介護ニーズ(=課題)はデマンドやウォンツと区別しなければならない

介護の仕事していると必ず出てくる「ニーズ」。

一般的に介護ニーズと呼ばれるもので、要介護状態などのお年寄りが生活を続けるために、解決が必要な問題点って感じの意味です。

 
本人や家族が「こうしてほしい」って要望を聞けばいいんだよね?
 
コンペイ
要望はもちろん聞くけど、ニーズは「課題」であって、「願望」じゃないってことに気を付けないといけませんよ。
 
課題?願望?どゆこと?
 
コンペイ
課題と願望の違いは、多くの介護職員さんが勘違いしがちなことなので、簡単にお話ししますね。
 

介護ニーズとは

「ニーズ」とは、直訳すれば「必要・必要なもの」や「要求」辺りが一般的ですが、「窮乏」「貧困」などの意味も持っています。

「介護ニーズ」になると、生活上の困りごとや本人・家族さんが「助けてほしい」と思っているものと、それを踏まえて介護する側(ケアマネ含む)が「援助が必要だ」と判断した問題点を掛け合わせたものです。

言い換えれば、「これを補えば、支障なく生活を続けられると判断できるもの」を、介護ニーズと言います。

なので、本人や家族さんの要望だけ汲み取ってサービスを行うというものではないんです。

これを言い換えると、ニーズとは生活上の「課題」ということになります。

 

デマンド・ウォンツとは

デマンドを直訳すると、「こうしてほしい」などの需要・要求を指します。

 

ウォンツとは、「あれが欲しい・叶ってほしい」などの要望のことです。

 

微妙に違うニュアンスではありますが、おおむね同じものと思ってもらって大丈夫です。

これらを総じて願望と言えます。

定義の仕方はいろいろありますが、介護分野においては、こう区別しといてオッケー☆⌒d(´∀`)ノ

 

介護ニーズとデマンド・ウォンツの違い

在宅でよくあるケース

家族さんが、「お風呂に入れてほしいのでデイサービスを利用したい」と言ったとします。

介護ニーズに該当する場合

デイサービスでお風呂に入れてほしい理由が、

  • 身体または認知機能が低下していて、入浴に介助が必要な状態
    ※一人暮らし、または同居者はいるが介護力不足、ネグレクトなどを含む
  • 介助は必要ないまでも、自宅の浴室では転倒する可能性がある
  • お風呂が壊れている

など、どうしても家で入浴するのは難しいと判断された上でのデイサービス希望であれば、介護ニーズに含まれます。

ちなみに訪問介護や訪問入浴介護を利用すれば、プロの介護によって自宅での入浴も可能かもしれませんが、

  • 一般浴(おうちのお風呂)がそもそも困難な場合
  • 家族以外との交流支援や機能訓練などが必要な場合

といった追加要素があれば、デイサービス(デイケアでも)を利用する理由としては十分です。

デマンド・ウォンツに該当する場合

デイサービスでお風呂に入れてほしい理由が、

  • 機能的には入れるが、家での介助が面倒
  • デイサービスに行くついでに入ってくるといい
    ※知人もデイサービスに行ってるから、一緒に行くついでに・・・など
  • せっかく介護保険料を払ってるんだから、介護サービスで入った方が得

などであれば、別にデイサービスを利用しなくても解決できるような状況と判断できるので、デマンド・ウォンツに該当します。

 

施設でよくあるケース

ちょっとよくない例ですが、トイレ介助か、おむつにしてベッド上で交換するか検討した結果、トイレ介助を断念したとしましょう。

介護ニーズに該当する場合

トイレ介助を断念した理由が、

  • 麻痺などの関係で、まったく立位・座位がとれない
  • 疾病などの関係で、ベッドから離れるのが困難

など、トイレに座りたくても座れない状況にある場合、一時的にでも、トイレ介助を断念せざるを得ません。

これは介護ニーズに該当することになります。

デマンド・ウォンツに該当する場合

トイレ介助を断念した理由が、

  • 介護職員の人手が足りない
  • トイレ介助に拒否があって、暴力行為がある

などの場合はデマンド・ウォンツに該当します。

これは、本人の要望と関係なく、介護する側の都合で断念しようという場合を指します。

 

介護以外の例

東日本大震災があった後、被災地では全国・世界から非常にたくさんの支援を頂きました。

 
コンペイ
僕個人は、市の被害状況の割には被害がほとんどなかったんですが、あの時ほど、人間っていいなと思ったことはありません。本当にありがとうございました。

そんな中、どこかの支援団体さんから「なにか必要なものはありますか?」と、避難者に聞き取りが行われたことがありました。

当時特に必要とされていたのは、

  • 乾電池
  • 粉ミルク
  • 子ども用・大人用おむつ

など、被災によって手に入りにくくなった生活必需品です。
食料・飲料水なんかも含まれます。

これはニーズですね。

 

ですが、中にはこんな要求もあったそうです。

  • パソコン
  • ゲーム機
  • スマホ

いや、わかるよ?
欲しいよ!?

スマホもこの頃から普及し出したしね。

でも、これらは生活を潤すものであって、なくても生きていけるものです。
つまりはデマンド・ウォンツです。

 

退屈で死ぬ?

よし、ボランティア行ってください。

 

デマンド・ウォンツはあくまでオプション

どんな介護サービスを提供していくかに当たっては、介護ニーズを適切にピックアップすることが重要であると言われます。

ただし、ニーズを幅広く見ていくと、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上するためには、介護ニーズだけでは賄いきれない部分もあります。

 

おそらくですが、これからのお年寄りは、今のお年寄りよりも多彩な生活を送ってきた方々です。
趣味や遊びの幅が広い人生を生きてきた方々です。

僕ら以降の世代はもっとですよね。
まず、wi-fiがない施設は誰も選ばないでしょう。

もしかしたら、デイサービスがzoomで行われる日が来るかも・・・。
通所じゃないねもう(^_^;)

 

施設系サービスは特に、介助からイベント開催、夜間の見守りに話し相手と、幅広い業務を全て兼ねてます。

丸一日関わっていると、ニーズとデマンド・ウォンツの違いが曖昧になりがちです。

その上、「人手がない」、「他の利用者さんが落ち着かない」などもあって、ついニーズにない過剰介護をしてしまうことがあります。

過剰介護は、利用者さんができることの一切を奪ってしまうんですよ。

 

介護ニーズとは、デマンド・ウォンツとの違いはなんなのか。

課題と願望にしっかり線引きし、どちらもないがしろにするのことない支援を行えたら、それがきっと理想の介護サービスかなと思います。