記憶の仕組みと認知症の影響

記憶の仕組みは3ステップ

記憶には3つのステップがあります。

  1. 体験や学習したことを覚える

  2. 覚えたことを記憶として蓄える=保管する

  3. 保管した記憶を引き出す=思い出す

もの忘れには、老化による年相応のものと、認知症による記憶障害があります。

1~3のうち、3「思い出す」だけがうまくできなくなるのが老化によるもの忘れ。
1~3の全てがうまくできなくなるのが、認知症による記憶障害。

老化と認知症のもの忘れの違いで
・夕飯に何を食べたかを忘れるのが老化
・夕飯を食べたことを忘れるのが認知症

と例えることが多いです。

老化と認知症の違い

これを1~3に当てはめると…

老化の場合、3「思い出す」がうまくできず、記憶が「断片的」になります。
だから、「食べたこと」自体は覚えているのに、「食べたもの」が思い出せない。

「揚げ物」とか「肉」とか、ヒントがあれば思い出せることがほとんど。

認知症の場合、1「覚える」の時点でできていなかったり、2「保管」ができず記憶が失われることで、「夕飯を食べた」という事実が頭の中から消え去ってしまいます。

なので、ヒントがあっても思い出せないのです。

記憶力以外で「覚えられなくなる」原因

また、「覚えられない」ということは、何も記憶障害でだけ起こる問題ではありません。

集中力や理解力が低下した場合でも、「覚えられない」が起こります。

例えば、学校で授業を受けている時に、急にお腹が痛くなったとします。

なんとか我慢はできるにしても、「早く授業終われ!」と焦っている間、授業の内容なんてほとんど頭に入ってこないですよね。

それは、腹痛に注意が向いているために授業への集中力が途切れ、話半分にしか頭に入ってこないからなんです。

ぼんやりしか聞いてないことを覚えろという方が難しいですよね。

認知症の人は常に苦しんでいる

その腹痛などのような何とも言えない不調が、認知症の体の中では一日中起こっています。

その不調をうまく訴えられないから周りも気付かないんです。

理解力というのは、耳で聞く言葉の意味や、目で見る文章の意味の理解のことを言います。

それが機能低下しているということは、見ても聞いても意味がわかっていないということです。

意味が分からないことをいくら言われても覚えるのは困難。

英語がわからない人がネイティブアメリカンに一方的に話しかけられるのと一緒です。

しかし、もの忘れの原因が集中力によるものか、理解力によるものか、はたまた単純に記憶力の問題なのかがわかれば、もの忘れは改善できる可能性があります。

逆に、集中力の低下であることに気付かずに記憶力をアップするための治療をしても、治るわけがないんです。

認知症を改善する上で、大事なのは 「何が機能低下しているか」を確認するための評価
評価なくして認知症は決して治りません。

逆に、評価が適切にできて、評価内容に沿ったケアができれば、認知症の症状が改善できます。

切り傷ができた皮膚が時間をかけて治るように、認知症の脳もケアが適切であれば、回復する可能性があるんです。