自宅でできる簡易検査
若年認知症で有名な宮永和夫先生が作成した、前頭側頭型認知症のチェックリストがあります。
①状況に合わない行動をとる
②意欲減退
③無関心
④逸脱行動
⑤時刻表的行動
⑥食べ物へのこだわり
⑦常同行動・反響言語
⑧嗜好の変化
⑨発語障害・意味障害
⑩記憶力や見当識は保たれている
40代~70代で3項目以上該当したら要注意。
前頭側頭型認知症の可能性があるので、早めに受診した方がいいですよ。
これらは実際に前頭側頭型認知症に現れる症状群で、アルツハイマー型認知症などとの鑑別方法のひとつとして簡易的に検査するリストになっています。
少し難しい単語も交じっているので、ひとつずつ解説していきますね。
①状況に合わない行動をとる
状況に合わない行動とは、身勝手な行動、状況に不適切な悪ふざけや、空気を読めない言動を指します。
主に前頭葉の機能低下によって起こりやすい症状です。
②意欲減退
意欲減退とは、引きこもり、何もしないなど、意欲がなくなっていくことを言います。
とにかくずっと寝ているといったことがある。
また起こそうとしても拒否して全然動こうとしない場合、この意欲減退の症状かもしれません。
③無関心
無関心とは、服装や衛生状態に無関心で不潔になってしまうとか、周囲の出来事に無関心になるといったことです。
入浴拒否が強いようなら、清潔への無関心である可能性が高いですね。
④逸脱行為
逸脱行動とは、万引きをしたり、悪いことをしても反省しないといったこと。
反社会的行動とも言います。
⑤時刻表的行動
時刻表的行動とは、同じ場所に同じ時間に行くなどの決まった行動。
これを周りに止められると烈火のごとく逆上する。
⑥食べ物へのこだわり
食べ物へのこだわりとは、毎日同じものを食べる、菓子パンなら菓子パンだけ食べるといったこと。
口の中にたくさん食べ物をため込んだり早食い傾向も。
⑦常同行動・反響言語
常同行動・反響言語とは、同じ言葉を繰り返したり、他人の言葉をオウム返しにする、体をゆすったり手を叩くなどの行為を繰り返すなどのこと。
ストレスや不安を感じた時に起こりやすく、貧乏ゆすりに似ている。
これは制止をしても一時的にやめるだけで効果がない。
⑧嗜好の変化
嗜好の変化とは、突然食べ物の好みが変わること。
特に甘いものをたくさん食べるようになったり、味の濃いものを好むようになったりする。
⑨発語障害・意味障害
発語障害・意味障害とは、無口になったり、言葉の意味や、はさみやメガネなどを見せても使い方が分からなくなるということ。
意味性認知症の症状と同じ。
⑩記憶力と見当識は保たれている
記憶力は、文字通り直前~昔のことを覚えているか。
見当識は、時間や場所、人の顔を認識する機能。
前頭側頭型認知症の場合、これらの機能が失われていないという特徴がある。
ただ、近々のことは覚えていても、逆に過去のことは忘れることが多く、特に意味性認知症の場合その傾向が強い。
前頭側頭型認知症の特徴
前頭側頭型認知症の特徴をもう少し深堀してみましょう。
わかりやすい違いは、徘徊。
アルツハイマー型認知症は道に迷うけど、前頭側頭型認知症では迷いません。
なので、何らかの認知症状がありつつも、道に迷うことなく帰ってこれるのであれば、アルツハイマー型認知症の可能性は少ないと思っていいですね。
また意味性認知症の人は、話をしている最中に笑うことが多い。
笑いながらごまかして、話を違う方向へ逸らしていく傾向があります。
さらに、横柄な態度をとりやすいです。
例えば、病院の診察室にガムを噛みながら入ってくるなど、社会的なマナーがないという感じ。
年齢別に簡易検査した場合
チェックリストの3つ以上該当したのが高齢者の場合は、前頭側頭型認知症の可能性が高いです。
若い人の場合はアスペルガー症候群という発達障害の可能性があります。
これらは別物として扱われますが、症状に関して共通点が多い。
ちなみに、何度か出てきた「意味性認知症」とは、言葉の意味が理解できないなど、側頭葉の症状がメイン。
前頭側頭型認知症では前頭葉の萎縮が顕著である場合が多いので、そこで鑑別されます。
このチェックリストは、該当する項目が多いからと言って、前頭側頭型認知症やアスペルガー症候群が確定というわけではありません。
あくまで「疑い」です。
とはいえ、今後の治療を左右する可能性があります。
すでにアルツハイマー型認知症の診断を受けていても、合併症として現れたり、病状が変化することがあります。
一度診断を受けたらその治療だけしていればいいわけではないので、定期的にチェックしてみるといいですよ。