フレイルという言葉は、もうおなじみになってきたでしょうか。
フレイルの由来はフレイルティ(虚弱)にあります。
福祉におけるフレイルとは、加齢などの要因によって身体機能や認知機能が弱っている状態を指します。
詳しくは後述しますね。
フレイルの定義と認知症の関係を知れば、認知症の改善・予防が叶うかもしれませんよ。
フレイルティとは
ここ10年くらいでしょうか。
高齢者の医療・介護・福祉の分野において、フレイルティという概念が広まっていきました。
もともとこの概念は、高齢者の運動能力低下、転倒・骨折などのリスクを表現する用語です。
日本老年医学会の提案により、昨今ではフレイルという呼称が定着していますね。
なので、以降はフレイルで統一します。
フレイルの定義
フレイルの定義としては、以下の項目が挙げられます。
- 1年で4.5㎏以上の体重減少
- 自己評価による疲労感
- 1週間の生活活動量から評価される活動量の低下
- 歩行速度の低下
- 握力などで消化した筋力低下
この5項目のうち、3項目以上に該当する場合をフレイルとしています。
定義の項目に該当した高齢者
30年以上前から行われた研究では、6千人近い数の高齢者を対象にして解析が行われました。
この定義に3項目以上該当した高齢者は、転倒、ADL低下、入院、死亡などのリスクが高く、健康障害に陥りやすいと考えられました。
実際、該当した高齢者は参加者全体の7%ほどに見られ、年齢と共に該当率が上昇する傾向があったそうです。
また、近年では5項目のうち1~2項目に該当した人をプレ・フレイルティと呼んだりもするとか。
フレイル、プレ・フレイルに該当した高齢者は、ひとつも該当しなかった高齢者と比べ、生存率が低いことがわかったんです。
フレイルの良き特徴
フレイルは、介入によって進行を遅らせる、あるいは状態を改善できる可能性があるという特徴があります。
転倒して骨折しただの、疾患による障害を抱えてしまうと、特に高齢者ではその改善は無理だと思われますよね。
あえて有識者ぶって言いますと、障害というものは得てして不可逆性の変化であるということです。
ですが、フレイルの段階では、運動、栄養摂取、日常生活指導などの介入などによって改善される可能性があるとされています。
障害が不可逆性であるのに対し、フレイルは可逆性の変化ということです。
つまり、昨今よく聞かれるフレイル予防とは、障害を持ってしまう前に、そのリスクファクターであるフレイルの段階で介入していきましょうという取り組みなんです。
フレイルと認知症・軽度認知障害(MCI)
高齢にもなると、フレイルと認知症・軽度認知症(MCI)が併存しているケースは少なくないです。
フランスでの調査
過去に、フランスの3都市で6000人以上の高齢者を対象に行われた調査では、全体の7%に当たる400人以上がフレイルに該当しました。
フレイルに該当しなかった残りに93%のうち、認知障害が認められたのは10%。
対して、プレ・フレイルの人では12%、フレイルの人では22%が認知障害を合併していたそうです。
また、フレイルの該当者はMMSE(認知症評価スケールのひとつ)のスコアも低いという結果も出ています。
認知障害を伴うフレイル該当者は、4年間の観察期間の中で、ADLやIADLの低下が著しいこともわかりました。
イタリアでの調査
イタリアで行われた調査では、約2600人の高齢者を対象にフレイルに関する解析が行われました。
そのうちで認知症を発症したのは全体の2.5%。
フレイル該当者のうちで認知症を発症したのは6.3%と、かなり高値であったそうです。
さらに、その6.3%のうち半数以上は脳血管性認知症でした。
結果
こういった調査の結果から、フレイル該当者では、認知症の発症リスク、特に脳血管性認知症が発症するリスクがかなり高いという結論に至ります。
コグニティブ・フレイルティ
これらの結果を踏まえて、2013年にフランスで開催された学会で、コグニティブ・フレイルティという概念が定義されました。
これは、身体的な虚弱を意味するフレイルと、軽度の認知障害を合併した状態を指します。
なんらかの身体的な障害や認知症を発症する前に、高齢者のQOLを、身体機能や栄養のみではなく、認知機能や心理という多角的なアプローチを通して改善していこうという考え方ってことですね。
1.身体的フレイルティに該当し、かつCDR(認知症スケールの一種)で0.5の認知障害
2.アルツハイマー型認知症および他の認知症に罹患していない