認知症の種類
認知症には
「アルツハイマー型」
「脳血管性」
など、種類があります。
「認知症になったかも」と思い精神科を受診すれば、必ずではないにせよ「〇〇型」など分類がついた認知症診断を受けると思います。
しかし実のところ「アルツハイマー型」などの分類は介護の現場において何ら意味をなしません。
介護サービスを利用する際は既往歴(これまでにかかった病気)を把握する必要があるし、場合によっては脳外科手術などを要することもあるので、診断を受けることは必要です。
ただ、実際に介護する時に
「アルツハイマー型だから、こういう風に対応しよう!」
と考えられることはありません。
どの介護サービス事業所でも、
「この症状があるから、対応は〇〇にしよう」
と決めているはずです。
つまり、認知症介護で一番重要なのは、診断名ではなく症状を見ること。
その人の異常とされる行動が
・いつ
・どこで
・どのように起きているか
を観察しなければならない。
医学博士である竹内孝仁氏は、認知症を次の6つに分類しています。
①身体不調型
②環境不適応型
③認知障害型
④葛藤型
⑤遊離型
⑥回帰型
ひとつずつ解説していきますね。
①身体不調型
認知症の中で最も多いのがこの身体不調型。
落ち着きなく歩き回る
大声を出す
意味の分からないことを口走る
といった行動が見られた場合、この身体不調型である可能性が高いです。
落ち着かなくて、夜中にゴソゴソ探し物をしたり不穏になったりすることが多いです。
また、普段はぼんやりしているのに、不快な事があると急に怒鳴ったり暴れたりします。
このような方は体調不良や便秘が原因であることが多いので、健康管理によって改善する場合がほとんどです。
②環境不適応型
環境不適応型は、見慣れない物や人、場所に馴染めず、何でも拒否してしまうような特徴があります。
デイサービスに行きたがらない
ヘルパーを泥棒呼ばわりするなどして来訪を拒む
こんなことを経験される方も少なくないと思います。
慣れれば落ち着くので、デイサービスに行ってしまえば楽しんで帰ってくることが多いですね。
③認知障害型
①や②では説明できないような、認知機能の低下でのみ現れるのが認知障害型。
住み慣れた家の中なのに、自分の部屋やトイレの場所がわからなくなった
散歩に出れば帰ってこれなくなった
といった症状が見られます。
低下した認知機能は回復が容易ではないので諦められがちですが、状態に合ったトレーニングをすることで改善する可能性があります。
④葛藤型
相手の強い言葉に対して大声をあげたり乱暴したりする
異食(食べ物でないものを食べる)や物集めをする
こういった人が葛藤型です。
これは、自分の置かれている状況に混乱したり孤独感を感じるために起こります。
周りは抑圧的なことを言わないように気を付け、人と交流したり、いろんなことを体験するなどして気持ちを外に向けることで改善することがあります。
⑤遊離型
一日中ぼんやりしている場合、遊離型の可能性があります。
物事に対して無関心、無感動
表情の変化に乏しい
自発的に動くことが少ない
食べ物を口に入れても咀嚼(噛む)や嚥下(飲み込む)動作をしない
こういう症状が見られます。
この症状の出方は燃え尽き症候群と少し似ているかも。
本人に役割ややりがいを与えることで改善していく可能性があります。
⑥回帰型
自分が置かれている状況に混乱し、仕事で活躍していたり、子供と幸せな時を過ごしていた頃など、自分が最も輝いていた時代に戻ってしまうタイプを回帰型と言います。
このタイプを見ることは実は稀ではありますが、回帰している状況を否定するよりも、調子を合わせてあげた方がかえって不安から解消され、現実に戻ってくる場合が多いです。
最後に
認知症介護に携わった人は、①~⑥のいずれかを目の当たりにしているはず。
これらの症状を見て、どんなケアが必要かを見極めれば認知症は改善できる可能性があります。
一番大事なのは、症状を知り、認知症の人への共感力を養うこと。
これは、ただ「アルツハイマー型認知症です」と診断名を聞いただけではそうできることではない。
繰り返しますが、診断を受けることは必要。
でも介護をする上で重要なのは、「何の診断を受けたか」以上に、実際に「どんな症状に困っているか」にあることを理解してほしいと思います。