レビー小体型認知症の特徴
レビー小体型認知症では、中枢神経、特に大脳皮質を中心にレビー小体が出現した結果、次のような症状が起こります。
- うつ
- 幻視
- 認知機能の変動
- パーキンソン症状
- 睡眠時の異常行動(レム睡眠行動障害)
- 自律神経症状(起立性低血圧や失禁・便秘など)
初期では見当識障害や記憶障害がない、または少ないのが特徴ですが、その時期でも後頭葉の障害などから原子や誤認、幻聴や体感幻覚(全身に針が刺さっているように感じるなど)が起こります。
パーキンソン症状とありますが、診断上では、レビー小体型認知症はパーキンソン病とは別物として分けられています。
しかし実際は、両者の発症の原因になると考えられているタンパク質が同じ種類であり、それがどこに発生したかで病名が決まる節がありますので、これらは同じものであるという説もございます。
ま、それはこの記事では無関係なので置いときましょう。
この記事では、レビー小体型認知症の症状であるパーキンソン症状や認知機能の変動が起こす、様々な摂食障害についてお話します。
レビー小体型認知症による食行動障害
錐体外路症状
レビー小体型認知症では、パーキンソン症状の影響により、記憶障害なども少ない初期からでも嚥下障害が見られます。
パーキンソン症状はレビー小体型認知症の70%に出現すると言われています。
実はパーキンソン病でも、パーキンソン症状の出現率は同程度だそうです。
先述した、「レビー小体型認知症とパーキンソン病が同じものである」という説がなんだか真実味を帯びてきますね。
錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)については、まあ難しいところは僕もわかりませんが、錐体外路とは、大脳皮質との神経回路のことだと思っておけば良いみたいです。
で、パーキンソン症状がその錐体外路症状を引き起こしているようで、それがレビー小体型認知症の進行と一緒に進行し、上肢や口腔咽頭の摂食動作、かつ嚥下反射や喀出反射といった咽頭反射が障害され、嚥下障害が深刻化するケースも少なくありません。
アルツハイマー型認知症と比較すると、より早期に重篤な摂食・嚥下障害が出現するケースが多いです。
重症度においても、以下の症状においてアルツハイマー型認知症よりも重度に障害されると言われています。
- 食塊嚥下困難
- 水分嚥下困難
- 嚥下時のむせ・窒息
- 嚥下反射遅延
- 痰絡み
- 食欲不振
- 介助の必要性
- 便秘
これらの症状が見られる状態の時、ドーパミン不足(※)によって、嚥下反射や喀出反射(異物を吐き出す反射)の低下して不顕性誤嚥のリスクが増大している状態になっています。
パーキンソン病等の発病によりドーパミンが減っているのか、そもそもなぜドーパミンが減少するのか、原因は明らかになっていません。
また、全身の動作緩慢と筋活動低下は姿勢保持困難を招きます。
姿勢が崩れやすくなる上、上肢・手首関節の拘縮によりスプーンなどを口唇に近づける動きがうまく出来ず、手ではなく顔を動かしてスプーンに近づけるようになります。
その時すすり食べが起こりやすいんですが、すするということは空気も一緒に吸い込む可能性が高いので、空気と食べ物を一緒に取り込むことで、より誤嚥のリスクを上げることになります。
さらに、口腔や咽頭の筋力低下を招くため、疲労により、食事の後半から嚥下がうまくいかなくなる場合もあります。
パーキンソン病や広汎性発達障害でも見られることですが、消化管蠕動運動障害や、便秘などの消化器症状も出現するため、嚥下した食べ物が逆流することもしばしばあるようです。
視空間認知障害
レビー小体型認知症やパーキンソン病の視空間認知障害がは、一部アルツハイマー型認知症よりも重度に障害されるケースが多いと言われています。
幻視はレビー小体型認知症の60~70%に見られると言われており、幻聴を伴わないリアルな幻視もあるそうです。
パーキンソン症状や視空間認知障害、幻視などが複合することで、多くの生活上の支障が生まれます。
記憶障害が少ない時期にこういった症状が見られるため、「こんな幻覚を見た」という記憶は残り、混乱するケースがあるみたいです。
そういう問題は、食事の場面でも如実に現れます。
幻視によって食欲を失うケースですね。
具体的には、
- 食器の模様や凹凸に惑わされて、食器が変形しているように見える
- 食器やスプーン等との距離感がつかめず、食べ物を口に運べない
などです。
幻覚や妄想が原因で食事を吐き出してしまう認知症の方に食べてもらう方法
嗅覚障害
レビー小体型認知症は、軽度のうちから嗅覚障害があると言われています。
コロナと疑われそうで怖いですね。
MMSE(認知症のスケール)24点以上と軽度の方でも、特に睡眠障害のある方に嗅覚低下が見られる傾向にあるようです。
その嗅覚障害は、もはや鼻がどうこうというレベルではなく、大脳皮質レベルでの障害と関連しているという推察がされています。
こういった嗅覚障害は食事の嗜好や食欲にも影響するため、提供方法にも工夫が必要です。
認知機能の変動・意識レベルの変動
レビー小体型認知症では、1日の中でも認知機能障害の程度が変わると言われています。
そんな認知機能の変動では「ON-OFF現象」がありますが、変動は日内のみならず、1日単位、週単位での変動もあり得るそうです。
極端な場合、軽度の時期ではMMSEでのONとOFFの差が8点も違うことがあります。
病状の進行とともにONとOFFのふり幅が狭くなり、次第に全体的に機能低下していくと言われています。
なので、食事中にOFFになってしまうと、自力摂取が止まってしまったり、嚥下反射などの低下の可能性もあるんです。
まとめ
認知症による食行動障害には、なんの認知症かによって大きな違いがあります。
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は互いに誤診されやすいという因果関係がありますので、それぞれに現れる障害を把握しておくことは、実際の支援に大きく役立つと思います。
レビー小体型認知症による食行動障害への具体的な対応については、また別の記事でお話ししますね。
アルツハイマー型認知症による食行動障害
レビー小体型認知症による食行動障害への対応