岸田首相の所信表明を経て、2022年2月からの介護職員賃上げが現実となりました。
年間11万円ほど引き上げる計算になります。
ありがたいです。
僕はケアマネなのでこの賃上げは関係ありませんが、妻がバリバリの介護士なので、また給料格差が・・・賃上げの恩恵を預かっています。
だがしかし、だがしかし。
実質的な賃上げが叶っても、きっと介護職員の給料は安いままだと、僕は思います。
その理由をお話ししますね。
給料が安いままの理由① 賃上げの実感がない
介護職員の賃上げは、介護職員処遇改善加算という、税金と利用者からの徴収からなる追加料金的なものによって行われています。
ここ10年ほどの介護職歴がある方はご存知かと思いますが、今回のように「月9000円賃上げしますよ」と言っておきつつ、実際の給料明細を見ても「確かに9000円上がってる!」とはなっていない場合があるんです。
これはなぜかと言うと、介護職員1人につき9000円が介護施設・事業所に配られることは間違いないんですが、あくまで「介護職員の人数分」しか配られません。
介護職員の賃上げなんだから、当然だと思いますよね。
しかし、介護施設・事業所には、生活相談員・ケアマネ・看護職員・事務職など、介護職員以外の職員も多数います。
例えば、介護施設に総勢50人の職員がいて、そのうち30人が介護職員だったとします。
そうなると、今回の賃上げ分9000円×30人で、月27万円がその施設に入ってくるわけです。
賃上げ分の職員への配分は、その施設が決めていいとされているんです。
つまり、27万円を30人の介護職員だけに配る施設もあれば、他職員含めた50人で分けようと考える施設もあるということす。
全員で分けるといっても、メインの介護職員への配分を多めにして、他職員には少なめに配るところがほとんどだと思いますが、単純計算でも27万円を50人で山分けすれば、5400円です。
決して少ないとも言いませんが、9000円配られるという頭があると、どうしても見劣りしますよね。
また、
などの意見も少なからずあるのですが、これはやむを得ないと認識してもらった方が良いでしょう。
他職員も必要な人材であり、一部でも平等にしないと離職につながりかねないですからね。
給料が安いままの理由② そもそも配られないところもある
この賃上げは、介護職員処遇改善加算のⅠ~Ⅲを算定していることが要件になります。
処遇改善加算は2012年に始まり、約10年の内に9割以上の介護施設・事業所でⅠ~Ⅲのいずれかを算定している状況です。
なので、たいていの職場では賃上げが確実であると言えます。
ですが、残りの1割近くの施設・事業所では、処遇改善加算を算定していないために賃上げが行われないということになります。
そしたら言わずもがな、給料は安いままですよね。
せっかく働いてもそれではあんまりなので、就職・転職を考えているなら、処遇改善加算を算定しているかどうかも確認しておきましょう。
まあ、言っても加算とってないの1割以下ですけど。
給料が安いままの理由③ 他の全産業と比較しても低水準
2020年、介護職による労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が発表した「就業意識実態調査」によると、介護職員の2019年の平均年収は359万8,000円だそうです。
対して、全産業の昨年の平均年収は463万4,900円なので、介護職員は平均より103万6,900円少ないことになります。
2022年の賃上げが叶っても、その差は未だ埋まりそうもありません。
来る2025年、団塊の世代が後期高齢者になる際により顕著となる介護人材不足を見越して、今後も賃上げが検討されることはまず間違いないです
NCCUによる調査が始まった2009年時点での平均年収差は166万3,500円であったことを思えば、10数年の内にかなり給料が上がっていることがわかります。
それでも、2025年以降に100万円近くの年収格差が埋まるとは、どう頑張っても思えませんよね。
給料が安いままの理由④ 「もっと上がればいいな」という思い
せっかく日々苦労して働いているんだから、もっと給料、ほしいですよね?
昔から介護は「過酷な業務内容と給料が釣り合ってない」と言われ続けてきました。
それが実際に離職につながっているってなもんで、処遇改善加算が生まれたわけです。
先述の通り、まだまだ全産業平均には遠く及ばないものの、介護職員の給料は確実に上がってきています。
さあ・・・
どこまで上がるでしょうか?
というか、
どこまで上がってほしいですか?
もちろん、今の給料に満足している介護職員もいます。
思いの外多いです。
実のところ、介護職員の離職・転職する理由ランキングで、給料面の問題は上位でこそあるものの、1位ではありません。
(ちなみに1位は人間関係です)
でも、介護人材不足の理由として話題になるのは、いつも給料ですよね。
まあ施設・事業所ひとつひとつの人間関係までは行政の知ったことではないし、行政のできる中で最も好感を得やすいのが賃上げなわけだから、当然と言えば当然かもしれません。
結果、こうして着実に介護職員の給料が上がってきているわけだから、それ良いことです。
さあ、もう一度聞きます。
給料、どこまで上がってほしいですか?
人にもよるでしょうが、恐らく、「給料上げろ」という思いは際限がないと思います。
仮に全産業平均に追いついたとして、その思いが落ち着いたとしても、ある程度してくると必ず、「やっぱ割に合わないからもっと上げて」と言う人が出てきます。
慣れが一番大きいでしょうが、給料が上がる分、当然求められるものが増えてきます。
仕事量が増えるのか責任が増えるのかはわかりませんが、そうなってくれば、「割に合わない」と思い至るのはやむを得ません。
今現在「給料が安い」と思っている人は、いつまで経っても給料が安いと思ったまま働いていく人です。
国の改変を待つより、自分を変えるべき理由
介護人材不足を改善するための処遇改善により、現場にいる介護職員たちは、無条件に給料が上がっていくように錯覚を起こすかもしれません。
今はそれで良いかもしれませんが、何年先か10年以上先か、賃上げは頭打ちになります。
これは確実です。
というのは、処遇改善は、2025年問題の人材不足を解消するためにあるからです。
あまり人の生き死にを語るのは良くないですが、あえてお話しします。
2025年以降の何が問題かって、75歳以上の後期高齢者が一気に増えるからですよね。
だから、介護人材が今以上に不足すると考えられています。
では、それが落ち着いたら、どうなるでしょう?
少子化が進んでいる以上は慢性的な人材不足は避けられないとはいえ、「団塊の世代」と「その時の働き手」ほどの人数差には至りません。
介護職員の給料を上げるだけ上げた後、深刻な人材不足を脱したとしたら・・・?
考えられることは2つ。
- 介護職員数をなるべく確保しつつ、給料を下げる
- 給料を下げないまま、介護職員数を減らす
少し脱線しますが、普通に買ったら150円の500mlペットボトルの飲み物が、富士山の頂上にある自販機だと500円もするのをご存知ですか?
高すぎですよね。
でも、値段が下がることはないし、実際に売れています。
需要があるからです。
給料とは、「こなした仕事につけられた値段」です。
人を物で比較するのは失礼ですが、介護職員をペットボトル、国を登山客だとしましょう。
「持ってきた飲み物はもう全部飲んじゃったしなあ・・・何か飲まないとやばいな・・・」
そんな時、自販機を見つけます。
近くにはその自販機ひとつしかありません。
「高いけど、我慢の限界だ!買おう!」
これが、500円でもペットボトルが売れる理由です。
需要があるから、高くても買われるわけです。
介護人材不足は、イコール喉がカラカラの状態。
なので国は登山客さながら、高い金を払ってでも人材を増やそうとしているんです。
その需要がなくなれば、わざわざ高い金を払おうとは思いませんよね。
だから、国がとにかく賃上げしてくれるのを待つのでは、いずれはまた「給料安い」と騒いで終わるかもしれません。
じゃあどうすれば良いか?
答えは単純。
自分を変えることです。
今から他の職員との差別化ができるよう自分を変えることで、介護業界での生存競争に打ち勝つことができます。
差別化とは、ただ単に介護技術を磨くだけでも、知識を増やすだけでもダメです。
自分より上は絶対いるし、何よりそれ、「そこそこ仕事できる人止まり」です。
出世を目指すにしても、他の職員にはない自分だけの価値を生み出す必要があります。