認知症と統合失調症それぞれの被害妄想とその思考パターン

認知症状において、介護者の大きな悩みの一つである「妄想」。

代表的なもので言うと、

  • 物盗られ妄想
  • 思い込み

ですね。

どちらも被害妄想の一種と言えます。

財布を盗られたとか、あの人に悪口を言われたとか。

 

そして被害妄想は、妄想の一種です。
妄想にも色々種類があるのはご存知ですよね。

この記事では、妄想の原因と特徴についてお話ししたいと思います。

 

妄想が原因で起こる症状

妄想が原因で起こる症状には意外なものがあります。

先にお話しした通り、妄想は被害妄想の一種です。

厳密に言うと、妄想によって被害的な思考が引き起こされるんです。

思い込みとか、急に怒ったり、意味不明な言動を起こすのも、妄想によるものです。

 

病的な妄想ってのは、いわば究極の勘違いです。

 

徘徊というと、短期記憶が障害されて、出かけたはいいものの、その目的や道などを忘れてしまって彷徨うって感じのイメージですよね。

そういうケースももちろんあるでしょう。

では、毎日のように徘徊に出てしまう人がいるとしたら、それはなぜだと思いますか?
そう毎日、出かける理由があるでしょうか?

記憶障害であるにしても、説明がつきませんよね。

 

実はこれも、妄想が原因です。

実際のケースで、それはもう毎日出歩いては警察などのご厄介になる方がいました。

その方はお金に関する妄想があり、毎日、郵便局へ行っては「俺の通帳に○○万円入ってるはずだ!」と叫んでいました。

帰りは結局自分で帰ってこれないので、僕は徘徊に分類しています。

その原因は、ないはずのお金を受け取ろうと思って、彼は郵便局へ向かったことです。

 

なぜ妄想のような思考が起こるのか

妄想がある人の思考状態は特殊です。

 

通常、人はいろんな情報を頭の中で順序よく組み立て、整理して、リアリティを持たせた思考を通して発言や行動にうつします。

その情報は、時には自分の経験則からの予測が代替えすることもあります。

 

妄想がある人は、この情報の組み立てがうまくできないんです。

 

Case1:お風呂に入る時

お風呂に入るときは、服を洗濯カゴなどに脱ぎ入れて、お風呂に入りますね。
お風呂から上がったら、体を拭いて新しい服を着ます

はいここ!
新しい服

実は、新しい服ではなく、お風呂に入る前に脱いだ服でした。

 

これも実際にあったケースです。

短期記憶障害も手伝ったかもしれませんが、お風呂から上がって、目についた服を着替えだと判断して、着てしまいました。

通常なら、キレイにたたまれた服でなければ着替えだとは思いませんよね。

 

この時に得られる情報を細かく挙げれば、

  1. 服が置いてある
  2. たたまれていない or 脱ぎ散らかっている
  3. こっちはさっき脱いだ服だ
  4. あ、たたまれている服がある
  5. こっちが着替えだ
  6. これを着よう

通常はこれを無意識に一瞬で判断し、行動にうつします。

これが妄想のある人だと、

  1. 服が置いてある
  2. これを着よう

はい行動。

判断が異常に早い。
言ってしまえば、病的な早とちりです。

 

Case2:財布を盗まれた

物盗られ妄想によくある、「財布を盗まれた」に置き換えてみます。

通常なら、

  1. 財布が見当たらない
  2. 棚に閉まったかな?(探す)
  3. 車に置きっぱかな?(探す)
  4. あれ?バッグにもないな
  5. 家に帰るまではあったはず・・・
  6. 泥棒!?

だとします。

これが、

  1. 財布が見当たらない
  2. 泥棒!?

ということになります。

探してみる工程がはなっから頭にないので、介護者が一緒に探して見つかると「あ、良かった良かった」で終わるんです。

もはや勘違いをしていたことすら無かったことにしてね。

 

結論が飛躍する理由

つまり妄想がある人は、少ない情報からすぐ結論に飛躍するんです。

なおかつ、その判断に強い確信を持ちます
根拠がなくともね。

そういう妄想をしてしまう人の特徴について説明しますね。

せっかちさん

通常でも、慌てる状況にあれば、冷静な判断はできません。

例えば、間違いや思い込みを指摘されたりしても、気が動転してしまい、理解できず、聞くことをやめてしまいます。

せっかちな人は、少ない情報から結論を導き出そうとします。
妄想のある人と同じです。

転じて、妄想のある人はせっかちで落ち着きがない状態であると言えます。

 

妄想と現実の狭間で

妄想のある人は、実際に体験した出来事と、想像したり思考した内容ですとか、自分と他者を区別する能力に乏しい傾向にあります。

つまり、妄想したことが現実のことと認識してしまう可能性があるわけです。

先にお話しした、郵便局で大騒ぎする利用者さんは、「ないはずのお金があるはず」と訴えていますが、それも、妄想(お金がある)が現実(郵貯に入ってるはず)の境目がないことによるものです。

ちなみにこの利用者さん、

東京に行ってコロナを倒してきたから、国から300万円もらえる

とこないだおっしゃってました。

国どころか、トランプとバイデンが揃って胴上げしに来てくれますよきっと(゚∀゚)

 

これに加えてネガティブな思考傾向がある場合、

「あいつ俺のことバカにした」→倍返しだ

みたいなことを考えることがあります。

ご近所トラブルの原因が、ちょっとした思い違いから始まるケースってのも少なくないんですよね。

 

認知症と統合失調症での妄想の違い

認知症でも、統合失調症でも、代表的な症状の一つとして妄想があります。

一口に妄想と言っても、いろいろ種類があるってことは最初にお話ししましたよね。

認知症と統合失調症とでも、妄想に違いがありますので、簡単に解説します。

認知症による妄想

認知症による妄想は、現実的です。

実際はないのに「郵貯にお金が入ってる」と言うと、事情を知ってる家族さんとか、調べれたすぐわかる郵便局職員からすれば、おかしいことを言ってるのはすぐわかります。

でも、実際はないことを知らない他人が「郵貯にお金が入ってるんだ」と言われたら、「あ、そうですか」と納得して、あとは気に止めたりしないですよね?

認知症による妄想は、事情を知らない人が聞けば事実であると思ってしまうような、現実的な妄想なんです。

 

統合失調症による妄想

対して、統合失調症による妄想は、非現実的です。

「電磁波で攻撃を受けている」という方が利用者さんにいらっしゃいました。

電磁波で人に攻撃ができるかどうかは存じませんが、少なくとも、そう言われたら「んなアホな」って思いますよね。

統合失調症による妄想は、誰が聞いてもおかしいと思うような、非現実的な妄想なんです。

 

地動説を唱えて異端児扱いされたガリレオ・ガリレイは、現代なら「ガリレオのやつ統合失調症なんじゃねえの?」と思われてたかもしれませんね。

 

ちなみに、郵貯の利用者さんの「コロナを倒してきた」。

僕らからすれば非現実的ではあるんですけども、どうやらこの方、コロナをテロ集団かなんかだと思い込んでる節がありました(´∀`; )

認知症状による理解力不足からくる思い込みと考えられますので、この場合、必ずしも非現実的とは限りません。

屁理屈くさいですけど・・・