奇跡の物質
BDNFは主に大脳皮質や海馬で合成されるタンパク質で、科学分野においては「奇跡」とまで呼ばれる物質です。
BDNFは、脳細胞が他の物質によって傷ついたり死んだりしないよう保護する働きをしています。
通常、酸素や栄養が行き届かなかったり、有害な物質が悪さをすると、脳細胞は傷ついたり死んでしまいます。
ですが、BDNFがあれば、そういった損害を避けられるというのです。
脳は、例えば脳卒中などによって損傷を受けると、自らを守る為にBDNFを放出すると言われています。
BDNFは、脳卒中によって受けた損害から脳を助けるという、救助隊のような働きをしているんです。
他にも
新たに生まれた細胞の生存や成長を促す
学習や記憶の能力を高める
細胞の老化を遅らせる
など、メリットを枚挙するにいとまがありません。
大人にも子供にも、高齢者にもBDNFは健康に欠かせない物質なんですね。
BDNFとうつ病
脳細胞を守る働きをし、人の健康に不可欠な物質であるBDNFですが、うつ病を患っている人は、BDNFの分泌量が低いということがわかっています。
逆に、うつ状態から回復して精神状態が安定するにつれ、BDNFが作られる量も増えていきます。
ややこしい話ですが、抗うつ剤を服用するとBDNF濃度が上がると言われています。
先に話した通り、うつ状態から回復している人はBDNFが増えています。
ということは、抗うつ剤は安心して服用していいんだ!
…といわけでは、残念ながらありません。
BDNFは、有害物質が脳に悪さをする時に放出されます。
つまり、抗うつ剤は細胞的には「有害物質」と認識されているということ。
じゃあ、BDNFは作られる状況を避けた方が良いんじゃないの?
それも違う。
「健康的な手段」で作り出すことができれば、BDNFはその後の人生の健康を左右する最強物質となり得ます。
BDNFの増やし方
脳細胞を守り、成長を助け、記憶力を高めるなど、メリットだらけのBDNF。
認知症の予防・改善にもつながると話題になっています。
BDNFは加齢とともに減少していくけど、増やす方法はあります。
さて、どう増やせばいいでしょう?
BDNFをサプリメントにして飲む?
注射する?
どちらもハズレ。
サプリとして飲んでも胃酸で溶けますし、胃酸を抜けたとしても、血液脳関門という脳のバリアを突破することはできません。
血管に注射しても同様で、血液脳関門は越えられない。
一方で、「効果があった」という報告もあるので一概には言えませんが、薬品、サプリの副作用を見るに、少なくともノーリスクとは言い切れません。
お金もかかるし…。
食事でも摂れるという話もあります。
大豆、ゴマ、みかん、緑茶 など。
ただ、食べ物で摂る方法も、効果については賛否があるので、確実とは言えません。
一番効率的かつ健康的、費用もかけずにBDNFを増やす方法があります。
運動、中でも特に有酸素運動です。
例えば週2回、30分のランニングをする。
BDNFを増やすにはある程度強度な運動が必要ではありますが、マラソン大会で好タイムを狙うような速さは必要ありません。
軽く息がきれる程度で、1回ランニングするごとにBDNFの生成量が増加していく。
運動によって一旦増えたBDNFの値はしばらく下がることなく、2週間くらいしてからようやく下がり始めます。
つまり、毎日ではなくても、定期的に運動を続けるだけでBDNFは高値を保ってくれます。
筋トレでは、全くないというわけではないけど、ここまでの効果はないと言われています。
つまり、有酸素運動が1番効果的というわけですね。
有酸素運動の中でも「インターバル・トレーニング」が特に有効です。
インターバル・トレーニングとは、
「10分やって1分休む」を1セット
などのような運動方法。
10分走って3分休むを繰り返して3セット、トータル30分走る。
これを週5日以上行うのが理想。
運動が苦手、加齢で体が衰えた、心疾患で運動制限があるなど、運動したくてもできない人は少なくありません。
でも、できることを無理ない範囲で続けていくことで、必ず成果は出ます。
医者、看護師、理学療法士など、相談できる人がいれば、その人に合った運動量を確認してみてくださいね。