前頭側頭型認知症による食行動障害(摂食・嚥下障害)への対応

前頭側頭型認知症による食行動障害への、実際の対応についてお話します。

 

同じような行動を繰り返す人への対応

前頭側頭型認知症の症状として、食習慣の変化があります。

どのような食習慣の変化があるかを観察し、行動パターンを把握することは、支援の方法の方向性が見えてきます。

具体的には、例えば

  • 毎日同じものを買ってきて、毎日同じ時間に食べている。
    それを止めると暴力的になる。
  • 冷蔵庫を開けたらプリンばっかり大量に出てきた。
  • 無茶な早食いをする。
  • スーパーなどで目についた食べ物を手に取って、会計前に食べてしまう。

など、脱抑制の影響も出現します。
反社会的な行動ともとれるので、社会生活を送ることが難しくなります。
目についたものを食べちゃうことは、窒息のリスクにもつながります。

前頭側頭型認知症による常同行動・習慣性行動では、行動ルートや行動範囲が決まっているケースが多いです。

あらかじめ行動範囲の中にある店などに事情を説明して協力を依頼し、本人にも大金を持たせないなどの対応をしましょう。

店への協力依頼に踏み出せない時は、地域包括支援センターに相談してみましょう。
それくらいなら代行してくれると思いますんで。

脱抑制とは、ある刺激に対して、衝動や感情が抑えられなくなる状態です。
前頭葉の損傷・障害によって出現することがあります。
キレやすいとか、落ち込みやすいの延長みたいなものですかね。
作業療法によるアプローチを試みるのであれば、前頭葉の障害へのケアとして、手続き記憶や知覚・運動機能・視空間など、脳の後方部の機能が保たれていることが利用できます。
作業に集中できるよう、雑音や刺激のない環境から始めていくと効果的なようです。

目についた食べ物を食べてしまう人への対応

食事の際は過食、早食い、詰め込みがないか、隣の人の食事に手を出さないかを確認します。

他に食事中なのに立ち上がったりしないか、どんなものに気を取られるかという行動にも注意します。

具体的には、

  • 「いただきます」を待たず、配膳されたとたんに食べ始める
  • 飲み込まないまま、スプーンに山盛りの食べ物を自分で口に詰め込む
  • 残った食べ物や他人の食べ物をとって食べてしまう
  • スプーンを使えるのに手で食べてしまう

などです。

対人トラブルを生まないために

お察しかと思いますが、こういう方は他の利用者さんとの不和を生んでしまいます。
なので、施設によっては前頭側頭型認知症患者専用のスペースを作るところもあるようです。

他の利用者さんの食べ物に手を出さないための対策として、野菜などヘルシーな食べ物をテーブルに置いておくなどして、いつでもつまみ食いしていいようにしておくという方法もあります。
あおいさんがいのすけに似たことをしてましたね。

時には安全を優先

前頭側頭型認知症の方への食事ケアにおいては、時には安全を優先しなければならない場合があります。

食べ物を勢いよく詰め込んでいけば窒息のリスクがあるので、小皿に分ける一品ずつ出すなどの工夫が必要です。

自力摂取可能でも、時には食形態のレベルを下げて提供する事も検討しなければなりません。
食形態のレベルを下げることで、食べるスピードを抑えるためです。

ただ、数か月後には食べるスピードが低下して、問題が解消したケースもあるので、定期的にアセスメントはしておいた方がいいですね。

異食

食事以外の時間では、食べ物じゃないものや、生肉など調理前の食材を口に入れるなどの行動が起こり得ます。

「石鹸食べちゃった!」ってこととか、割とあるあるだと思います。

つまみ食いの要領でそれをすることもあれば、アセスメント等をしようとしてて書類なんかを置いてて、それが目に付くとさっと取って口に入れてしまったりします。
目の前で突然やられるとなかなか焦りますので、手の届くところのものは何でも口に入れる可能性を想定しておきましょう。

飲まずに噛み続ける・ため込んでしまう人への対応

自発性の低下

前頭側頭型認知症が進行すると、自発性の低下に加えて動かずボーっとする時間が増えます。

自発性の低下によって、飲まずにずっと噛み続けるようになります。
飲み込みを促さないと半日でも噛み続ける場合もあるそうです。

とはいえ、無理に口や喉に触れたり、大声で声掛けすると興奮や抵抗される可能性があります。

ここで活用するのが、症状の1つでもある被影響性の亢進です。

被影響性の亢進により、自然な感じで水が入ったコップを口元に持っていくと、水を飲もうとする行為が促されて、同時に食べ物も飲み込んでくれるというケースがあります。

被影響性の亢進とは、外部からの刺激に対して反射的に反応してしまい、状況に流されやすくなったり、模倣的な行動をとったりする症状です。

歯があっても噛めてない?

症状の1つに無動があります。
文字通り動かなくなるということですが、これが咀嚼運動にも影響します。

ちゃんと自分の歯があるのに、歯で咀嚼せず、舌と上あごで押しつぶして食べていることがあるんです。

窒息のリスクが高くなるので、こういうケースにはペースト食の方が適切な場合があります。

まとめ

今回の内容では、主に窒息のリスクなどをあげていましたが、窒息と誤嚥は並行して起こり得ることも念頭に置いててください。

食事が終わっても口腔内に食べ物のかけらが残っている可能性があるので、食後の水分(お茶ゼリーなども良いです)、臥床前の口腔ケアは必須です。

施設なんかは忙しくてどこか省略したくもなりますが、省略した結果窒息・誤嚥が起こってしまうと、責任が自分に押し寄せてくることを、覚えておいてください・・・(いや脅迫ではないです(^^;