意外と知らない方も多いので、 アルツハイマー病の段階別症状について解説します。
【初期の症状】
・直前のことを覚えられない (短期記憶障害)
・何度も同じことを言う、聞く(理解力低下)
・財布などを閉まった場所が分からなくなり周りの人が盗んだと思い込む (記憶障害または注意障害、物盗られ妄想)
・取り繕おうとして作り話をする(作話)
・趣味や日課に興味を失い何もしなくなる(意欲低下)
・うつ状態
これらの中でも、物盗られ妄想やうつ状態は介護者を特に困らせがちな症状です。
それでもアルツハイマー病においては比較的初期に現れることが多いです。
財布をなくすのを注意障害としたのは、「タンスにしまった」という事自体を忘れる記憶障害の他、しまった後にテレビなど他のことに気をとられ、「財布をタンスにしまった」という事に注意が回らなくなるためです。
何度も同じことを聞いてくるのは、短期記憶障害が原因であることもなくはないのですが、短期記憶障害であれば【聞きたいこと】自体忘れてしまうので、何度も聞いてくるパターンにはなりにくいんです。
比較的、「言われたことを理解できなくて覚えられない」ことが原因である場合が多いので、理解力の低下による症状と言えます。
【中期の症状】
・時間⇒場所⇒人の順にわからなくなる (見当識障害)
・徘徊する(記憶障害または見当識障害など)
・家事の手順がわからなくなる(実行機能障害など)
・言葉がうまく使えなくなる(失語)
・食事やお風呂などが一人でうまくできなくなる(失行、失認)
・失禁や便いじりをし始める(見当識障害、実行機能障害、失認など)
このあたりから症状が複雑化していきます。
見当識障害について深堀りすると、
・時間
→令和〇年何月何日か、今は朝か昼か、どの季節かがわからなくなる。
・場所
→今自分がいる場所(病院・施設など)、建物の何階にいるかなどがわからなくなる。自宅はわかっていることが多いが、進行すればわからなくなる。
・人
→テレビで見る有名人や、会う機会の少ない親戚や知人などからわからなくなる。家族の顔が分からなくなるのは後期の症状。
なぜ見当識障害が失禁につながるかというと、単純に「トイレがどこかわからなくなる」ために間に合わず失禁することがひとつです。
トイレについても、実行機能障害により「排泄をするための動作(ズボンを脱ぐ、便座に座るなど)ができない」ために、やはり間に合わず失禁してしまいます。
失認とは、見た物がどういうものなのかわからなくなる症状で、トイレをトイレと理解できない、ゴミ箱を見てトイレと思い込むなどで失禁につながったり、便失禁して気持ち悪いんだけど、便が便だとわからず「なんだこりゃ」と便を取り除こうとしてしまう状態です。
【後期の症状】
・家族の顔がわからなくなる
・無表情、無反応
・会話がほとんどできなくなる
・失禁が日常的になる
・寝たきりになる
・食事への関心を失う
後期になると、新しい症状が表出するというよりは、初期・中期の症状が悪化するという感じです。
わずかな「まさか」が認知症の始まり
症状は必ずしも順番通りじゃない
全ての人に全ての症状が出るわけではないし、必ずしもこの初期→中期→後期の順番とは限らないことだけ覚えておいてください。
例えば中期まで進んだところで初期の症状が新しく現れる場合もあります。
あるいは、初期症状が気付きにくいほど軽微で、中~後期の症状の一部が強く出ている場合があるかもしれません。
中~後期になってからようやく病院を受診する人も少なくありませ。
「初期症状が出た時点で末期」とも言います。
少しでも「まさか…」と感じたら、電話でもいいから一度専門機関に相談してはいかがでしょう?
「まさか」の時の相談先一覧
①地域包括支援センター
主任介護支援専門員(ケアマネジャーの上位資格取得者)・社会福祉士・保健師で構成された機関。
つまり介護福祉のスペシャリストが在籍するところです。
各市区町村に最低でも1か所は設置されているはず。
認知症介護をしている家族が集まり、専門家を交えて情報交換、相互理解を図る「認知症カフェ」についての情報ももらえます。
②かかりつけ医や地域の精神病院
内科など主治医に相談すると、診断は出せませんが認知症の疑いがあると判断されれば、精神病院など認知症診断ができる医療機関を紹介してくれると思います。
認知症学会が認定した専門医もいるので、探してみてください。
日本認知症学会認定専門医
また、認知症疾患医療センターという専門機関もあるので、電話からでも聞いてみてはいかがでしょうか。
認知症疾患医療センター
③認知症の人と家族の会
公共社団法人「認知症の人と家族の会」という団体があり、研修を受けた介護経験者が、介護の愚痴や相談を聞いてくれます。
全国にある「もの忘れ外来」の一覧も検索できます。
認知症に関する電話相談