レビー小体型認知症による食行動障害(摂食・嚥下障害)への対応

レビー小体型認知症に対する支援においては、動作の障害や嚥下障害があっても、記憶や理解力が維持されている時期があります。

そのことを考慮し、自尊心に配慮した支援が重要です。

こと食事支援においては、注意深く観察することで、「できないところだけを、さりげなく、エレガントに支援する」よう心掛けましょう。

 

動作の障害への対応:パーキンソン症状

上肢の動き(箸・スプーンの持ち方、口に運ぶ動き)や顔面、口腔の不随意運動、口腔咽頭の協調運動の困難による、

  • むせ
  • 嗄声(させい)(痰が絡んだようなガラガラ声)
  • 呼吸切迫(呼吸の深さや回数が異常に増えること)

がないかを確認しましょう。

特に呼吸切迫は、不顕性誤嚥の前兆とも言われているので注意です。

薬の効果を確認

抗パーキンソン病薬の効果発現時間と、消失時間の様子の比較、また朝と夕方などの日内変動の観察を行います。

これはパーキンソン症状の把握に有効で、安全な摂食に欠かせない観察事項です。

パーキンソン病では

安静時の振戦が見られます

しかし目的のある動作(「スプーンを手に持とう」など)をとる際には、振戦が停止していることが通常です。

レビー小体型認知症では

レビー小体型認知症(あるいは認知症を伴うパーキンソン病)では、複数の投薬の影響固縮や筋力低下の進行の程度によっては本態性振戦(※)が見られるケースがあります。

食事時間に振戦が強く出ていると、食事動作の障害やむせが起こりやすく、安全な摂食に多大な影響を及ぼします。

本態性振戦とは、特にこれといった原因もなく起こる振戦のことです。
本態性高血圧であれば、「強いて言えば」加齢など漠然としたものが原因であったりします。
レビー小体型認知症では「複数の投薬、症状進行の程度によって」と言いましたが、これらは確定的な原因ではなく、「強いて言えばこれが原因かな?」程度のものと思っててください。

対応

本人は理解力が保たれている場合が多いので、「わかっているのにうまくできない」という状況にあります。

これは自己肯定感を下げることになり、その後の意欲低下につながりかねないので、対応には注意が必要です。

必要な投薬の確認及び医師への相談はもちろんですが、振戦が強く出る時間帯が把握できているのであれば、その時間をずらして食事提供するのも効果的です。

運動障害の影響を確認

動作緩慢、筋固縮の影響による上肢の運動障害で、手に持ったスプーンなどを口にうまく運べない場合があります。

その時は、介助者が本人の手を誘導するように支援してあげましょう。
手を優しく添えて、口まで運ぶ手伝いをしたり、手の動きに合わせてそっと食器を移動してあげたりですね。

重要なのは、「自分で食べている」という感覚を損なわないようにすることです。
できないみたいだから食べさせてあげようと全介助することは、望ましい支援とは言えません。

さりげなく、エレガントに自力摂取を誘導してください。

認知レベルの変動への対応

認知機能が良好の時と、覚醒はしていても認知機能が低下している時があります(認知機能の変動:ON・OFF現象)。

これと食行動にどういう影響が出るかを確認しましょう。

認知機能がOFFの時に注意が必要

認知機能がOFFの時は、食事を配膳されても全く見向きもしない状態もあります。

介助しても、咀嚼どころか口唇も閉じなければ舌運動も困難になり得ます。
この場合、声掛けしても改善しないことが多いです。

OFFの時の対応

OFFの時は、嚥下中枢呼吸中枢も機能低下している状態だと考えられます。

OFFの時は無理に食事をさせず、覚醒や認知機能状態が良い時を見計らって食事を提供した方が安全です。
なので、普段から変動による認知機能の状態を把握しておいた方が良いですよ。

ただ、レビー小体型認知症が進行するとOFFの時の時間が長くなったりするので、1日の食事摂取量が減ってしまようであれば、栄養補助食品などでの一時的な代替えを検討してください。

誤認・幻視(視空間認知機能障害)への対応

食事をすくうのを空振りしたり、食事以外の何かが見えて集中できない状態がないか確認します。

視空間認知障害により、食事の中に異物や虫が混じっているような幻視が見えて拒否したり、固い歯ごたえの食べものを「歯が折れた」などと誤認識するなど、幻覚・妄想様の症状が起きる場合があります。

中には幻視を自覚して、「目を閉じれば気にならない」と言って、目を閉じたまま食べようとする方もいるそうです。
それで食事が進むのであれば、声掛けで食事内容を解説しながら介助するといった工夫をします。

また、視覚情報の混乱が食事意欲の低下を引き起こす場合もあります。
その場合は一旦食事を下げて、新しい更に移し替えるなどの工夫により改善することが多いです。

まとめ

レビー小体型認知症ではアルツハイマー型認知症と違い、記憶や理解力が保たれている場合が多いです。

保たれていないなら良いということではありませんが、理解力がある分、自己肯定感を低下させやすい傾向があります。
そうなると、その後の食事への意欲も下がる一方です。

自尊心を傷つけない支援を心掛けながら、食行動が改善するよう行動してみてくださいね。