超絶妄想!地域包括ケアシステム推進の裏側はこうだ!

認知症患者や要介護者がうなぎ上りに増えていく中、国は在宅介護を強く推進しています。
その為に構築されているのが、地域包括ケアシステムです。

地域包括ケアシステムとは

 地域包括ケアシステムとは、要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように地域内で助け合う体制のことです。地域包括ケアシステムは、それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制を目指しています。介護保険制度の枠内でだけ完結するものではなく、介護保険制度と医療保険制度の両分野から、高齢者を地域で支えていくものとなります。

地域包括ケアシステムは、戦後のベビーブーム時代に生まれた、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが、75歳以上の後期高齢者となる2025年を目途に、介護保険の保険者である市町村や都道府県などが中心となり、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築していくことが目標です。

【引用】健康長寿ネット 地域包括ケアシステムとは

要は、2025年に後期高齢者の人数がめちゃくちゃ増えるので、各地域で介護・医療の体制を整えとかないとまずいよねってことで始まった取り組みです。

地域包括ケアシステムの背景を妄想してみた

「住み慣れた地域で、自分らしく生活する」
確かにとても良いことだと思います。

介護保険制度創設以前は、措置制度と呼ばれるように、質よりもまず介護する場所の確保が優先でした。
特に認知症をとりまく歴史において、そこに介護施設の闇が散見したため、受けた批判を返上しようとしてできたのが介護保険制度です。

その制度の中で、「利用者の尊厳が第一」(利用者本位)という考えが生まれました。
これはつまり、権利擁護(アドボカシー)のことです。
権利擁護の一環として、自分の家で、住み慣れた地域で自分らしく生活しようねと言いたいわけです。

権利擁護に関して僕は激しく同意しますし、介護保険制度はなくてはならないものだと思います。

しかし、そこには当然お金の問題が付きまといます。

 

 

介護費用はえらいことに

介護保険制度は、民間保険以上に取り扱いが激ムズとされています。
要介護者の人数増加が、創設当初の見積もりと現状とで全く違ってた(めちゃくちゃ増えた)ために、必要な介護費用も比例して増え続けたわけです。

創設初年である2000年度の介護費用総額は約3兆6千億円
それが2017年度には約10兆8千億円まで増えてます。
増える事自体は予測できても、ここまでブチ上がるとは思わなかったのではないでしょうか。

採算をとるための対策の一環として、徴収する保険料も全国平均で約2倍に増えています。

他にも、令和3年8月より、減免等の救済措置が改訂されています。
少し詳細に解説しますね。

介護保険における助成制度の見直し

厚生労働省より、次のような文章が公表されています。

介護保険施設における食事・居住費高額介護サービス費の負担限度額が、令和3年8月1日から変わります。
高齢化が進む中で、必要なサービスを必要な方に提供できるようにしつつ、負担の公平性と制度の持続可能性を高める視点から一定以上の収入のある方に対して、負担能力に応じた負担を求める見直しを行います。

先に言っちゃうと、どちらも要件が厳しめになったってことです。
ここでは介護保険施設における食費・居住費の助成制度について触れますね。

申請して要件を満たせば、その人・世帯の収入に応じた減免(第1~第4段階)が受けられます。
これを介護保険負担限度額認定(以下、限度額認定)と言います。
ちなみに、第1段階は生活保護受給者であり、この見直しの対象にはなっていません。

預貯金要件の見直し

限度額認定の申請において、本人または夫婦の預貯金額が一定額を下回っていることが要件のひとつです。

預貯金要件の見直し令和3年7月までの預貯金額見直し後(令和3年8月~)の預貯金額
年金収入等80万円以下
(第2段階)
単身:1,000万円

夫婦:2,000万円

単身:650万円
夫婦:1,650万円
年金収入等80万以上
120万円以下
(第3段階①)
単身:550万円
夫婦:1,550万円
年金収入等120万円超
(第3段階②)
単身:500万円
夫婦:1,500万円

例えば第2段階・単身の方で、預貯金が700万円あったとします。
見直し前は上限が1,000万円なので限度額認定の対象になりましたが、見直し後は上限が650万円に引き下げられたため、対象にならないわけです。

僕の老健に入所中の方の家族から、「8月から減免の対象外になってしまって、料金が跳ね上がるので今後の支払いが心配だ」と言われたことがあります。
僕自身はその辺に関わってないのですが、結果としては、本人は車いすでありながらも幸い自立度が高めな方ではあったので、ケアハウスへ移り、必要最低限の介護サービスを利用することとなりました。
結果的にどっちが安いのかは微妙なところですけどね。

食費の負担限度額の見直し

食費の負担限度額の
見直し
施設入所者ショートステイ利用者
令和3年7月まで見直し後令和3年7月まで見直し後
年金収入等80万円以下
(第2段階)
390円390円390円600円
年金収入等80万以上
120万円以下
(第3段階①)
650円650円650円1,000円
年金収入等120万円超
(第3段階②)
650円1,360円650円1,300円

減免の対象になったとしても、見直しの前後で最大2倍ほどの増額です。

がっかりしている利用者家族は多いですね。

建前と本音

収入や預貯金の少ない利用者さんはたくさんいるし、お金持ちの利用者さんもまたたくさんいます。

ここで、先述した厚生労働省の公表をもう一度見てみましょう。

介護保険施設における食事・居住費と高額介護サービス費の負担限度額が、令和3年8月1日から変わります。
高齢化が進む中で、必要なサービスを必要な方に提供できるようにしつつ、負担の公平性制度の持続可能性を高める視点から一定以上の収入のある方に対して、負担能力に応じた負担を求める見直しを行います。

負担能力の有無で負担の公平性を図ることは大変重要なことです。
介護保険料は皆平等に徴収されているのに、「お金がないから必要なサービスを受けられない」ということは、あってはならない事態です。

ではなぜ、お金がないはずの第2段階の方で、ショートステイでの食費負担額を増額したのでしょうか。
居宅サービスとは言え施設系サービスだから?
だったら施設入所者も増額すべきですよね?

揚げ足をとろうとすればキリがないのでやめておきますが、いまいち狙いの見えない増額だなと感じます。

そこで、本音が見え隠れしているのが「制度の持続可能性」という言葉です。

助成をテーマに、制度の持続可能性を高めなけれなならない事態とは何か?

「このままじゃお金足りなくて持続できない」・・・ですよね。

3年ごとの介護報酬改定において、介護分野の予算については毎度財務省につつかれているみたいです。
財政管理としては当然のことだし、介護分野に限った話ではないんですけど、つつかれたらどうにかしないといけません。
また、介護保険料も上がり続けるのは国民の批判の的です。

であれば、「負担の公平性」と「制度の持続可能性」を盾に、助成する額を節約しようという考えに行きついても不思議じゃありません。

在宅介護推進の本音

地域包括ケアシステムを構築していく上での前提が、在宅介護です。
住み慣れた地域で自分らしく生活するには、やはり自分の家にいることが一番ですよね。

介護施設では、24時間介護職員が対応してくれるし、「限りなく家に近く思えるように」っていう質の高いコンセプトがあります。
ですが、どう頑張ってもやはり家ではありませんし、どんなに親切でも職員は家族にはなり得ません。
僕はそれでいいと思いますけどね。
家族になったら「サービス」っていう秩序みたいなものが崩れそう。

話がそれました。

在宅介護を推進することは、何も間違ってはいないです。
ただ、その背景を考えた時に、「地域包括ケア」というのはひどく建前的に思えちゃうんですね。

介護人材不足は何年も前からの懸念事項です。
それを解決するために、介護職員処遇改善加算など、介護職員の好待遇作戦が遂行されてきました。

2025年に向けてたくさんの介護職員を確保しなければいけませんが、必要数確保できるか心配だし、確保できてもその数を維持できるかという問題があります。

そもそも「必要数」は、「必要最低限の人数」とも解釈できますよね。

そういった懸念事項に備えるためには、介護職員以外のマンパワーに頼る他ありません。

そこで、救世主となる(?)のがインフォーマルサービスです。

インフォーマルサービスとは介護サービスではない、家族や地域住民を含めたマンパワーなどを指しています。
なおかつ、介護保険の適用外ということは、どれだけ利用しても国の予算には響かないということです。

ってことは、インフォーマルサービスが盛り上がれば盛り上がるほど、介護保険制度にある程度余裕が出るという算段がつきます。
(まあそこまで単純じゃないにしても、ある程度は。)

ケアマネの更新研修などでよく、「インフォーマルサービスをどんどん取り入れましょう」って言われたりします。
フォーマルサービスだけでは足りない部分を補うためというのが第一なんでしょうけど、地域包括ケア推進の背景を考える(妄想ですけど)と、マンパワー確保と介護費用を漸減する狙いがあるのかなって思います。
(妄想ですけど!)

 

まとめ

あくまで僕の妄想ですので真偽のほどはわかりませんが、背景にそういう心理は多少なり、絶対あったと思います。

2025年問題に向けて国から市町村まで躍起になっているとは思いますが、その背景と、さらにその先のことを思うと、介護従事者としての将来に漠然とした不安があります。

僕は介護が好きなので、このまま関わり続けるとは思います
そのためには、介護業界においてのアイデンティティを確立しなければいけないのかもしれません。