り戻せる可能性があるということだと、私は思います。