認知症は心の病?新たな視点で考えると認知症治療の常識が変わる

認知症は脳の病気?

認知症は一般的に「脳の病気」と言われています。

確かに、脳に異常が起こって発症するものなので、脳の病気と思われてもなんら不思議はありません。
ですが、これは少し間違っていると思ってください。

認知症は、うつ病や統合失調症などと同じ精神疾患、つまり「心の病気」だという側面もあるんです。

統合失調症が精神、つまり心の病気であることは、今や多くの人が知っています。
しかし、20世紀前半頃は統合失調症は分裂病と呼ばれ、脳の病気であると考えられていました。

そもそも明治時代では、今で言うところの精神病院は「脳病院」という名称でした。

幻覚や妄想が起こるのは脳に異常があるためであると考え、当時は精神病患者に対して脳手術や電気ショックを与える治療を行っていました。

当然、それで症状が治ることはありません。

これ、現在の認知症治療に似ていると思いませんか?

日本において、今もなお認知症治療のメインは投薬。
その効果はほとんど実感できず、むしろ気づかないうちに症状を悪化させています。

それは、認知症を「脳の病気」としてしか見ていないからです。

認知症の原因はいろんな要素が絡み合っています。

正確には
「原因のひとつに脳の病気がある」
あるいは、
「何らかの原因で脳の病気が起きている」
と考えなければいけません。

つまり、脳の病気が原因ではなく、他の要因が脳の機能低下を誘発している可能性があるということ。

内臓、筋、そして心と複雑に絡み合って、認知症の症状が現れるのです。

だから、認知症は脳の病気ではなく、心の病気という側面も持っているのです。

おまけ話

かつて、精神疾患は脳の病気だと思われていました。

病気の話とは少し外れますが、「腹を割って話す」という言葉をご存知でしょいか?

「ウソ偽りなく本音で話す」という意味ですが、なぜ腹を割らなければいけないのか?

切腹が頭をよぎるかもしれせんが、それは全く関係ありません。

精神疾患の見方と同じように、かつて「人が物事を考えるのは、頭ではではなく腹である」と考えられていました。

「悪だくみをしている」などを意味する言葉に「腹黒い」がありますが、これも同じ由来。

つまり、本音で話し合うには、腹の中を見せ合わなければならないという意味で、「腹を割って話す」という言葉が生まれました。

今でこそ、脳が思考を司っていることがわかっていますが、そういう思い違いは認知症にも当てはまるんです。

ちなみに、英語で「腹を割った話し合い」を意味する言葉は
Heart to heart talk (ハート トゥ ハート トーク)
というそう。

英語では「心と心の話し合い」。
歌の詩を見てもそうですが、「察する」ことを前提にした言葉遊びのような日本語に対し、英語は直球的、感情的な表現ですね。