看取りから元気に自宅に退院したおばあさんの話

看取りになった女性Aさん

Aさんは86歳で、アルツハイマー型認知症の診断を受け要介護度は2。
同居家族の介護を受けつつ、介護サービスを利用することで自宅でなんとか生活できていた方です。

アリセプトの処方を受けていて、効果があるかと言われればあまり実感はなかったものの、なんとなく服用を続けていたそうです。

ある日、食欲不振に陥り、食べてもむせ込みや誤嚥が増え、やがて寝たきりになりました。

医師からは胃瘻か看取りを迫られました。

看取りとは、延命治療は行わずに自然に近い形で最期まで見守ること。
そのために行う支援を「看取りケア」「終末期ケア」と言います。

Aさんの場合、

  • 胃瘻で延命を試みる

  • お腹に穴を開けるのを避けて自然な形で最期を迎える

という選択を、医師からご家族に伺います。
介護施設であれば、医師に代わり施設職員からご家族に意向を確認することもあります。

「アリセプト、やめてみませんか?」

医師からの意向確認に、ご家族は無理な延命を望まず、自然な流れでの看取りを選択しました。

続いて、看取りケアを行っていくため、病院内ではカンファレンス(今後のケア方法を検討する会議)が開かれた時、ある職員がこう言いました。

「アリセプトの服用、やめてみませんか?」

その職員は、何か根拠があってこのように発言したわけではありません。
最期を見越して、「不要な薬を減らしてあげよう」という思いからの発言だったのです。

医師の承諾を得てアリセプトを中止。

最低限必要な薬だけ残して、可能な限り自然に近い形で看取りを迎えられるよう、準備をしました。

アリセプトをやめて起こった変化

ところが、アリセプトをやめてからほどなく、ある変化が起こりました。

Aさんの食欲が回復し、むせなどの嚥下障害も改善していったのです。

栄養を十分にとれるようになり、寝たきりだったにも関わらず、歩行リハビリではふらつきもほぼないまでに快復。

その後、数か月の治療・リハビリの経て、自宅へ元気に帰っていきました。

アリセプトの服用に慎重になるべき理由

認知症薬の中で最も処方されているアリセプトの効能について、気を付けてほしいことがあります。

アリセプトはアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症患者に対して処方されます。
レビー小体型認知症にはパーキンソン症状があり(必ず出るとは限らないけど)、歩行障害が起こる可能性があります。

アリセプトの副作用を見てみると

  • 緩慢な動作

  • 口、舌、手足の不随意運動(勝手に小刻みに動くなど)

  • 筋肉の異常な収縮

  • 手足のふるえ

といった錐体外路障害(すいたいがいろしょうがい)と呼ばれる、パーキンソン症状を誘発・悪化する可能性があると書いてあります。

あくまでアリセプトは、アルツハイマー型・レビー小体型の「認知症状」を抑えるもの。
その認知症状の分類は何を調べても大変あいまいなのですが、それぞれに現れる認知症状以外の、興奮や幻視などの精神症状、歩行障害や行動障害においての有効性はないとされています。

アリセプトには他にも食欲不振の副作用も確認されていて、かつパーキンソン症状は嚥下機能に影響する場合もあるので、Aさんが看取りに至るまでの原因はアリセプトにあった可能性が高いんです。

薬を全てやめろ!という話ではないのですが、アリセプトって、認知症薬って、いったいなんなのかなと、疑いたくなります。

処方された薬を、効果がなくても漫然と服用を続けてはいけません。
病院側の規定にもあることなので、少しでも不安要素が出てきたら、すぐ医師に相談してほしいです。