薬に頼らない「光認知症治療」は認知症の未来を照らすのか?

令和3年6月7日。

多くの人が望んでいたであろう、アルツハイマー病に対する新薬が、アメリカで承認されました。

いくつかの問題をはらみつつ、日本での承認に向けて動いているようです。

賛否あるかと思いますが、個人的な意見としては、薬に頼ることのリスクに注目したいところですし、件の新薬については安易に飛びついて良いかは疑問です。

それよりも前の話ではありますが、薬とは別のアルツハイマー病治療方法について、東京大学がある発表をしました。

この記事では、薬に頼らない新しい治療法である「光認知症治療」について解説していきます。

 

 

 

光認知症治療とは

光認知症治療とは、簡単に言うと、脳に光を照射して、アルツハイマー病の原因とされているアミロイドβ(ベータ)を除去しようというものです。
高照度光刺激法とも言われています。
治療の目的としては新薬と同じですね。

この研究自体は何年も前から始まっていましたが、当初の高照度光刺激法は、昼夜逆転や夜間せん妄など1日のリズムが崩れやすい認知症の方へのリズムを整える対症療法として適用されており、認知症そのものの治療としては考えられていませんでした。
アルツハイマー型認知症への対策として、昼間の活動量増加人・社会との関わりの増加太陽の光を十分に浴びることは、介護職員にとっては常識レベルです。

その治療を日常で行えるように、介護施設や自宅で使える、置き型の治療用ライトみたいなのが販売されたりしています。
太陽光に近い自然な光を再現できる代物だそうです。

それでもやはり治療というほどのものではなかったのですが、令和3年に東京大学が開発したのが光酸素化法です。

光酸素化法の効果

アミロイド仮説

アルツハイマー病の原因はまだ全て解明されていませんが、その中でも有力視されているのがアミロイド仮説」(またはアミロイドカースト仮説)という説です。
これはざっくり言うと、脳内に発生するアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が脳委縮を引き起こしているとする考えです。

これまでの光刺激法においても、アミロイドβの発生予防や除去を目的に研究されてきましたが、根本治療には至りませんでした。

光酸素化触媒

かなり難しい話なので大分簡略しますが、光酸素化触媒とは、光の照射によって活性化する物質です。
アミロイドβになり得るこの物質に光を照射することで酸素を取り付けた(光酸素化)ところ、アミロイドβの発生を抑え、かつ蓄積したアミロイドβを除去するという効果を確認できたそうです。

光酸素化療法は根本治療となり得る?

令和3年6月に話題になった新薬アデュカヌマブは、アミロイドβを除去する効果があり、アルツハイマー型認知症の進行を抑えることができると期待されています。

しかし、アミロイドβの発生が続く以上は、長年かけて投薬を続けない限り、進行を抑え続けることはできません。

受け売りですが、「雨漏り」に例えるとわかりやすいです。
雨漏りして床を拭き続けている状態がアデュカヌマブの効果です。
雨漏りの原因は天井にあるので、そちらを修理しないといつまでも雨漏りが続きます。

光酸素化療法は、床を拭きながらも、その天井からの雨漏りを防ぐ効果が期待されているわけですね。

さらには、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患等、アルツハイマー病以外にも効果があるととも期待されています。

アデュカヌマブは薬である以上、やはり副作用などが懸念されます。
大して光酸素化療法は、軽度の頭痛など程度で、重大な副作用の報告は今のところないそうです。
目や皮膚に疾患がある人は、要相談かもしれませんけどね。

日焼けとかするんですかね?

まとめ

ここまで見る限り、個人的にはアデュカヌマブよりは安全性が高いのかなとも思うのですが、まだ「開発しました!」って段階なので、どの程度治療を続けなければいけないか、費用はどの程度か、通院頻度はどれくらいかというところはわかりません。
なおかつ、天井から雨漏りするのを防ぐことはできますが、天井自体を修理するものなのかは、正直疑問です。
ましてや、最近では先述のアミロイド仮説すら疑問視されるようになっています。

アルツハイマー病の原因はまだ解明されていないということになりますが、今後どんな治療方法が確立されていくか、それによって認知症の方や家族の悩みは解消されるのか、期待したい反面、少々不安がよぎりますね。