人が行動する時ってのは、いろんな心理的な原則が働いています。
この原則を、心理学では行動原理と言います。
人にしても、人が以外の動物にしても、どう行動するかを決める基準は2つだけです。
快と不快。
気持ちいいか、気持ちよくないかです。
たいていの人は、空腹やのどの渇きを癒したり、好きなことに没頭したり、好きな人と一緒にいたいと思うような快感を求めますよね。
逆に、腹が減れば食べるし、のどが渇けば飲むし、退屈や疲れ、痛みなどの不快感を避けようとします。
断食とか禅寺とか、あえて不快感を求める人もいますけど、それは、その行為が終わって解放された後に快感が待っていることを知っているからです。
快・不快は大原則とも言えるもので、これ抜きにして人の行動を理解することはできません。
ですが、社会生活を送る上で、何もかも快・不快に身を委ねて生きることはできません。
関わっていく多くの人との関係性とか、社会のルールなどを守っていくために、TPOに応じた判断を必要とします。
その判断の基礎として、行動原理があるんです。
行動原理の種類
行動原理として提唱されているものは、全部で
- 利益最大の原理
- 公平性原理
- 返報性の原理
- 一貫性の原理
- 類似性の下痢
- 社会証明の原理
- 権威の原理
- 希少性の原理
ひとつずつ解説しますね。
利益最大の原理
人は誰しも、自分にとって得になることであれば、可能な限り欲しいと思うもんです。
- お金はたくさん欲しい。
- 付き合うなら美男or美女がいい、優しい人がいい。
- CoCo壱も美味しいけどたまには本場のカレーが食べたい。
中には、「人のために」と言って自ら損するような行動を取る人もいますね。
でもそれは損とは言い切れません。
そういう行動を取ることで、自己満足感とか、周りからの評価が上がるとか、結果的な得につながるんです。
一方で、自分にとって損になることは可能な限り避けようとします。
悪口を言われたくない。
無駄な買い物はしたくないとか。
このように、自分が得になることを優先的に選択しようとすることを、利益最大の原則と言います。
公平制原理
人は銃を持つことでようやく、野生動物と同等の力を持つと言います。
戦闘力たったの5のゴミですね。
にもかかわらず、人間はこの地球の支配者として生きています。
一人ひとりの力もたかが知れているというのに。
これは、大昔から人が集団で生きる生物だからです。
個ではできないことを、全の力で解決する術を持った生物なんですね。
そしていつしか集団は社会となって、先人からの知恵を受け継いでいくことで、現代に至るまでの発展を遂げてきました。
先にお話しした利益最大の原理は、この社会の中で生きていくためには、かえって邪魔になることがあるんです。
自分の利益だけを追えば、人を騙したり蹴落としたりすることもありますよね。
でもそれは社会的にアウトな行為なので、将来的には社会的地位などの利益を失うことがあります。
なので、社会とか集団の中で生きていくためには、社会的規範=ルールに従う必要があるんです。
そこで重要になるのが、公平性です。
社会というものは、それに属する人全員に対して、公平に利益が分配されるようにできています。
社会保障なんかそうですね。
条件が揃えば皆一律の保障を受けられます。
労働への対価も基本的には一律なので、働いて働いて成果を出すことで、それに見合ったリターンを得ることができます。
逆に楽ばかり追求して何もしない人には、それこそ相応のリターンしかないってことになります。
このような、社会に必要な行動原則を公平性原理と言います。
公平性を保つ事は、社会のバランスを保つということなんです。
win-winの関係ってことですね。
返報性の原理
利益最大の原理、公平性原理についてお話ししました。
自分の利益を優先したいという欲求と、公平性を考えながら行動しようという内容でした。
ですが、もし自分だけで利益を独占できたとしても、それが快感に感じることができない場合があります。
ある研究の話。
恋人同士の間で、一方的にいろんなものをプレゼントされた人が、くれた相手に対して4つの感情(幸福感、満足感、罪悪感、怒り)のうち、どれを一番強く感じるかを調査しました。
まあ恋人同士なので、幸福かな?満足かな?って思いますよね。
はい違います。
一方的に与えられたことに対して、人は罪悪感を強く感じるという結果が出たんです。
それどころか、最終的には怒りも強まってくんですって(;゜0゜)
これは、人は相手からプレゼントをもらった場合、何かお返しをしなければならないというモラル的な考えが生まれるからだと考えられています。
お返しが収集つかないくらい多くもらってしまうと、罪悪感を感じるようになるんです。
これを心理的負債と言いまして、お返しをしたいという思いを返報性の原理と言います。
すごいところだと、自分が破産してでもお返しをしようとする文化もあるらしいですよ。
一貫性の原理
「介護福祉士受けます!」
宣言したはいいものの、
という人がいたとします。
有言実行と言いますが、一度言ったら引っ込みがつかないこともありますよね。
諦めたら周りからの評価も悪くなるかもしれないし、自分としても後ろめたい。
そういう思いから、「一貫性のある行動」をとろうとする心理が働きます。
この行動を一貫性の原理と言います。
人間はおよそ、人からマイナス評価を受けることを嫌いますので、苦痛であっても勉強しようって思います。
自分を高く評価したいという心理を自己高揚欲求と言いますが、これは一貫性の原理と連動した心理欲求です。
これらも根本的には、利益最大の原理につながってくるんですね。
高い評価を得ることで得するのは自分ですから。
類似性の原理
人は、自分と意見が合う人や、同じ趣味、似た価値観を持っている人と一緒にいることで安心感や好意を抱きます。
これを類似性の原理と言います。
なぜかその心理が働くかというと、自己肯定感につながるからです。
自分と同じ意見を持ってる人がいるということは、自分の意見が正しいという証拠だと捉えます。
逆に否定されれば当然、不快ですよね。
また、価値観が一緒なら、相手の思考や行動の予測が楽にできるので、無理に合わせる必要もなくなります。
もし自分の嫌いなものを相手が好きだったとしたら、それが親しい関係であれば、自分もそれを好きになろうと努力しようとします。
自分が好きなものを相手にも好きになってもらおうとする場合もありますね。
好きな音楽をすすめて「一緒にライブ行こー!」みたいな。
そうやって2人の関係性をバランスとっていく(バランス理論)と、好きなものが一緒になるばかりか、顔つきまで似通って「似た者夫婦」とか言われるようになる場合が、本当にあるんです。
社会証明の原理
みんないいって言ってるから鬼滅の映画行こうかな・・・みたいなことありませんか?
行列につられたりとか。
人には多数の人がやっていることは正しいと思ってしまう心理があります。
これを、社会的証明の原理と言います。
社会的証明の原理は、自分で決められないとか、正解がないようなことの判断材料になります。
○×ゲームで、自分は自信を持って「○」に行ったのに、他のみんなが「×」に行ったら「あれ?違ったっけ?」って不安になりますよね。
人の影響って凄まじくて、その心理を利用したビジネス手法が「サクラ」です。
長いものには巻かれろってね。
権威の原理
これまでで、人は他人から大きく影響を受けているということがわかっていただけたかと思います。
その中でも、特に強い影響力をもっているのが、権威のある人です。
社会的権威の影響力を、社会的勢力と言います。
社会的勢力っていうのは、もちろん社会的に高い地位にいる人(大手企業の社長とか)もですが、地位が高いと想像できるような象徴を持っている人のことを指しています。
例えば、めっちゃいいスーツを着ていたり、高級車に乗っていたり、逆にドレスコードのある場にTシャツとハーフパンツとサンダルで参加してきたりとかね。
そういう、少しでも権威を感じるような人に対して、簡単に信頼を寄せてしまうものなんです。
社会的勢力の影響力には種類があり、全部で7つ挙げられます。
- 賞勢力:この人についていけばいい思いができると思わせる影響力
- 罰勢力:この人に従わないと嫌な思いをしたり損失があると思わせる影響力
- 正当勢力:社会的な立場があって、従った方がいいと思わせる影響力
- 専門勢力:専門家なら間違いないから従おうと思わせる影響力
- 参照勢力:魅力のある人に憧れて真似しようとさせる影響力
- 情報勢力:説得力のあるメッセージに心を揺さぶられる影響力
- 魅力勢力:好きな人や信頼している人から頼まれれば従おうと思わせる影響力
リーダー、カリスマ、インフルエンサーなどがこういう影響力を持ってます。
僕らも生活している中で、知らないうちに社会的勢力に行動を左右されている可能性がけっこうありますよ。
希少性の原理
希少価値という言葉は聞いたことありますか?
要はレア度です。
ゲームアプリをよくやる方は「レア」とか「Sレア」って聞き馴染んでると思います。
レア度が高いほど、数が少なくて手に入りにくいという意味で価値が付きます。
それが希少価値です。
で、希少価値を見出す心理を希少性の原理と言います。
なんかの本で、こんな話を読んだことがあります。
ある宝石店。
そこではなかなか思うように宝石が売れず、店長は悩んでたそうです。
そこで店長が、用事で留守にする際、スタッフに「価格を1/2に下げといて」と伝えました。
数日後、店長が戻ると、どう間違ったのか、スタッフは価格を2倍にしちゃっていました。
店長怒るとこなんですが、驚いたことに、2倍の価格になった宝石はほとんど売れていたんです。
ここで、宝石を買ったお客さんに働いた心理をリアクタンスと言います。
リアクタンスとは、「欲しいものを自由に買う」という思いが希少性(お高級)という壁にぶち当たった際に、「手に入りにくいと思うと余計欲しくなる」をいう欲求が生まれることを言います。
また、もともとは別に興味もなかったようなことでも、希少であることがわかると、それは価値があるものだと思うこともあります。
逆に、社会的に価値があるとされているもの(世界遺産とか)でも、「自分興味ないんで」で終わる場合もありますね。
まとめ
この記事では、職場の人間関係を円滑にするための心理テクニックを学ぶ前の基礎知識として、行動原理についてお話ししました。
行動原理の種類は7つです。
- 利益最大の原理
- 公平性原理
- 返報性の原理
- 一貫性の原理
- 類似性の下痢
- 社会証明の原理
- 権威の原理
- 希少性の原理
この8つの行動原理は、多くの人の行動を決定するものです。
ですが、個人の環境から文化まで、いろんな影響に左右される場合があるので、全ての人がこれらの原理に沿って行動しているとは限りません。
ですが、多くの人の行動を左右する心理の原則を知ることは、相手の信用を得るなど円滑なコミュニケーションをとるのに役立ちますよ。